第46話:「……見てなさい。次は、私があなたの隣に立つんだから」ツンデレ、決意の刻。
ガーディアン・ゴーレムが、その巨体を沈黙させた。
絶対的な強さの象徴であったそれは、今や俺たちの前に、ただの鉄の塊として、静かにひざまずいている。
大聖堂に満ちていた殺伐とした魔力圧は霧散し、代わりに、心地よい疲労感と、魂が震えるほどの達成感が、俺たち五人を包み込んでいた。
「やった……。私たちが、勝ったのね……」
リーベが、夢見るような声で呟く。
オリビアは、操縦桿を握りしめていたかのように、手を開いたり閉じたりを繰り返しながら、獰猛な笑みを浮かべていた。
そして、アステラは、満面の笑みで俺に駆け寄ると、力強く抱きついてきた。
「やったね、ユウト! 私たち、勝ったんだ!」
「ああ。お前たちのおかげだ。最高のチームだよ、俺たちは」
俺は、アステラの頭を優しく撫でながら、仲間たちを誇らしげに見渡す。
そんな中、ただ一人、カリスタだけが、輪から少し離れた場所で、静かに立ち尽くしていた。
彼女は、自らの剣の切っ先を見つめ、そして、俺と、俺の隣で無邪気に笑うアステラの姿を、じっと見つめている。
その瞳に浮かぶのは、もはや嫉妬や焦りではない。
圧倒的な連携と、揺るぎない信頼で結ばれた俺たちの戦いを目の当たりにし、彼女は、自らの未熟さと、そして、俺という指揮官の存在の大きさを、痛感していた。
これまでの彼女は、パーティの一員ではあっても、どこか「客員」だった。ロゼッタ王家の姫としてのプライドが、心のどこかで、この寄せ集めの仲間たちを見下していたのかもしれない。
だが、今は違う。
このパーティは、個々の力の集合体ではない。ユウトという太陽を中心に回る、一つの惑星系だ。そして、その中心に最も近く、最も強い光を放っているのが、アステラという星。
「(わたくしは……今まで、何をしていたのかしら……)」
カリスタは、唇を強く噛み締めた。
自分の力は、自分のもの。自分の誇りのために、振るうもの。そう信じて疑わなかった。
だが、このパーティでは、力とは、仲間と分かち合い、仲間を守り、そして、指揮官の意志を体現するためにこそ、存在する。
「(見てなさい、ユウト。アステラ……)」
彼女は、強く、強く、決意した。
いつか、必ず。
ただ守られるだけの、お飾りの姫君ではなく。
アステラと並び立ち、彼の隣で、その剣となる存在に、なってみせる、と。
その決意は、彼女の中で、聖炎のように熱く、静かに燃え上がっていた。
「よし、ひと段落ついたな! さすがに腹が減った。一旦、船に戻って、飯にしようぜ!」
俺がそう言って、場の空気を和ませた、その時だった。
俺たちの前に、再びライブラが、音もなく姿を現した。
『素晴らしい戦いでした、勇者ユウト。そして、その仲間たちよ。貴方がたは、聖域の主として、その資格を、見事に証明しました』
その声は、相変わらず平坦だったが、どこか満足げな響きを含んでいるように聞こえた。
だが、彼女の言葉は、そこで終わらなかった。
『しかし、貴方がたの戦いは、まだ始まったばかりです。宇宙の歪みは、今この瞬間も、広がり続けています』
ライブラは、俺たちの足元に、再び宇宙のホログラムを投影する。
そこには、俺たちが追う宇宙海賊『深淵』の活動領域が、赤い光点で示されていた。
『彼ら「深淵」の長が求めるのもまた、彼らなりの「宇宙の調和」なのです。しかし、それは、我々「星の民」が目指した、全ての生命が共存する真の調和とは似て非なる、力による支配と淘汰によってもたらされる、歪んだ秩序……』
ライブラが、静かに説明を続ける。
その時、俺の《解析瞳》が、そして、アステラの『星のささやき』が、同時に、強烈な警報を発した。
「……! この、不穏な魔力は……なんだ……!?」
聖域の外、遥か彼方の宇宙空間から、巨大な、あまりにも巨大な、悪意に満ちた魔力の塊が、凄まじい速度で、この聖域へと近づいてきている。
それは、ガーディアン・ゴーレムなど、比較にならないほどの、絶望的なプレッシャーだった。




