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第32話:解析の瞳VS古代の罠。俺のハッキングが火を噴くぜ!

聖域の内部は、不気味なほどの静寂に包まれていた。


ひんやりとした金属の壁がどこまでも続く、無機質な回廊。天井に等間隔で埋め込まれた魔石が、青白い光を投げかけ、俺たちの長い影を作り出す。時折、壁の奥から聞こえる「ウィーン」という低い駆動音だけが、この要塞が今も生きていることを示していた。


「な、なんですの、この場所は……。まるで、巨大な機械の体内みたいですわね」


カリスタが、不安げに周囲を見回しながら呟く。


その時、俺たちの前方に、行く手を阻むように陽炎(かげろう)のように揺めく光の壁が出現した。それは、壁や床、天井から放たれる無数のレーザーが複雑に交差して形成された、触れた者は一瞬で(ちり)と化すであろう、まさしく死のトラップだった。


「レーザーバリアか。古典的だが、厄介だな」


俺が呟くと、リーベが魔導水晶盤を取り出して分析を始める。


「ダメです! 魔力構造が複雑すぎて解析できません! おそらく、触れたものは一瞬で分子レベルまで分解されます!」

「フン、こんなもの、私の聖炎で焼き尽くしてやりますわ!」


カリスタが剣に手をかけるが、俺はそれを手で制した。


「待て。下手に攻撃すれば、防衛魔法が作動して、もっと面倒なことになるかもしれん」


俺は、その光の格子をじっと見つめ、《解析瞳》を最大稼働させる。


俺の目には、それはもはや単なる光の壁ではない。レーザーを発する射出口、それらを制御する魔導回路、魔力を供給する魔導ケーブル、その全てが、青写真のように詳細に視える。


「(なるほどな。魔導回路のパターンは三種類。それぞれが不規則なタイミングで起動しているように見えるが、全体としては一定の周期性がある。これは、魔法の罠じゃない。高度なセキュリティシステムだ。つまり――ハッキングできる!)」


俺は、社畜時代に培ったプロジェクトマネジメント能力を全開にする。


「いいか、よく聞け。これは、タイミングを合わせて駆け抜けるだけの単純なゲームだ」

「ゲームですって!?」

「ああ。オリビア、お前は三歩前に出て、そこから右に二歩。俺が『今だ』と言ったら、全力で駆け抜けろ」

「へっ、面白えじゃねえか!」

「アステラ、天井の、あそこに見える魔力伝達用のケーブル。あれを、ごく微弱な光の魔法で撃て。ほんの一瞬だけ、魔導回路に過負荷を発生させるんだ。いいな、絶対に強く撃つなよ」

「うん、わかった!」

「リーベ、オリビアが走り出した後、俺の視線の先、通路左側の壁際だ。 そこに瞬間的な魔導防壁を展開しろ。不規則な軌道のレーザーが、一筋だけそこを通る。それを防いでくれ」

「はい!」

「カリスタ、お前は俺のすぐ後ろにいろ。何があっても、俺から離れるな」

「なっ、わ、私が護衛ですの!? ……わ、わかりましたわよ!」


完璧な業務分担(タスクアサイン)。俺の指示に、全員が迷いなく頷く。


「よし、行くぞ!――アステラ、撃て!」


アステラの指先から放たれた小さな光弾が、寸分の狂いもなく天井のケーブルに着弾する。一瞬、レーザーの動きが僅かに乱れた。


「オリビア、今だ!」

「おうさ!」


オリビアが、獣のような俊敏さで、光の格子をすり抜けていく。


「リーベ!」


オリビアが走り出した直後、リーベの魔導防壁が、予測通りの位置に展開され、不規則なレーザーを完璧に防いだ。


オリビアがレーザー網を抜け、セキュリティシステムを解除する。俺はカリスタの手を掴み、安全になった回廊を悠々と歩いていく。


俺たち五人は、まるで散歩でもするかのように、死のトラップを無傷で突破した。


だが、聖域の歓迎は、まだ終わらない。


レーザー地帯を抜けた先は、巨大なドーム状のホールだった。壁際には、まるで衛兵のように、人型のゴーレムが何十体も静かに佇んでいる。


俺たちがホールの中心に足を踏み入れた瞬間、ゴーレムたちの目が、一斉に赤い光を灯した。


ギ、ギ、ギ、という金属の軋む音と共に、ゴーレムたちが起動する。


その動きは、先ほどまでの岩石生物とは比較にならないほど、滑らかで、そして速い。


「リーベ、氷結魔法で奴らの足を止めろ! 関節部分の魔導回路が弱点だ!」

「オリビア、カリスタ、アステラ! 攻撃に回れ! 狙うは、胸に埋め込まれた魔石! あれが奴らのコアだ!」


俺の指示が飛ぶと同時に、四人が一斉に動く。


リーベの氷結魔法が、ゴーレムたちの足元を凍らせ、その動きを鈍らせる。


オリビアが、その隙を突いてゴーレムの群れに突込み、その注意を引きつける。


そして、アステラとカリスタの、光と炎の魔法が炸裂した。


アステラの放つ光の槍が、ゴーレムの硬い装甲を紙のように貫き、胸の魔石を砕く。


カリスタの聖炎の剣が、敵の攻撃をいなしながら、正確にコアを斬り裂いていく。


それは、まるで統率の取れた軍隊のような、完璧な連携だった。


俺という指揮官を得て、彼女たちの力は、今や一つの完全な戦闘システムとして機能している。


俺は、その光景に満足げに頷きながら、次の一手を思考するのだった。


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