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第35話:美少女AI「ライブラ」起動! 「貴方を『勇者』として認証。魂格《ソウル・フレーム》を起動します」

目の前に現れたホログラムの少女に、俺たちは完全に動きを止めていた。


アステラとカリスタは咄嗟に剣を構え、オリビアは俺を庇うように前に出る。リーベだけが、そのあり得ない技術の結晶を、信じられないといった表情で見つめていた。


ホログラムの少女は、そんな俺たちの警戒など意にも介さず、ただ静かに、俺だけを見つめていた。その瞳は、何千年もの時を見てきたかのような、深い叡智(えいち)の色を湛えている。


やがて、彼女の唇が、鈴を転がすような、しかし感情の乗らない平坦な声で、言葉を紡いだ。


『――システム、再起動。自己診断プログラム、オールグリーン。……ようこそ、巡礼者よ。私は、この聖域の管理AI、コードネーム「ライブラ」。貴方の来訪を、永い間、お待ちしておりました』


「AI……ですって……?」


リーベが、かすれた声で呟く。この世界の魔導技術でも、自律思考を持つ完全なAIは、理論上のものでしかないはずだ。


ライブラと名乗る少女は、俺たちの存在などないかのように、俺に向かってふわりと浮遊し、その顔を覗き込んできた。


『対象の魂のスキャンを開始します』


ライブラの瞳が、淡い光を放つ。俺は、まるで魂の奥底まで見透かされるような、不思議な感覚に襲われた。


『……スキャン完了。対象名、ユウト。転生者。魂の波長、霊子の構成パターン、及び前世における知識体系の保有を確認。……適合条件、クリア。貴方を、星の民が待ち望んだ「勇者」として、正式に認証します』


「勇者……? 俺が……?」


何を言っているんだ、このAIは。勇者なんて、面倒なだけの役職じゃないか。俺はただ、運良くチート能力を手に入れただけの、元社畜だぞ。


俺の混乱をよそに、ライブラは淡々と続けた。


『これより、勇者の魂格(ソウル・フレーム)を起動、接続します。貴方の魂に、本来の機能を取り戻すための、最終調整シークエンスです。……覚悟は、よろしいですか?』


「は? 覚悟って、おい、待て……!」


俺が何かを言う前に、ライブラの指先が、俺の額にそっと触れた。


次の瞬間、俺の脳内に、情報の津波が叩きつけられた。


ぐあああああああっ!


声にならない絶叫が、頭蓋の内側で木霊(こだま)する。


《解析瞳》が、強制的に、そして暴力的に、その性能を拡張されていく。


これまで見ていた「データ」が、ただの表層的な情報に過ぎなかったことを、俺は痛感させられた。


俺の脳は、今や、この宇宙を構成する根本的な法則――『星のささやき』の膨大な情報量を、直接受信するアンテナと化した。星々の誕生、生命の進化、魔力の流れ、時間のうねり。その全てが、膨大なデータパッケージとして、俺の中に流れ込んでくる。


そして、俺の前世における体系化された現代科学の知識――物理学、化学、数学、工学――それらが、流れ込んでくる膨大なデータを論理的に解釈し、最適解を導き出すための、巨大な「アルゴリズムライブラリ」として機能し始めた。


《解析瞳》の「情報連携インターフェース」機能が起動。


俺の脳は、今や、この聖域のシステムと接続した、生体スーパーコンピューターへと変貌を遂げたのだ。


やがて、情報の嵐が過ぎ去る。


俺は、ぜえぜえと肩で息をしながら、その場に膝をついた。


世界が、全く違って見えていた。


仲間たちの心配そうな顔。彼女たちの体内を流れる魔力の循環、感情の起伏によって変化する微弱な生体魔力、その全てが、俺には手に取るように「視える」。アステラの純粋な心配、オリビアのぶっきらぼうな優しさ、リーベの知的な好奇心、カリスタの素直になれない気遣い。彼女たちの心が、まるで開かれた本のように、俺の中に流れ込んでくる。


「ユウト、大丈夫!?」


アステラが駆け寄ってくる。


俺は、ゆっくりと顔を上げた。


「ああ……。問題、ない……」


ライブラは、そんな俺を、静かに見下ろしていた。


魂格(ソウル・フレーム)の起動、完了。おめでとうございます、勇者ユウト。これで貴方は、この宇宙の真理を識る、第一歩を踏み出しました』


そして、彼女は告げる。


俺の転生が、決して偶然などではなかったという、残酷な真実を。


『さて、勇者。始めましょう。貴方が、なぜこの世界に呼ばれたのか。そして、この宇宙が、今、どのような危機に瀕しているのかを、お話ししなければなりません』


その言葉は、俺たちの冒険が、新たな、そして、より過酷なステージへと進んだことを、静かに告げていた。


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