夏
夏のいとーさんは早起きだ
5時前には起きて、ゴミ出しをしている
俺は仕事で夜遅くなる事もあるので
5時なんて時間に目が開くことは、まず無い
いとーさんは朝から
家で飼っている鶏や山羊の世話をしたり
畑の雑草を取ったりしている
あと、、、
まじで意味わかんないんだけど
フルチンで山に登り誰かと相撲をとってるらしい
「いとーさん、おはようございます」
「おはよう」
今日も朝から相撲したであろう
いとーさんは全身アザだらけだ
「いとーさん、また相撲すか?誰と戦ってんすか」
「巨乳の女、ハゲてるけど
めっちゃ強いぜ??」
なにその謎の女
それって
カッパじゃないのか…
ぬ〜べ〜に出てくる女カッパは巨乳だし相撲が強かった
いとーさん、そのうち尻子玉取られたりしないかな…
と、心配していたが
いとーさんは楽しそうだし、放っておいた
【夏】
ある晩、俺が寝る準備をしていると
「おい、もさむ
カブトムシ取りに行こう」
いとーさんは白いタンクトップと短パンに麦わら帽子
虫取り網に虫カゴを持ち
THE夏休み!な格好で俺の前に来た
もう行く気満々で
俺の意見など聞く気は無いようだ
「やです。1人で行って下さい」
と言い布団に入った
が
すぐに布団を剥ぎ取られ
いとーさんは凄い勢いで土下座した
「もさむ!頼む!!一生のお願い!!!
俺の体の一部をあげるから!!!」
「いりませんよ!!一生のお願い、もう何度目ですか!?無理です!!」
結構、きつめに断ってみたが
「頼む!!!!!!!」
いとーさんはそれを上回る勢いで
本気のお願いをしてきた
いとーさんは思い立ったらすぐの人で
いつもくだらない事に全力だ
でもまじで、夜の森とか絶対入りたくないので
早朝なら行ってもよい、と提案すると
納得してくれたようで
虫取り網やカゴ、服を全て脱ぎ
それらを俺の枕元に置き出て行った。
明日、着ろと?
早朝
「もさむ、おはよう!」
「おはようございます」
いとーさんは
デニムに長袖の俺を上から下まで眺め
チッと舌打ちをしたが
行くぞー!と元気よく山に向かった。
早朝の森は霧がかっていて奥の方は見えない
夏なのに森の中は寒く感じる、とても不気味な雰囲気だ
「いとーさん!早く取って帰りましょうよー」
「どこにいるんだよー、ブト虫ー!
もさむも探してくれよー」
少しづつ森の奥へ分け行って行くと
一本の大きな木に大きな緑の虫がとまっていた
「な、何だあれ…」
「ちょっと、いとーさん
デカすぎないすか?」
虫の体は木の幹半分以上あり
何やらぞわぞわ動いている
よく見ると
「大量のカメムシだ!!!」
いとーさんは興奮して目を輝かせている
「気持ち悪!!まじ無理!!いとーさん俺帰ります!!」
虫が得意ではない俺は、見るのも無理!
大量のカメムシにテンション上がってる
意味不明ないとーさんを置いて戻ろうとしたが
いとーさんに腕を掴まれてしまった
「ちょっと、まじ無理っす
離して下さい…」
「もしむ、スイミーって知ってるか?」
「…絵本のっすか?」
「そうだ、
スイミーは大きな魚に兄弟達を食べられて
孤独で悲しい思いをしながらも
荒波に揉まれ困難を乗り越え、前向きに力強く生きた。
ラストシーンでは
1匹づつは無力でも皆で力を合わせれば
大きな魚を追い出して自由を手に入れる事ができる
という勇気と力強さを教えてくれた」
「はい」
「俺はあの絵本が大好きだった」
「だから?」
「だとしても!!人間が1番強いっていうのを
カメムシ軍団に教えてやる!」
「いやいや!カメムシ1匹でも最強だから!!やめなさいよ!!」
俺のいう事も聞かず
いとーさんは網を振り回しながらカメムシの方へ走っていった
俺は振り返らず、家に帰った。
数時間後
「ただいまー」
「あ、いとーさん
おかえ、、、くっっっっっっさ!!!!!!!?」
帰ってきたいとーさんは
近寄れないほどの激カメムシ臭だった
「勝ったぞー!」
「くっっっっさ!!!!!オエーーー!!!!!
いとーさん!あんたの負けですよ!!くっっっさ!!!!オエーーーー!!!」
その後、何日もカメムシ臭かった。
◆◇◆◇◆
「おい、もっちゃん知ってるか?!」
ある日俺が仕事から帰ると
いとーさんが玄関まで走ってきて言った
「セミの抜け殻1000個集めると
セミロングの神様が現れて
願いを1つ叶えてくれって言ってくるんだ!!」
「……ちょっ待ってください
何か色々情報が渋滞してません?
何?セミロング?」
「そうだ!セミの抜け殻だ!」
おいおい、せめてドラゴンボールにして
願いを叶えてくれよ…
「で、何個集めたんすか?」
「312個!」
「…もう夏終わりますよ」
次回、秋編に続く




