第44話:最初の実戦訓練! ガーディアン・ゴーレム起動!
数日間にわたる過酷な訓練の末、彼女たちは、暴走していた自らの力を、ようやく制御下に置き始めていた。
アステラの光は、破壊の奔流から、一点を穿つ精密な槍へ。
リーベとオリビアは、互いの思考を同期させ、攻防一体の翼を手に入れた。
そしてカリスタは、誇り高き女王として、その聖炎を、仲間を守るための刃へと昇華させた。
大聖堂の一角に集まった俺たちは、それぞれの成長を確かめ合い、確かな手応えを感じていた。その表情には、疲労の色と共に、困難を乗り越えた者だけが持つ、自信と連帯感が浮かんでいる。
「ふう……。これで、ようやく一安心、ですわね」
カリスタが、安堵のため息をついた、その時だった。
俺たちの前に、聖域の管理AIであるライブラが、音もなく姿を現した。
『基礎訓練は、終了です』
その声は、相変わらず感情を感じさせない、平坦なものだった。だが、俺の《解析瞳》は、彼女のホログラムを構成する魔力粒子が、わずかに揺らめいているのを捉えていた。それは、期待、あるいは、試練を課す前の、冷徹な意志の表れか。
『ですが、シミュレーションは、あくまでシミュレーション。貴方がたが、その力を真に己のものとしたかどうか。これから、最終試験を、開始します』
「最終試験、ですって?」
リーベが、訝しげに問い返す。
ライブラは、その問いには答えず、ただ、大聖堂の最も奥深く、巨大な水晶体が鎮座する方へと、その視線を向けた。
次の瞬間、大聖堂全体が、地鳴りのような激しい震動に見舞われた。
中央の水晶体が、これまでとは比較にならないほどの激しい光を放ち、その足元の床が、舞台装置のように、ゆっくりと開いていく。
そして、奈落の底から、何かが、せり上がってきた。
それは、人型の戦闘兵器だった。
全身を、黒曜石のように艶やかで、しかしどんな攻撃も弾き返しそうな、重厚な黒い装甲で覆われている。その装甲は、周囲の光さえも吸い込んでいるかのようだ。起動音と共に、空気がビリビリと震え、金属とオゾンの混じった匂いが立ち込める。その姿は、これまでに戦ってきたゴーレムたちとは、明らかに次元が違った。洗練されたデザイン、無駄のないフォルム、そして、その全身から放たれる、圧倒的な魔力圧。
あれこそが、この聖域の最終防衛システム――ガーディアン・ゴーレム。
『基礎訓練は終わりです。次は実戦で連携を確認します』
ライブラが、冷徹に告げる。
これは、俺たちのパワーアップをお披露目するための、生ぬるいイベントなどではない。
俺たちが、この聖域の主として、そして、宇宙の歪みと戦う者として、本当にふさわしいのかどうかを試すための、容赦のない「卒業試験」だ。
ガーディアン・ゴーレムの頭部、モノアイのような赤いセンサーが、ギロリと俺たちを捉える。
起動したゴーレムは、しかし、すぐには動かなかった。その両肩と背中のハッチが開き、そこから大量の白い蒸気を、一気に噴出したのだ。
シューッという音と共に、視界が真っ白な霧に覆われる。
「ちっ、目くらましか!」
オリビアが悪態をつく。
だが、それは、ただの目くらましではなかった。
「(違う! これは、ただの蒸気じゃない! 魔力を攪拌し、索敵魔法を無効化するための、特殊な粒子だ!)」
俺の《解析瞳》が、警報を発する。
この霧の中では、魔力探知も、熱源探知も、ほとんど機能しない。完全に、こちらの目を潰しにきている。
「全員、警戒しろ! 敵は、もう動いてる!」
俺が叫んだ、その直後だった。
霧の奥から、巨大な腕が、音もなく、俺の背後へと伸びてきていた。
狙いは、指揮官である、俺の首。
だが、その攻撃が俺に届くことは、決してない。
「させないっ!」
俺が指示を出すよりも早く、アステラが動いていた。
彼女は、俺とゴーレムの腕の間に、まるで瞬間移動したかのように割り込み、その手に形成した光の盾で、拳を完璧に受け止めていた。
キィン! という甲高い音と共に、衝撃波が周囲に広がる。
アステラは、一歩も引かなかった。
「ユウトは、私が守る!」
その瞳には、揺るぎない決意の光が宿っている。
霧が、ゆっくりと晴れていく。
その向こうで、ガーディアン・ゴーレムの赤いモノアイが、獲物を逃がした捕食者のように、不気味な光を放っていた。
本格的な戦闘の火蓋が、今、切って落とされた。




