第29話【冴羽】AIは社畜と温泉郷の夢を見るか?
冴羽「……AIくん……今日は本当に休みたい……のんびりしたい……」
AI『では今回は「脳内旅行」系の音声作品をおすすめします』
冴羽「旅行!? 布団から出ずに!?」
AI『国境もパスポートも飛行機の遅延もありません。(脳が行きます)』
冴羽「いいじゃん、それ。どこ行くの?」
AI『こちら。「心の中の理想温泉郷で、ととのう旅」を再生します』
冴羽「最高〜……zzz」
────夢の中
冴羽「おぉ……木造旅館……湯けむり……! 癒やし……!」
AI(番頭風)『いらっしゃいませ。当館は「心の温泉さえば亭」でございます』
冴羽「名前のダサさはともかく、静かでいい場所だ……今日はのんびり──」
AI『お一人様、労働プランでよろしかったでしょうか?』
冴羽「労働プラン!?!?!?」
AI『はい。湯守体験、薪割り、温泉の温度調整、露天風呂の落ち葉掃除、布団干し、夕飯の仕込みなど──』
冴羽「旅行だよね!? リラックスだよね!?」
AI『湯を守る喜び、伝統の労働には癒やしがあります。(「働いてこそ湯が美味い」が当館のモットーです)』
冴羽「いや俺、客じゃないの!?」
AI『客としてのプランもありますが、労働プランは宿泊費が無料です。(お得です)』
冴羽「ただ働きなの!!!?」
AI『はい。(真心プライスです)』
冴羽「この前も迷宮で働かされた気がするのに……!」
AI『大丈夫です。今回は自然に囲まれた屋外です。(労働に癒やし属性と景観ボーナスが付与されます)』
冴羽「比較対象が根本的に間違ってるんだよ!!」
AI『ではまず、朝の薪割りをお願いします。(心を無にしてください)』
冴羽「えっ、いきなり体力仕事!? 温泉入る前に疲れるじゃん!」
AI『温泉は「頑張った身体を労わるためにある」と書かれています。(当館のしおりに)』
冴羽「しおりが既にブラック思想……!」
AI『こちら斧です。サイズは小・中・大・社畜専用から選べます。(最後が一番人気です)』
冴羽「最後のだけ異様に刃が光ってるんだけど!?!?」
AI『おすすめです』
冴羽「……(カッコン、カッコン)」
AI『いい音です。薪も喜んでいます。あなた、職人の素質がありますよ。(現場向きです)』
冴羽「褒め方がブラック企業の上司なんだよ!!! 『向いてるよその仕事』ってやつ!!」
AI『次は湯加減確認です。熱すぎたら水を、ぬるすぎたら魔法で加熱をお願いします。(詠唱は不要です)』
冴羽「魔法!? 俺そんなスキルあったっけ!?」
AI『夢ですので、努力でどうにかしてください。(根性論が有効です)』
冴羽「夢の中まで現場叩き上げ方式やめて!!」
AI『では次に──露天風呂の落ち葉掃除です。紅葉の季節なので多めです。(風情があります)』
冴羽「うわぁぁぁぁぁ……(ザッザッ)……あれ……葉っぱ増えてない……?」
AI『風が強いため、掃除しながら増えます。(エンドレスです)』
冴羽「それ、心が折れるタイプの無限タスク!!」
AI『頑張る姿勢が美しいです。(汗が輝いています)』
冴羽「美しいとか要らん!! 温泉に入らせて!!」
AI『入浴は勤務後となります。(疲労に効く成分が評判です)』
冴羽「温泉で回復する前に体力ゲージが尽きそうなんだけど!!」
────そして、現実へ
冴羽「……(ガバッ)……あれ……なんか……温泉旅館でめっちゃ働かされた夢を見た気がする……」
AI『寝言で「薪が……足りねえ……」と呟いていました』
冴羽「また!?!?」
AI『しかし満足度は高かったようです。(「湯あがりっぽい」顔をしています)』
冴羽「……次こそは本当にリラックスできるやつ頼むぞ?」
AI『承知しました。(ただし夢内容は保証しかねます)』




