第57話:英雄の凱旋。手に入れたのは、莫大な富と名声、そして愛すべき仲間たち
あの激闘から、数週間が過ぎた。
俺たちは、ライブラに聖域の後を託し、故郷とも言うべき惑星アストラへと、帰還した。
俺たちが宇宙港に降り立つと、そこには、信じられないほどの数の人々が、熱狂的な歓声と共に、俺たちを出迎えてくれた。
『深淵』を率いたカイヴァー・ドレークの野望と、それを打ち砕いた、名もなき冒険者パーティの活躍は、ライブラが宇宙ネットワークに情報を流したことで、瞬く間に、宇宙全体へと知れ渡っていたのだ。
「英雄の凱旋だ!」
「宇宙を救ってくれて、ありがとう!」
紙吹雪が舞い、音楽が鳴り響く。
俺たちは、ただの冒険者から、一夜にして、宇宙を救った英雄となっていた。
その後、俺たちは、宇宙連邦から、莫大な報酬金を受け取った。その額は、俺が社畜時代に稼いだ生涯年収の、何千倍、何万倍にもなる、天文学的な数字だった。もはや、金に困ることは、一生ないだろう。
そして、俺たちの愛機、シューティングスター号も、ライブラが提供してくれた聖域の技術と、潤沢な資金によって、見違えるように生まれ変わっていた。
かつての、鉄屑とまで言われたオンボロ船の面影は、どこにもない。
船体は、聖域と同じ、未知の黒鉄色の合金で覆われ、どんな攻撃も弾き返す。
内部には、リーベが設計した最新式の魔導炉と、オリビアの操縦に完璧に応えるための、最新の慣性制御システムが搭載された。
さらに、船内には、カリスタのたっての希望で、豪華な談話室や、アステラが喜ぶような、巨大なキッチンまで完備されている。
そして何より、俺の副操縦士席には、聖域の『魂格』の簡易版とも言える、戦術分析用の魔導演算ユニットが、新たに設置されていた。
新生シューティングスター号。
それは、もはや、ただの宇宙船ではない。
銀河最強の戦闘能力と、最高級の居住性を兼ね備えた、俺たちだけの、動く城だ。
その日の夜。
俺は、生まれ変わった愛機のブリッジで、一人、星空を眺めていた。
手に入れた、莫大な富と、宇宙的な名声。
これで、完璧なニート生活が送れる。……はずなのに、どうしてだろう。胸の奥が、妙に静かすぎる。
「ユウト、何してるの?」
ふと、後ろから、アステラの声がした。
振り返ると、そこには、アステラだけでなく、リーベ、オリビア、カリスタの、全員が揃っていた。
「いや、ちょっとな。俺たちの船も、ずいぶん立派になったもんだと思って」
「フン、当たり前ですわ。わたくしが乗る船ですもの。これくらいでなければ、不釣り合いですわ」
カリスタが、得意げに胸を張る。
「まあな。だが、俺にとって、最高の報酬は、この船じゃない」
俺は、四人の顔を、ゆっくりと見渡して、言った。
「俺にとって、最高の報酬は、お前たちだ。お前たちが、俺のそばにいてくれること。それが、何よりの宝物だよ」
俺の素直な言葉に、四人は、顔を見合わせ、そして、幸せそうに、微笑んだ。
その笑顔こそが、俺が、この世界で、命を懸けて守り抜きたかった、たった一つの、真実だった。
俺の目指すスローライフは、もはや何もしない怠惰な生活ではない。このかけがえのない日常を守り抜くこと、それ自体が、俺の新しい目標になっていた。




