第11話:これが俺のパーティだ! アステラ無双と完璧な連携魔法!
「(な、なんですの、この連携は……!? まるで、一つの生き物のように……!)」
カリスタの表情から、焦りと驚愕に満ちた心の声が《解析瞳》を通して俺の頭に響いてくるようだ。そうだ、驚け。お前が今まで戦ってきた相手は、個々の力を足し算でしか使えない烏合の衆だったんだろう。だが、俺のチームは違う。俺という頭脳を得て、彼女たちの力は乗算的に増大する。
「(カリスタの剣技は確かに一流だ。だが、両翼のアンナとライラは、彼女のレベルには達していない。連携に僅かなズレと迷いがある。ライラを潰した今、残るアンナは精神的に動揺しているはず。そこを突く!)」
「(オリビア、ライラを振り切れ! 次はアンナだ!)」
「(へっ、お安い御用だよ!)」
オリビアは倒れたライラに一瞥もくれず、獣のような瞬発力で一気に離脱。その動きは予測不能な軌道を描き、アステラとカリスタの激しい打ち合いに気を取られていたアンナの側面に、まるで瞬間移動したかのように回り込む。
「(リーベ、アンナの足元に氷結魔法! 動きを完全に止めろ!)」
「(ええ、お任せを!)」
俺の指示は、リーベの詠唱よりも速い。彼女の指先から放たれた絶対零度の冷気が、アンナの足元を瞬時に凍てつかせ、その動きを完全に封殺した。バランスを崩し、防御姿勢がガラ空きになる。そこへ、オリビアの無慈悲な鉄槌――否、岩をも砕く蹴りが炸裂した。
「しまっ……きゃあ!?」
アンナがみっともない悲鳴を上げて、操り人形のように宙を舞う。これで二人目。
広大な演習場に残されたのは、アステラと対峙するカリスタただ一人。その顔からは、先程までの自信と余裕が完全に消え失せ、信じられないものを見るかのような色に染まっている。
「こ、この……寄せ集めが、この私を相手に……!」
1対3という絶望的な状況。だが、ロゼッタ王家のエリートとしてのプライドが、彼女に退くことを許さない。カリスタは奥歯をギリリと噛み締めると、最後の切り札を切ることを決意したようだ。彼女の体から、これまでとは比較にならないほどの膨大な魔力が、陽炎のように立ち上り始める。
「(来るぞ、全員警戒!)」
「塵も残さず消し飛びなさい! 我が王家に伝わりし、破邪の聖炎!」
カリスタが天に叫ぶと同時に、彼女を中心に灼熱の魔力が渦を巻き、演習場の空間そのものがぐにゃりと歪む。これは、広範囲の敵を一瞬で焼き尽くす、殲滅用のフィールド魔法。並の冒険者なら、その凄まじい熱量と魔力圧だけで蒸発してしまうだろう。
だが、俺の《解析瞳》は、その魔法の構造すらも白日の下に晒していた。
「(なるほどな。かなり特殊な魔力パターンだ。周囲の空間から魔力を強制的に集めて、指向性を持たずに一気に解放する、か。大雑把だが、威力は高いし、魔力干渉で魔導防壁も無効化するのか。だが、その分、魔法構築時の外部からの魔力干渉には極端に弱い! 発動前に魔力の流れを乱せば、制御不能に陥る!)」
「(アステラ! カリスタの周囲の魔力を、お前の光魔法でかき乱せ! 攻撃じゃない、ただ魔力の流れを乱すことだけ考えろ! 制御を奪うんだ!)」
「(うん、わかった!)」
アステラは、カリスタが放つ圧倒的なプレッシャーにも臆することなく、その両手に太陽のような光球を生み出す。そして、それを攻撃に使うのではなく、ふわりと拡散させた。無数の光の粒子が、カリスタの周囲に満ちていた魔力を優しく中和し、その奔流をかき乱していく。
「なっ……!? 魔力が、言うことを……!? なぜ……!?」
切り札であるはずの聖炎が、主の制御を離れて暴走を始める。カリスタの顔に、初めて焦りと絶望の色が浮かんだ。
その一瞬の隙を、俺の最強の矛が見逃すはずがなかった。
アステラは、拡散させた光の粒子を再びその身に収束させ、神速でカリスタの懐に飛び込む。
そして、しなやかな脚から放たれる、美しい半月を描く回し蹴り。
その蹴撃は、カリスタの白い首筋の、皮膚一枚のところでピタリと止まっていた。放たれた風圧だけで、カリスタの全身の産毛が逆立ち、肌には粟が立つ。死、という概念が、初めて現実的なものとして彼女の脳裏をよぎった。あまりの恐怖と、そして、自分では決して届かない圧倒的な実力差を前に、カリスタは金縛りにあったように、指一本動かすことができなかった。
勝敗は、決した。




