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実はいとーさんの下の名前は

めっちゃかっこいい


伊藤 雷神という



「え!なんすか!その名前!めっちゃかっこいいじゃないすか!」


「あぁ、何か

祖先がそっち系の神で

昔はサンダーとか使えたんだよ」


「ええええ!!!」


「俺も冬は使えるよ、ちょっとだけどな」


「まじっすか!!すげーーー!!」


「セーターとか着るとMP溜まるよ」


「それ、静電気です」



【冬】



夜12時



俺が布団に入り、ウトウトと寝入る頃に

いとーさんは突拍子も無いことを言いにやってくる



ガチャッと俺の部屋のドアが開いた



来た…



「なあ、もさむ

オリオン座の下にいかないか?」


「…どーやってすか?」


「走ってだろ、歩いて行く気か?」


「…やめましょう。寝ましょう。」



次の日の夜



「おい、もさ、冬至って知ってるか?」


「知ってますよ」


「今日は柚子湯だぞ!楽しみだろ!」



いとーさんは、もうお風呂に入ったらしく

坊主頭をタオルでガシガシ拭きながら、ご機嫌である。



確かに、

柚子の香りが、、、めっちゃする


ちょっと、しすぎじゃない?ってくらい

めっちゃ匂う


嫌な予感がしつつ

風呂のドアを開けると


「やっぱりか…」



浴槽にぎっしり柚子が浮かんでいる


風呂場いっぱいに柚子の酸っぱい匂いが充満して

口の中はよだれでいっぱいになってきた


浮かんでいる柚子をどけてみると

黄色い湯が見えてきた



これ、、、もう果汁じゃん!!!



あったかい果汁風呂に入ってみると


「痛ー!!!」


あちこちの傷がしみる!!!

身体中の乾燥してる肌にビリビリ効いてくる!


手なんか、荒れてるから激痛だ



これは、何だ?!


修行か…!?


叫びながら入っていると、いとーさんがやってきた


いとーさんは焼酎グラスを持っていた


「お待たせー!さ、飲もっぜい!」


いとーさんは手で湯をすくって

焼酎が入ったグラスに果汁を入れ、一口飲んだ



「かーーー!最高!!!」



ほれ、と

俺にも焼酎を渡してくれたので


真似して果汁を入れて飲んでみる




「うんまーーーーー!!!!」




果汁100%割の焼酎は、驚くほど美味かった


「これは、最高ですね!!おかわり!!」



2人は風呂場で柚子焼酎を夜がふけるまで飲んだ


「こんなに、風呂の湯が黄色かったら

小便しててもわかんねぇなww」


「いや、俺絶対しませんから」


「はぁ?1番風呂は俺だぞ?何言ってんだww」


「え…」




俺は飲んだ全ての柚子焼酎を吐き出した。







◆◇◆◇◆





俺が、仕事に行く用意をしていると


「もっちゃん、今日は寒いからマフラーと手袋してきな」


いとーさんが手渡してきた物は

藁で編まれたマフラーと手袋だった


「何すかこれ!!これ山羊のエサでしょ!!」


「ま、ちょっと、付けてみてよ

一生懸命つくったからさ」



いとーさんは藁で作った、ごわごわのマフラーを

俺の首に巻きつけてきた


「ちょっと待って!めっちゃ刺さる!痛!」


「じゃ、こっちはどう?」


今度は藁で編んだ鬼のようにデカい手袋だ


「指入れるとこがさー、細くて難しいから

どんどんデカくなっちゃって」


1つの穴に指3本くらい入りそうだ


「ちょっと、なんかこれも痒くて不快なんだけど!」


「わがままだな!!もう寒くても知らないからな!!」


「わがままで結構、寒くてもいいです」


そう言い捨てて仕事に向かった。





その日は本当に寒かった




仕事中、今朝の事を思いだす


ああ、悪い事しちゃったかな…

藁で編むって、普通の毛糸より大変だよな


いとーさんの手、荒れて傷だらけだったな




朝の後悔でその日の仕事は捗らなかった



夜仕事が終わり、帰る前に

職場の地元の人に手荒れに効くものは何か聞いてみると

ヨモギが効くよー、と言っていたので


めちゃくちゃ寒かったが

帰り道、草むらでヨモギをたくさん摘んで

いとーさんにプレゼントしようと思った


いつも家事してくれてるから

年中、手荒れてるもんな



帰ったら、今朝の事謝ろう



そう思いながら、玄関のドアを開けると


いとーさんは玄関に立っていた


「あ、ただいま帰りました、、、」



いとーさんは手に

何かわからない、何かを持って掲げている



「見ろ!山羊に毛を分けてもらってさ、編んだんだ!」


「山羊にって!今冬ですよ?

山羊、凍えてるんじゃないですか!?」


「藁のマフラー巻きつけといたから大丈夫だろ」



いとーさん、あんたって人は、、、



山羊の毛で編まれたマフラーは、あまりにも短く

手袋は蟻のように小さかった



「いとーさん、俺からも」


先程取ってきたビニール袋いっぱいのヨモギを渡した


「手荒れには、ヨモギが効くんですよ

すり潰して塗って下さい」



ビニール袋を受け取ったいとーさんは

中を見て、大量のヨモギに驚いている



「えーーー!まじかよ!ありがとう!


でも、俺ロクシタンの方が合うんだよなー

ヨモギって臭いじゃん?」


「やかましー!カメムシ臭かった奴のセリフか!!」






そんなこんなで冬は過ぎ


2度目の春が来る



俺がここに来て一年


長いようで短かかった島での暮らし



ついに、本日

本島に帰る事になった



港で、いとーさんに最後のお別れを告げる



いとーさんは泣いていなかった


いつもの笑顔だった


会いたい時はカメムシになって飛んで行くよ!

いつも応援してる!また会える!

と何度も言ってくれた




俺も泣かなかった

笑顔で別れる事が出来た




最高の別れだ





いとーさん、あなたと過ごした日々は

ほんとにバカバカしくて

くだらない事ばかりでした



でも、あなたがいてくれたから

毎日、心から笑って楽しい日々が送れました



これから、悲しい事や辛い事はたくさんあるだろうけど

いとーさんとの日々を思い出せば

笑顔になれると思います



あの日

いとーさんと見た素晴らしい虹は

この先、一生忘れる事はありません!!




ありがとう


ありがとうございました!!





島で過ごしたこの1年は、俺の宝物になった。







【春夏秋冬 終】


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