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第30話:重力圏突入! いざ「遺失された鋼鉄の聖域」へ!

シューティングスター号での穏やかな航海は、あっという間に過ぎ去った。キッチンからクッキーの甘い香りが漂い、ブリッジに仲間たちの笑い声が響く。そんな和やかな日常は、来るべき大きな戦いを前にした、かけがえのない時間だった。そして、俺たちは決意を新たに、ついに目的の宙域へと到達する。


ワープ航行中のシューティングスター号のブリッジは、以前とは全く違う、心地よい緊張感と、確かな一体感に満ちていた。


もはや、カリスタとオリビアが些細なことでいがみ合うこともない。ゴーストシップでの一件以来、彼女たちは互いの実力を認め合い、それぞれの役割を完璧に理解していた。


「ちょっと、オリビア! 少し揺れが激しいですわよ。わたくしの淹れた紅茶がこぼれてしまうでしょう!」


後方のオペレーター席から、カリスタが優雅に、しかし少しだけ楽しげな声で文句を言う。


「へっ、お姫様は猫舌なんだろ? 少し冷ましてやるよ、ありがたく思いな!」


操縦席のオリビアが、ニヤリと笑って言い返す。もはや、そこに以前のような険悪な雰囲気はない。軽口を叩き合える、気の置けない仲間となっていた。


「ユウト、そろそろ目標座標に到着します。ワープアウトの準備を」


リーベの冷静な声が響く。彼女の言葉に、船内の空気がピリリと引き締まった。


オリビアが操縦桿を握り直し、その瞳に鋭い光を宿す。


「よし、行くぜ! どんな化け物が眠ってるか知らねえが、アタシたちのシューティングスター号の敵じゃねえ!」


オリビアの威勢のいい声と共に、ワープ航行特有の空間の歪みが収束し、船は静寂の広がる通常空間へと帰還した。


次の瞬間、窓の外に広がる光景に、俺たちは言葉を失った。


目の前に浮かぶのは、巨大な、あまりにも巨大な人工の要塞だった。


黒鉄色をしたその建造物は、幾何学的な模様を描きながら、まるで宇宙そのものを支配するかのように鎮座している。表面には、都市ほどの大きさがある砲塔や、意味の分からないアンテナ群が無数に設置され、その威容は見る者に原始的な恐怖と、神聖な畏怖を同時に抱かせた。


「あれが……『遺失された鋼鉄の聖域』……」


リーベが、ゴクリと喉を鳴らす。


その巨大な要塞の前には、天然の防壁のように、無数の小惑星が密集した広大なアステロイドベルトが広がっている。そして、要塞の背後には、不気味なほどに静まり返った、赤茶色の荒野が広がる惑星が浮かんでいた。生命の気配が一切感じられない、死の星だ。


「(壮大なニート生活を目指していたはずが、とんでもない場所に来ちまったもんだな……)」


俺は内心で自嘲(じちょう)しつつも、不思議と、後悔はなかった。むしろ、この絶望的な光景を前に、心が奮い立つのを感じていた。


「ユウト、これ以上はワープで近づけません!」


リーベが報告する。


「聖域と惑星の重力干渉が強すぎて、空間座標が安定しません! このままワープを続ければ、船ごと座標の狭間に呑まれます!」

「つまり、ここから先はアタシの腕の見せ所ってわけだ」


リーベの悲痛な声とは対照的に、オリビアは獰猛な笑みを浮かべていた。


目の前に広がるのは、並の操舵士なら恐怖で操縦桿を握ることさえできないであろう、絶対的な死地。だが、彼女にとっては、自らの魂を燃やすに足る、最高の舞台だった。


「腕が鳴るぜ……!」


彼女は、恋する乙女のような熱っぽい吐息と共に、そう呟いた。


「行くぞ、お前ら! アタシの操縦に、しっかりついて来な!」


オリビアの号令一下、シューティングスター号は、まるで流星のように加速し、渦巻く小惑星の迷宮――『遺失された鋼鉄の聖域』への最初の試練へと、その機首を向けたのだった。


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