第6話:ボロ宇宙船と美少女クルー! いざ、一攫千金の冒険へ!
「私の理論を……いや、それ以上のことを彼は実践しているのかもしれない……! あの状況で、あれほど的確な判断を下せるなんて……」
「アタシの操縦に、完璧な指示を出せる奴がいたなんて……! まるで、船の動きが全部見えてるみたいだった」
惑星アストラへの帰路、シューティングスター号のコクピットで、リーベとオリビアは興奮冷めやらぬといった様子で俺を見ていた。その瞳には、昨日までの疑念の色はなく、純粋な尊敬と信頼、そしてわずかな畏怖の色すら宿っている。
ギルドでデブリ回収と海賊船から奪った積荷の換金を終えると、俺たちの懐は予想以上に潤っていた。
「どうだ? 俺の実力、わかってもらえたか?」
俺がニヤリと笑うと、二人は顔を見合わせ、観念したように肩をすくめた。
「……完敗だ。アンタの言う通りだよ。まさか、こんなにも簡単に海賊を無力化するなんてな」
オリビアはぶっきらぼうに言いながらも、その声には隠しきれない高揚感が滲んでいた。
「あなたのプランは、私の計算を遥かに超えていました。ユウト、あなたと組めば、私の研究も……」
リーベは潤んだ瞳で俺を見つめる。
彼女たちの反応に、俺は満足げに頷く。これは、ただの勝利ではない。最高のプロジェクトチームが結成された、記念すべき瞬間なのだ。
「決まりだな。今日から俺たちはチームだ」
俺の言葉に、四人――俺、アステラ、リーベ、オリビアの間に、確かな一体感が生まれる。
海賊から奪ったお宝は、予想以上の高値で売れた。その金でシューティングスター号の修理と改修を行い、当面の活動資金も十分に確保できた。
「それで、これからどうするんだい?」
船のドックで、生まれ変わっていく愛船を眺めながらオリビアが尋ねる。
「まずは情報収集と物資調達だ。交易ステーション『ルクス』へ向かう」
「ルクス……! あの『星巡りの方舟』ですね! 一度行ってみたかったんです!」
リーベが目を輝かせる。アステラも「すごいすごい! どんなところなんだろう!」と無邪気にはしゃいでいる。
俺たちの会話を、少し離れた柱の影から見ている人影があることに、俺は気づかなかった。いや、気づいてはいた。だが、その視線に敵意はなく、ただ冷徹な好奇心だけが感じられた。まるで、実験動物の行動を観察する研究者のような、不気味な視線。その一瞬感じた気配を、俺はすぐに忘れてしまったが、それは、俺たちの運命を静かに蝕む『深淵』の、最初の兆候だったのかもしれない。
数日後、海賊から奪った金で、シューティングスター号の最低限の修理と改修を行った。
外観の錆や凹みはまだ目立つものの、内部の配線は一新された。リーベの理論に基づいた試作型の魔力レギュレーターが搭載され、船の効率は格段に向上している。お世辞にも「新造船」とは言えないが、その中身は以前とは別物になっていた。
「よし、準備はいいな! 新生シューティングスター号、発進!」
俺の号令で、オリビアが操縦桿を握る。
「行くぜ、野郎ども! しっかり掴まってな!」
オリビアの快活な声が響く。
生まれ変わった愛機は、以前とは比べ物にならないほどスムーズに、そして力強く離陸し、惑星アストラの青い空を突き抜けていく。
眼下に広がる惑星がみるみる小さくなっていく。やがて、船は重力圏を完全に離脱し、どこまでも広がる漆黒の宇宙空間へと躍り出た。
「目標、交易ステーション『ルクス』! 星間航行魔導装置、起動!」
リーベがコンソールを操作すると、船体が穏やかな青い光に包まれる。
次の瞬間、窓の外の景色がぐにゃりと歪み、無数の星々が光の線となって後方へと猛スピードで流れ去っていった。
最高の仲間たちを乗せて、俺たちの星間英雄伝が、今、本格的に幕を開けた。
***
その頃、銀河の片隅、いかなる星図にも記されていない禁断の宙域。
幾重にも重なる魔力的な防壁と、無数の古代ゴーレムによって守られた『遺失された鋼鉄の聖域』。
その最深部、人の踏み入ることを許さぬ大聖堂の中心。
脈動を続ける巨大な水晶体の前に、一人の少女のホログラムが、静かに佇んでいた。
長い銀髪を揺らし、その瞳に叡智の色を湛えた彼女は、何千年もの間、ただ「その時」を待ち続けている。
突如、彼女の目の前に広がる星図の一点――惑星アストラ宙域が、微かな光を放った。
『……聖域外部より、極めて特異な魔力波動を検知。これは……この宇宙の理を超越した、異質な魂のパターン……』
少女のホログラムは、その光を見つめ、感情のない声で、しかし、どこか待ち望んだ響きをもって、呟いた。
『……ついに、現れましたか。この宇宙に遍在する「歪み」を正し、魔力循環に真のバランスをもたらす者』
その瞳は、遥か彼方にいる、一人の元社畜の姿を、確かに捉えていた。
いつもお読みいただき、ありがとうございます!
第1章完結です。次話からいよいよユウトの冒険が始まります。
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