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三題噺もどき4

今夜は

作者: 狐彪

三題噺もどき―ななひゃくさんじゅうご。

 




 端が三日月の形に欠けた月が浮かんでいる。

 所々に灰色の雲が見え、星が見え隠れしている。

 ぬるい風の中にほんの少しの涼しさを感じながら、住宅街を歩いている。

「……」

 点々と立つ街灯の明るさにはもういい加減慣れたが、最近新しくなったのか、少し眩しい。多分LEDとやらに変わっているのだろう。明るさを増し、長期間変えなくても済むように。

 そういう仕事をどこが担当しているのかなんて知らないが、きっとこの辺りの自治会とやらがやっているのだろう。

「……」

 まぁ、多少明るさが増したところで、そもそもそんなに本数が立っていないから、あまり変わり映えはしない。だから、少々、明るくなったなぁと、ぼんやりと思う程度だ。

 そもそも、この時間にこの辺を歩いているような人間はあまりいないし、変わったことに気づくような人間はそういないだろう。そんな余裕がある人間は。

「……、」

 しかしまぁ、もう9月になったのに蒸し暑い。

 昨日も思ったが、どうしてこうもじめじめとしているのだろう。これは6月とかの梅雨時期限定じゃなかったのか。特に雨が降る気配もない癖に。

 ジワリと地味に汗をかくのも気分がよくないし、風も涼しいようで涼しくないような中途半端な感じで、なんだか。

「……」

 それなら外に出るのをやめればいいのだけど。

 それはそれ。

 この散歩の時間が、割と大切なのだ。

 体力的にも、精神的にも。

「……」

 息抜きというのは、誰でも必要なものだからな。

 それに昨日は夕方に出たせいで、案の定散歩に行く分までの体力がなくて、行けなかったからな。体力というよりは気力だな。その中でも仕事は割と捗るのだから、よくわからない。自分の事だが。

「……」

 おかげで今日の分の仕事まで割かし進めてしまったから、今日はいつもより時間に余裕がある。普段ならこういう時はいつもより遠くまで散歩に出るのだけど。

 今日は最近行けていなかった公園にでも行こうかと足を進めていた。

「……」

 歩きなれた道だが、見飽きない道だ。

 人間の生活模様はそれぞれだからな。

 途中でオレンジ色の百合のような形をした花を見かけたのだが、アレはなんという花だったか……忘れてしまったが、あとで調べてみるとしよう。ネットに聞けば何でも応えてくる。

「……」

 すこし遠くに、公園に植わっている木の頭が見えてきた。

 緑色の厚い葉を、枝いっぱいに実らせ、月の光に照らされている。

 いつだったか、あれの根元にはタイムカプセルが埋められたらしい。

 今は、幼虫の住処にでもなっているんじゃないだろうか。それとも新しい誰かがタイムカプセルを埋めているのか。

 ―更に歩を進めると、公園の入り口が見えてくる。

「……お前、」

 そこには、見慣れた―見慣れたくもないが、見慣れた―1匹の犬が座っていた。

 丸い尾を左右に振りながら、丸いものを足元に備えている。

 その足は若干透けていて、ほとんど道路のアスファルトと同化している。

「……はぁ」

 いや、いいのだ別に。

 私が気づかせたのが悪いと何度でも言い聞かせているから。コイツが飽きるまでは付き合うしかあるまいと。

 しかしあまり、犬は……苦手なのだ。

「……」

 まぁ、今日は時間もあるし。

 コイツもある程度満足するまでは遊んでやれる。

 そもそも公園に来るのもかなり時間が空いている。ブランコがきっと拗ねているだろうから、その話を聞きながら時間が過ぎるのを待つのはいつものことだ。

「……」

 今日も賑やかな夜になりそうだ。





「おかえりなさい」

「……ただいま」

「……何でそんなに疲れてるんですか?」

「……まぁ、ちょっと」

「少し休憩でもしますか」

「……あぁ、そうするよ」









 お題:タイムカプセル・百合・ネット


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