第59話:俺たちの冒険はこれからだ! さて、次はどの星でバカンスにするかな?
惑星アストラでの熱狂的な歓迎から数日後。
俺たちは、再び星の海へと旅立っていた。
新生シューティングスター号のブリッジは、もはや俺にとって、世界で一番落ち着ける場所となっていた。
豪華なキャプテンシートに深く身を沈め、俺は目の前に広がる無限の星空を眺める。
その隣には、当たり前のようにアステラが寄り添い、俺の肩にこてんと頭を乗せて、幸せそうに寝息を立てていた。
リーベが、どこで見つけてきたのか、極上の香りを放つ紅茶を淹れてくれる。その優雅な手つきは、もはや一流のメイドのようだ。
操縦席では、オリビアが、まるで船と一体化したかのように、楽しげに鼻歌を歌いながら、完璧な航路を維持している。
そして、後方のオペレーター席では、カリスタが、様々な観光惑星のデータが映し出された魔導水晶盤を、真剣な表情で睨んでいた。
社畜として死んだ俺が、手に入れたもの。
それは、銀河一、騒がしくて、愛おしくて、そして、最高の仲間たちとの、何気ない日常だった。
「さて、みんな。次はどこに向かおうか?」
俺が、星図を眺めながら言うと、カリスタが待ってましたとばかりに、咳払いをした。
「ユウト、いくつか候補をリストアップしましたわ。まずは、惑星『アクアリア』。星全体が美しい海で覆われた、リゾート惑星ですわね。ビーチでのんびりするのも、悪くありませんわ」
「へえ、海か! いいじゃねえか! アタシは、美味い魚が食えるなら、どこでもいいぜ!」
オリビアが、快活に笑う。
「それでしたら、惑星『グルマンディア』はいかがでしょう? 『美食の星』と呼ばれるこの星には、宇宙中のあらゆる食材と料理が集まると言われています。きっと、オリビアさんも満足できるはずですわ」
「なんだと!? 行く! 絶対に行くぞ!」
食い気味に反応するオリビアに、リーベがくすりと微笑む。
「でしたら、ユウト先生。私は、古代文明の遺跡が数多く残る、惑星『アルカディア』を推薦します。きっと、私たちの知らない、素晴らしい技術が眠っているはずです」
「そして……究極の目的地としては、銀河の中心に輝く宇宙首都『アルテア』など、いかがですの?」
カリスタが、自信満々に、最後の候補を告げる。
「わたくしたちの現在地からは、まさに銀河の反対側。たどり着くだけでも、一大冒険になりますわよ」
ビーチ、美食、古代遺跡、そして、宇宙の首都。
どれもこれも、魅力的だ。俺は、腕を組んで、うーんと唸る。
こんなに贅沢な悩みが、許されていいのだろうか。
「ユウトは、どこに行きたい?」
いつの間にか目を覚ましていたアステラが、俺の顔を覗き込みながら、尋ねる。
その瞳は、絶対の信頼を物語っていた。ユウトが行くところなら、どこへでもついていく、と。
俺は、そんな彼女たちの顔を、一人一人、見渡して、笑った。
「そうだな。全部、行こうぜ。順番に、全部だ。俺たちには、時間は、有り余るほどあるんだからな」
俺の言葉に、四人が、花が咲くように、同時に微笑んだ。
そうだ。俺たちの旅は、まだ始まったばかりなのだ。
この最高の仲間たちと共に、この広い宇宙の、全てを、遊び尽くしてやる。
俺が、そんな決意を新たにした、その時だった。
ブリッジに、これまで聞いたことのない、甲高い警告音が鳴り響いた。
それは、聖域のライブラからの、最優先の緊急通信を示すものだった。
『ユウト様!』
メインの魔導水晶盤に、ライブラの、切羽詰まった表情が映し出される。
『新たな「歪み」の兆候を、銀河の反対側で観測しました。これは……』
彼女の声は、恐怖に震えていた。
『……これは、『深淵』を、カイヴァー・ドレークを、遥かに上回る規模です……!』
その言葉を最後に、通信が途絶える。
ブリッジに、重い沈黙が落ちた。
さっきまでの、和やかで、幸せな空気は、どこにもない。
だが、俺たちの心は、折れていなかった。
むしろ、新たな強敵の出現に、再び、燃え上がっていた。
俺は、キャプテンシートから、ゆっくりと立ち上がる。
そして、最高の仲間たちに向かって、不敵な笑みを浮かべて、言った。
「――どうやら、バカンスは、少しだけ、お預けらしいな」
俺たちの旅は、まだ、始まったばかりだ!
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次回、おまけの「お約束回」を1話投稿します。




