第9話:金髪エリート美少女登場。俺の大事な仲間に喧嘩を売るとはいい度胸だ
サターン星系へ向かう前に、俺たちは情報収集のため、再びルクスの冒険者ギルド支部を訪れていた。『深淵』や古代の遺物に関する情報を集めるには、やはりここが一番手っ取り早い。
「サターン星系の古代遺物、ですか……。いくつか報告は上がっていますが、どれも『深淵』の活動宙域と重なるため、ギルドとしては調査依頼を凍結している状況でして……」
受付嬢とそんなやり取りをしていると、横から鈴を転がすような、しかし氷のように冷たい声が割り込んできた。
「いつまで待たせる気ですの? こちらは急いでいるのです。さっさと用件を済ませて、窓口を空けなさいな」
振り返ると、そこに立っていたのは、金糸のような艶やかな髪を縦ロールにし、宝石のような碧い瞳を持つ、いかにも高貴な身分と分かる美少女だった。
彼女がそこに立つだけで、ギルドの騒がしい空気が、水を打ったように静まり返るのを感じた。彼女が纏うオーラは、俺たちがこれまで出会った誰とも違う、絶対的な自信と、選ばれた者だけが持つ気品に満ちていた。
体にぴったりとフィットした純白の騎士服は、彼女の豊かな胸と引き締まった腰のラインを強調している。腰に差した真紅の魔石が埋め込まれた見事な剣は、ただの飾りではないことを示していた。
彼女は俺たちの、言ってしまえば安物の冒険者服を値踏みするように一瞥すると、侮蔑の色を隠そうともせずに、ふんと鼻で笑った。
「あら、辺境の惑星から出てきた成り上がりかしら? ルクスはあなたたちのような田舎者が来るところではありませんわ。場違いだということに、ご自分で気づいて?」
そのあまりにも傲慢な物言いに、俺の中で何かがプツリとキレる音がした。
だが、俺が口を開くよりも早く、隣のアステラが反応した。
「なっ……! ユウトたちを馬鹿にしないで!」
普段は温厚なアステラが、怒りで肩を震わせている。オリビアは腕を組んで威嚇するように唸り、リーベも冷ややかな視線をその少女に向けていた。
俺は怒りを冷静な思考の奥に押し込み、わざとらしくため息をついてから言い返す。これは、面倒なクライアントとの敵対的交渉と同じだ。感情的になった方が負けなのだ。
「ほう。見たところ、君も大したことなさそうだがな。少なくとも、ここにいる俺のクルーの方が、君よりよっぽど優秀に見えるが?」
俺の計算通りの挑発に、金髪の少女の整った顔がみるみる赤く染まっていく。
「な、なんですって……!? この私を、こんな寄せ集めの者たちと一緒にするなど、万死に値しますわ!」
「じゃあ、証明してみるか? どっちが優秀か」
「望むところですわ! 模擬戦で、あなたたちと私とでは、住む世界が違うということを、その身に刻み込んでさしあげます!」
どうやら、最高に面倒くさいタイプの女に絡まれてしまったらしい。
後で《解析瞳》で調べたところ、彼女の名はカリスタ。銀河でも名高い惑星ロゼッタの王家の血を引くエリート魔法剣士で、アンナとライラという二人の同郷の騎士と共に、任務でルクスに立ち寄っていたようだ。
プライドはエベレストより高く、実力も確かにあるのだろう。
だが、俺の大事な仲間を侮辱したこと、きっちり後悔させてやる。俺は、その挑戦を静かに受け入れた。




