第45話:苦戦!そして掴んだ勝利! これが俺たちの新しい戦い方だ!
戦闘が開始されると、状況は、俺たちの想像以上に過酷なものとなった。
訓練通りには、いかない。実戦とは、そういうものだ。
「くっ……! 速すぎて、狙いが定まらない……!」
アステラの放つ光の槍は、威力こそ絶大だが、俊敏に動き回るガーディアン・ゴーレムを捉えきれない。力が強すぎるあまり、精密なコントロールが、まだ完全ではないのだ。
「オリビア、前に出すぎるな! リーベの支援範囲を飛び出すなと言っただろう!」
「うるさい! アタシは、アタシのやり方でやる!」
オリビアは、獣神化による圧倒的なスピードでゴーレムを翻弄するが、その動きはあまりにも野性的で、リーベの繊細な支援フィールドと、完璧に同期するには至っていない。
「カリスタ! 焦って大技を放とうとするな! お前の役目は、一点突破だということを忘れたのか!」
「わ、わかっていますわよ!」
カリスタもまた、目の前の強敵を前に、冷静さを失いかけていた。プライドが邪魔をして、俺の指示を待たずに、威力の高い聖炎を放とうとしてしまう。
バラバラの攻撃は、ガーディアン・ゴーレムには通用しない。
奴は、俺たちの未熟な連携をあざ笑うかのように、的確に攻撃をいなし、あるいは回避し、その腕や、肩に搭載されたビーム砲で、的確な反撃を加えてくる。肩のビーム砲が火を噴くたびに、大聖堂の空気が震え、肌が焼けるような熱波が俺たちを襲った。あまりにも、格が違いすぎた。
このままでは、ジリ貧だ。
俺は、戦況を冷静に分析しながら、勝利への唯一の道筋を探す。
《解析瞳》を最大稼働させ、ガーディアン・ゴーレムの全ての情報を、俺の脳内にダウンロードしていく。
装甲の材質、関節の可動域、魔導炉の出力、そして、何百回、何千回というシミュレーションの果てに、その行動パターンの中に潜む、僅かな「クセ」と、致命的な「弱点」を、ついに見つけ出した。
「(……見えた。勝機は、ある!)」
俺は、思念通信で、仲間たちに、最後の、そして、最も精密な連携を要求する。
「全員、聞け! 今から、俺の言う通りに動け! 一瞬のズレも許されないぞ!」
俺の覇気に満ちた声に、四人が、はっとしたように、動きを止める。
「リーベ! ゴーレムの足元に、最大出力の重力場を展開しろ! 奴の動きを、コンマ1秒でいい、止めるんだ!」
「オリビア! リーベの重力場が発生すると同時に、獣神化を最大に! 奴の懐、死角である背後に回り込め!」
「カリスタ! オリビアが作った、ほんの一瞬の体勢の崩れを、絶対に見逃すな! 奴の右腕の関節部分、装甲が最も薄い一点だけを狙って、お前の聖炎を、針のように絞って、叩き込め!」
「そして、アステラ!」
俺は、最後の切り札に、告げる。
「全員の攻撃が収束する、その一点! ゴーレムの頭部、モノアイの真下にある、メインの制御魔石! そこに、お前の全魔力を乗せた光を、出力30%でいい、正確に、撃ち込め!」
それは、もはや戦闘指示ではなかった。
秒単位、いや、コンマ秒単位で構成された、壮大な交響曲の指揮。
俺の神がかり的な指揮に、仲間たちの魂が、完璧にシンクロする。
「はい!」
「おうさ!」
「お任せを!」
「うん!」
四人の声が、一つになる。
リーベの重力場が、ゴーレムの動きを、一瞬、確かに止めた。
オリビアが、そのコンマ1秒を逃さず、神速で背後に回り込む。
カリスタの聖炎の刃が、寸分の狂いもなく、ゴーレムの右腕の関節を貫いた。
一瞬、ゴーレムの体勢が、ぐらりと崩れる。
その頭部、制御魔石が、無防備に晒される。
そこに、アステラの放った、一条の光が、吸い込まれるように突き刺さった。
時間は、永遠のように感じられた。
やがて、ガーディアン・ゴーレムは、その動きを、完全に停止した。
赤いモノアイの光が、ゆっくりと消えていく。
そして、巨体は、まるで膝をつくように、ゆっくりと、俺たちの前に、崩れ落ちた。
それは、与えられた力によってもたらされた勝利ではない。
俺たちが、自分たち自身の意志と、絆の力で、初めて掴み取った、本物の勝利だった。




