第53話 わたしの指のさきには、恋があります。
わたしの指のさきには、恋があります。
ねえ、知っていますか?
わたしの指のさきには、恋があります。
きみにふれたいって思う、思いがあります。
大好きなきみが今日もすやすやとねています。
かわいらしい顔で、ねています。
なんだかいたずらをしたくなります。
鼻をつまんだり、ほっぺたにさわったら嫌がるかなって、そんなことを思ってみます。
わたしの声はきみには聞こえません。
だから、勇気を出して、きみのことが大好きだって、わたしがそう言っても、きみにはなにも聞こえていないのです。
でも、きみは今日も笑っています。
だけど、そんな優しいきみがみんなに隠れてこっそりと泣いている日もあります。そんな日は、わたしはとっても悲しい気持ちになります。
きみはいま、笑っています。
きみが笑ってくれたから、今日はとってもいい日になると思うんです。
わたしはきみとずっと一緒にいたい。
きみがいてくれるだけで、世界がとっても、きらきらと輝いて見えるんです。
きみの声はきっと魔法になります。
きみは魔法使いなんです。
わたしに愛を与えてくれました。
とってもたくさんの愛を。
溢れるほどの、愛を。
こうしてわたしが人間の姿になれるだけの愛をくれました。
どうもありがとう。さな。
ねえ、さな。
愛とはなんでしょうね。
愛とは、誰かに与えてもらうもの。
愛は、育てるものなのかもしれません。
ゆっくりと。
時間をかけて。
大きくなって、いくものなんかもしれませんね。
きみの中で。
わたしの中で。
みんなの中で。
愛はみんなが欲しがります。
欲しがってばかりいて、誰も自分でははない誰かにあげようとはしないんです。
天秤が傾いてばかりいる気がします。
本当は愛されることではなくて、誰かを愛することが必要なんだと思うんです。
愛とはわけあたえるものなんですよ。きっと。
きみがわたしを愛してくれたように。
愛がわたしを満たしてくれて、本当の愛がわかるんです。
さな。
本当はわたしもきみとずっと一緒にいたい。
でも、そうすることはできないんです。
ごめんなさい。
一緒にいるって、難しいですね。
一緒にいられるって、すごいことですよね。
一緒にいたいって思えるのって、なのに一緒にいられないって、こんなにも胸がいっぱいになることなんですね。
わたしはお花だから、なんにも知らなかったんです。
こんな気持ちを知ることができて、本当に人間になって、さなとお友達になれて良かったです。
みんなさなのおかげです。
本当にありがとう。
ずっと、ずっと、愛してます。
さながわたしのことを愛してくれたみたいに。
愛してますよ。
どんなに遠くに、離れ離れになったとしてもです。
約束します。
あなたの愛と。
あなたの優しさと。
あなたの手と。
あなたの指が。
わたしを育ててくれたんですね。
さな。
あなたと一緒に遊んだ毎日が、楽しい気持ちが、あったかい太陽みたいな思い出が、わたしの中にいっぱいに広がっています。
笑ってます。
笑ってばかりいるんです。
朝も。
昼も。
夜も。
どんなときも。
きみと一緒に笑ってます。
さな。
本当のわたしは、あんまり笑わないんですよ。(本当ですよ)
そんなわたしが、さなに出会ってからずっと、ずっと笑ってます。
大好きです。
さな。
さな。
優しいひとになってください。
いつも笑顔でいてください。
病気が治っても、体に気をつけて、あまり無理はしないでくださいね。
幸せになってください。
これからも愛を育ててください。
さな。
さようなら。わたしはお花にもどります。
……、ばいばい。