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第17話:聖域の鍵は「破邪の聖炎」。……あのツンデレ娘を仲間にするしかないのか?

「これが……遺失された鋼鉄の聖域の座標……! それに、この記述……聖域の封印を解くには、特殊な魔力パターンを持つ鍵が必要……?」


リーベが興奮気味に、魔導水晶盤(クリスタルパネル)に映し出された古代文字を解読していく。その隣で、オリビアとアステラも固唾を飲んで画面を見つめている。


俺は、リーベが指し示す、鍵となる魔力パターンの図形に、既視感を覚えていた。複雑に絡み合いながらも、どこか気品と力強さを感じさせる、炎のような紋様。


「(このパターン……どこかで……)」


《解析瞳》が、俺の記憶の書庫を高速で検索する。


膨大な情報の中から、一つの鮮烈な記憶が引き出された。


ルクスのギルド、戦闘演習場。金色の髪を振り乱し、プライドをかけて放とうとしていた、あの技。


あの金髪お嬢様――カリスタが切り札としていた、王家伝来の固有魔法。


『破邪の聖炎』。


その発動時に観測された魔力パターンと、魔導水晶盤(クリスタルパネル)に映る鍵の紋様が、寸分の狂いもなく一致していた。


「(マジかよ……)」


俺は、思わず天を仰いだ。


あの、最高に面倒くさいツンデレお嬢様の力が必要だというのか。せっかくコテンパンにしてやったというのに、今度はこっちから頭を下げて頼みに行かなければならないとは。なんという皮肉だ。これは、俺の「完璧なニート生活」実現プロジェクトにおける、最大級の障害にして、最も厄介なタスクだ。


「どうしたんだい、ユウト? 難しい顔しちゃって」

「ああ、いや……。この鍵、心当たりがある」


俺は、渋々といった体で口を開いた。


「この魔力パターンは、ルクスで俺たちに喧嘩を売ってきた、あの金髪お嬢様の魔法だ。彼女の固有魔法、『破邪の聖炎』と完全に一致する」


「なんですって!?」


俺の言葉に、三人が三者三様の反応を見せる。


ブリッジの空気が、一瞬で凍りついたようだった。アステラは「あの子の力が必要なんだね!」と素直に驚き、リーベは「なるほど、王家に伝わる魔法ですか……。それなら、古代文明との繋がりがあっても不思議ではありません」と納得の表情。


だが、オリビアだけは、あからさまに顔を顰めた。


「冗談じゃない! なんでアタシたちが、あんな女に頭を下げなきゃなんないんだい! 他に方法はないのかよ!」

「気持ちはわかるが、こればっかりは仕方ない。《解析瞳》が、このパターンでしか聖域の封印は解けないと示している。唯一無二の鍵なんだ」


オリビアはまだ納得がいかない様子で腕を組んでいる。


俺は、そんな彼女の肩を軽く叩いた。これはチーム内のコンフリクトマネジメントだ。社畜時代に嫌というほど経験した。


「まあ、考えようによっちゃ、これはチャンスだ。あのプライドの高いお嬢様を、俺たちのパーティに引き入れる絶好の機会じゃないか。戦力が増えるのは悪いことじゃないだろ? プロジェクト成功のためには、多少の人間関係のコストは許容範囲だ」


俺がニヤリと笑って言うと、オリビアは「……アンタ、本当に性格悪いね」と呆れ顔で呟きながらも、一応は納得してくれたようだった。


「よし、決まりだな! 進路変更だ!」


俺は、コクピットの副操縦士席にどっかりと腰を下ろし、宣言した。


「リーベ、首都惑星ハライソの航路はキャンセルだ! 新しい目的地を入力してくれ!」

「新しい目的地、ですか?」

「ああ。あのツンデレお嬢様の故郷――惑星『ロゼッタ』だ!」


俺の言葉に、リーベは少し驚きながらも、すぐさまコンソールを操作し、新たな航路を設定していく。


どうやら、俺の平穏なスローライフ計画は、また少し、遠回りになるらしい。


だが、その面倒くさささえも、この仲間たちと一緒なら悪くないと思えるようになってきている自分に、俺は気づいていた。


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