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第33話:カリスタの聖炎が道を拓く!「わ、私の力、ちゃんと役に立てなさいよね!」

激しい戦闘の末、最後のゴーレムが活動を停止し、巨大なホールに静寂が戻った。


床には、無数のゴーレムの残骸が転がっている。


「はあ……はあ……。な、なんですの、この数は……!」


カリスタが、剣に手をつき、荒い息を整えている。彼女の額には、玉のような汗が光っていた。


アステラも、さすがに魔力を消耗したのか、少しだけ疲れた表情を見せている。


「よくやった、みんな。少し休憩するぞ」


俺の言葉に、四人はその場に座り込み、束の間の休息を取る。


カリスタは、悔しそうに唇を噛みながらも、俺たちの連携――特に、俺の指揮能力の異常さを、認めざるを得ないといった複雑な表情をしていた。


休憩もそこそこに、俺たちは再び聖域の奥へと進んでいく。


やがて、俺たちの目の前に、回廊の終わりを告げる、巨大な扉が姿を現した。


それは、物理的な扉ではなかった。


空間そのものが、眩い光のベールによって固く閉ざされている。その表面には、古代の文字とも幾何学模様ともつかない、無数の紋様が絶えず明滅していた。


「これは……強力な封印魔法ですね。物理的な攻撃は、おそらく一切通用しません」


リーベが、専門家としての見解を述べる。


俺は、その光のベールに《解析瞳》を向けた。


「(……なるほど。やはり、そうか)」


脳内に流れ込んでくる情報を分析し、俺は確信する。


この封印を解く方法は、ただ一つ。


俺は、後ろに控えていたカリスタに向き直った。


「カリスタ。お前の出番だ」

「え……?」


俺の言葉に、彼女は驚いたように目を見開く。


これまでの戦闘では、アステラやオリビアが派手に活躍する場面が多く、彼女の専門である対魔物系の聖炎魔法は、決定的な役割を果たすには至っていなかった。内心、少しだけ焦りを感じていたのかもしれない。


「この封印は、極めて特殊な魔力パターンで構成されている。これを破るには、同じパターンを持つ、正反対の属性の魔法をぶつけて、中和させるしかない」


俺は、カリスタの碧い瞳をまっすぐに見つめて言った。


「そして、その条件を満たす魔法は、この宇宙にただ一つ。お前の『破邪の聖炎』だけだ」


俺の言葉に、カリスタは息を呑んだ。


パーティ全体の運命が、今、自分の双肩にかかっている。その重圧と、そして、自分が必要とされているという高揚感が、彼女の中で渦巻いているのがわかった。


彼女は、ふいっと顔をそむけると、いつもの調子で言い放つ。


「フン! 当たり前ですわ! この程度の封印、このカリスタ・ロゼッタにかかれば、朝飯前ですのよ! あなたたち、全員下がっていなさい!」


強がりを言っているが、その声はわずかに上ずり、頬もほんのりと赤い。


彼女は扉の前に立つと、剣を構え、精神を集中させ始めた。彼女の体から、黄金色の聖なる魔力が、炎のように立ち上り始める。


その瞬間だった。


俺たちが進んできた回廊の壁や床が、音を立てて開き、そこから新たなゴーレムの軍勢が出現した。先ほどよりも、一回り大きく、より強力な魔力を放っている。


「ちっ、やっぱり来たか! 聖域の防衛システムが、カリスタの魔力に反応したんだ!」


俺は叫んだ。


「アステラ、リーベ、オリビア! カリスタを死んでも守れ! 彼女が魔法を完成させるまで、一匹たりとも近づけるな!」

「「「了解!」」」


三人が、カリスタを守るように、三角形の陣形を組む。


アステラが、光の壁を展開し、ゴーレムたちの最初の突撃を防ぐ。


オリビアが、その壁の横から飛び出し、敵陣をかき乱す。


リーベが、後方から支援魔法と妨害魔法を的確に放ち、敵の動きを封じていく。


仲間たちに背中を守られながら、カリスタはただひたすらに、己の魔力を高めていく。


いつもは一人で戦ってきた。誰かに背中を預けるなど、考えたこともなかった。だが、今、彼女の背後には、自分を信じ、守ってくれる仲間たちがいる。その温かい感覚が、彼女の力を、さらに高みへと押し上げていく。


やがて、彼女の魔力は頂点に達した。


「焼き尽くしなさい、我が奥義! 破邪の聖炎!」


彼女の剣先から放たれたのは、もはや炎ではなかった。


聖なる力の全てを凝縮した、黄金の奔流(ほんりゅう)。その場にいた全員が、思わず息を呑むほどに神々しい光景だった。彼女の背後で戦う仲間たちの声援が、まるで聖歌のように聞こえる。聖炎は、扉の光のベールに激突すると、破壊するのではなく、まるで鍵と鍵穴が合うように、静かに、そして完全に融合(ゆうごう)した。


次の瞬間、光のベールは、ガラスのように粉々に砕け散り、無数の光の粒子となって消滅した。


その向こうには、聖域の最深部へと続く、新たな道が開かれている。


「わ、私の力、ちゃんと役に立てなさいよね!」


カリスタは、消耗しきってその場に座り込みながらも、満面の笑みを隠しきれない様子で、俺に向かってそう言った。


その顔は、誇りと、そして、仲間として認められた喜びに、輝いていた。


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