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第39話:聖域の祝福ではなく「リミッター解除」。潜在能力の暴走

俺の決意と条件を、ライブラが受諾した。


彼女は、俺たち一人一人を見回すと、静かに、しかし有無を言わさぬ力強さで告げた。


『勇者ユウト。そして、その仲間たちよ。貴方がたがこれから直面するであろう、宇宙の(ひず)みとの戦いに備え、この聖域より、祝福を授けます』


「祝福、ですって?」


カリスタが、訝しげに眉をひそめる。


『正確に言えば、祝福ではありません。貴方がたが、生まれながらにしてその身に課せられている、潜在能力の(かせ)――リミッターを、強制的に解除する、ということです』


ライブラがそう言った瞬間、中央の巨大な水晶体が、地鳴りのような低い唸りを上げて、激しく明滅を始めた。ドーム全体が震え、俺たちの体を通して、凄まじい魔力が流れ込んでくる。


「なっ……!? これは……!」


俺以外の四人の体が、眩い光に包まれる。


それは、安易なパワーアップなどではなかった。彼女たちの肉体と魔力に、聖域のシステムが直接干渉し、その魂の奥底に眠っていた、本来の力を、無理やり引きずり出していく。大聖堂の空気が、制御を失った魔力で飽和(ほうわ)し、ビリビリと肌を刺す。


「あああああああっ!」


最初に悲鳴を上げたのは、アステラだった。


彼女の体から、制御不能なほどの光の奔流が溢れ出し、大聖堂の壁を薙ぎ払わんばかりに荒れ狂う。その瞳は焦点が合わず、ただ苦痛に満ちていた。


「きゃあああっ!?」


次に、リーベの周囲の空間が、ぐにゃりと歪曲(わいきょく)し始めた。彼女の思考そのものが、現実世界に漏れ出し、無差別に空間を歪曲させているのだ。彼女が創り出すはずの魔法フィールドが、今や彼女自身を飲み込もうとしていた。


「ぐっ……う……! 体が……言うことを……!」


オリビアの体からは、獣のようなオーラが立ち上り、その筋肉が異常なまでに隆起する。彼女の得意とする「獣神化」が、その加速に肉体そのものが耐えきれず、悲鳴を上げているのだ。


そして、カリスタ。


「いやっ……! 私の炎が……!」


彼女の聖炎は、もはや聖なる光ではなく、全てを焼き尽くす破壊の化身と化していた。黄金の炎が、彼女の制御を離れて周囲に燃え広がり、美しい大聖堂を無慈悲に焦がしていく。


「力が……言うことを、聞かない……!?」


彼女たちは、突如手にした、あまりにも強大すぎる力に戸惑い、苦しんでいた。


それは、祝福などではない。


乗りこなせなければ、乗り手自身を破滅させる、危険な暴走。


ライブラは、その地獄絵図を、ただ静かに見つめていた。


その瞳は、まるで、こうなることを初めから予測していたかのようだった。


『さあ、勇者ユウト。これが、貴方が背負うと決めた、仲間たちの運命です。貴方の役割は、その荒れ狂う力を乗りこなすための、道標となること』


彼女の冷徹な声が、混沌の中で響き渡る。


俺は、苦しむ仲間たちの姿を前に、奥歯を強く噛み締めた。


安易な強化でないことなど、百も承知だ。


だが、これは、俺たちがこれから始まる「本当の試練」に立ち向かうために、絶対に乗り越えなければならない、最初の壁だった。


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