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第41話: アステラのための集中講義。「星の聖女」への道

破壊された大聖堂の一角で、俺たちは本格的な訓練を開始した。


このままでは、彼女たちは力を振るうどころか、日常生活さえままならない。いつ暴走するとも知れない爆弾を抱えているようなものだ。


「まずは、アステラからだ」


俺は、一番の問題児であり、同時に、このパーティの最強の矛である彼女を指名した。


彼女の課題は明確だ。これまでの戦いでは、『星のささやき』から受け取る魔力を、ただがむしゃらに放出するだけだった。だが、リミッターが外れた今、そのやり方では、コップでダムの水を受け止めようとするようなものだ。入力と出力、その両方を、精密に制御する必要がある。


「いいか、アステラ。今から、光の玉を作ってみろ。大きさは、このくらいだ」


俺は親指と人差し指で、小さな輪を作って見せた。


「うん、わかった!」


アステラは元気よく返事をすると、その手のひらに意識を集中させる。


次の瞬間、彼女の手のひらから放たれたのは、光の玉などという可愛らしいものではなかった。ドーム全体を白く染め上げるほどの閃光と、全てを吹き飛ばさんばかりの爆風。ライブラが咄嗟に魔導防壁を展開しなければ、今頃、俺たちは全員、黒焦げになっていただろう。


「ご、ごめんなさい……! 私、そんなつもりじゃ……!」


涙目で謝るアステラに、俺は優しく声をかける。


「気にするな。そうなることは、わかっていた」


俺は、彼女に魔法の理論を教えるつもりはなかった。彼女に必要なのは、小難しい理屈じゃない。もっと根本的な、自分の力を乗りこなすための「感覚」と「技術」だ。


「アステラ、お前は、魔力を、なんだと思ってる?」

「え? えっと……すごい力……?」

「違う。魔力は、お前の体の一部だ。手や足と同じように、お前の意思で、自由自在に動かせるものだ」


俺は、前世でかじった、スポーツ科学やメンタルトレーニングの理論を応用する。


「いいか、目を閉じて、イメージしろ。お前の体内には、無数の川が流れている。それが、魔力の流れだ。『星のささやき』は、その川に流れ込む、巨大な滝のようなものだ。今のお前は、その滝の水を、そのまま垂れ流しているだけだ。そうじゃない。お前がやるべきは、その滝の前に、巨大なダムを建設し、無数の水路を掘り、必要な場所に、必要な分だけ、水を流してやることなんだ」


俺は、彼女の隣に座り、その手を握る。


《解析瞳》を通して、彼女の体内の魔力の流れを、リアルタイムでモニタリングする。


「そうだ、いいぞ。今、右腕に流れる魔力が少し多すぎる。その流れを、少しだけ、左足の方に回してみろ。そう、ダムの水門を、少しだけ開け閉めするような感覚で……」


俺の声は、まるでバイオフィードバック装置のように、彼女の内部感覚と、実際の魔力の動きを繋ぎ合わせていく。


最初は、アステラも苦戦していた。彼女にとって、魔力とは、感じるものであっても、操作するものではなかったからだ。


だが、彼女には、絶対的な武器があった。


それは、俺に対する、揺るぎない信頼だ。


「ユウトの声が、星のささやきみたいに、優しくて、わかりやすい……」


彼女は、俺の声を道標に、少しずつ、しかし確実に、その感覚を掴んでいく。


そして、数時間が経過した頃。


彼女の開かれた手のひらの上に、一つの光の玉が、静かに浮かんでいた。


それは、以前のような破壊的な光ではない。ピンポン玉ほどの大きさの、しかし、恒星(こうせい)の核のように、高密度で、完璧に安定した、純粋な光の結晶だった。


「……できた……! できたよ、ユウト!」


アステラは、その光の玉を見て、そして、俺の顔を見て、子供のように、満面の笑みを浮かべた。その瞳には、喜びと感謝の涙が、きらきらと輝いていた。


俺は、そんな彼女の頭を、優しく撫でてやった。


俺の役割は、彼女たちを強くすることじゃない。


彼女たちが、自分自身の力で、本当の「最強」になるための、その手助けをすることだ。


「よし、その調子だ。じゃあ、次は……」


俺は、少し離れた場所で、固唾を飲んで俺たちの訓練を見守っていた、次の問題児へと、視線を移した。


「リーベ、オリビア、お前らの番だ。とりあえず、リーベ、その、ちょっとした現実改変の癖を、修正するところから始めようか」


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