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第36話:明かされる転生の秘密と、より大きな脅威の影

『さて、勇者。始めましょう。貴方が、なぜこの世界に呼ばれたのか。そして、この宇宙が、今、どのような危機に瀕しているのかを、お話ししなければなりません』


ライブラの静かな言葉が、荘厳な大聖堂に響き渡る。


俺はまだ、脳内に叩きつけられた情報の奔流から完全に回復しておらず、混乱したままその場に膝をついていた。アステラが心配そうに俺の背中を支えてくれている。


「俺が……呼ばれた……?」


それは、俺の転生が、ただの偶然や気まぐれではなかったことを示唆(しさ)していた。


ライブラは、俺の疑問に答えるように、ゆっくりと語り始める。その声は感情を感じさせないが、一つ一つの言葉には、星の重みのような、抗いがたい真実の響きがあった。


『貴方の転生は、この聖域のシステムによって意図的に引き起こされた事象です。我々、古代「星の民」が、遥かなる未来のために遺した、最後の希望――それが、勇者召喚計画です』


ライブラがふわりと手をかざすと、中央の巨大な水晶体が、その内部の光を明滅させ、俺たちの目の前に壮大な宇宙のホログラムを投影した。銀河が渦を巻き、星々が生まれ、そして死んでいく。その美しい光景の中に、しかし、不吉な黒い染みのようなものが、ゆっくりと広がっていくのが見えた。それは、まるで健康な細胞を(むしば)む癌のように、じわじわと銀河を侵食していく。見ているだけで、魂が凍てつくような、根源的な恐怖を感じさせた。


『この宇宙は、不安定な存在です。宇宙全体に満ちる魔力の流れ、すなわち「星のささやき」は、常に揺らぎ、時として大きな(ひず)みを生じさせます。その(ひず)みは、放置すればやがて宇宙全体の調和を乱し、全ての生命を緩やかな死へと導く、一種のバグのようなもの』


その黒い染みを見ていると、胸がざわつき、言いようのない不安感に襲われる。アステラも、苦しそうに顔を顰めていた。彼女には、その「(ひず)み」が、より直接的に感じられるのだろう。


『我々「星の民」は、その(ひず)みを正し、宇宙の調和を保つための調整装置として、この聖域と、その中枢である「勇者の魂格(ソウル・フレーム)」を建造しました。そして、その魂格(ソウル・フレーム)を起動・制御するために不可欠な生体インターフェース――それこそが、勇者である貴方の役割なのです』


ライブラは、俺をまっすぐに見つめて言った。


『貴方の魂は、特別です。異世界からもたらされた体系化された科学知識と、あらゆる事象を情報として解析する《解析瞳》。その二つを併せ持つ魂だけが、魂格(ソウル・フレーム)の膨大な情報を処理し、宇宙の魔力バランスを正しく調整することができるのです』


つまり、俺の転生も、このチート能力も、全てはこのための「仕様」だったというわけか。


俺は、ただの便利な部品だったのだ。


俺が呆然としていると、ライブラはさらに衝撃的な事実を告げた。


『貴方がたが追っている『深淵』と名乗る海賊団もまた、この宇宙の(ひず)みが生み出した「兆候」の一つに過ぎません。彼らは、歪んだ魔力の影響で生まれた、いわば宇宙のバグが生み出したエラー。彼らを放置すれば、(ひず)みはさらに拡大し、いずれは手の施しようがなくなるでしょう』


『深淵』は、ただのならず者の集団ではなかった。


そして、彼らを倒したとしても、根本的な解決にはならない。(ひず)みそのものを正さない限り、第二、第三の『深淵』が、いずれまた現れる。


『勇者ユウト。貴方には、この聖域の中枢となり、宇宙の調和を守るという、重大な使命が課せられています』


ライブラの言葉は、まるで決定事項のように、静かに、しかし重く、俺の肩にのしかかってきた。


俺のニート計画は、どうやら、宇宙規模の壮大なプロジェクトに、強制的に組み込まれてしまったらしい。


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