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第47話 奥様とステラ 新しいロボットメイドのナヴィ 大変です!! 奥様!

 奥様とステラ 新しいロボットメイドのナヴィ


 大変です!! 奥様!


 ロボットのメイドの姉妹のお話


 その日、新しいロボットメイドの少女が奥様のところにやってきた。

 ステラよりもずっと最新の作られたばかりの初々しいロボットメイドの少女だった。(お肌もつやつやしていたし、とっても優秀だということでニュースなどで有名だった。ステラとは一世代くらい作られた時間が違っていた)

 名前はナヴィ。

 とっても可愛らしい少女だった。

 ステラはもちろんナヴィと仲良くなろうと思った。

 でもナヴィはステラにあまり興味がないみたいだった。

「ナヴィ。なにかお仕事で困っていることある?」

「いえ。とくになにもありません。大丈夫です。ステラ先輩」

 とナヴィはいつものようにつんとしたすました顔でステラに言った。

 実際にも、ナヴィの言う通りになにもお仕事で困ったことはなかった。ナヴィは本当に真面目でとてもてきぱきとお仕事ができた。

 ステラもナヴィに負けないようにメイドのお仕事を頑張ったのだけど、最新型のメイドロボットであるナヴィにはまったく勝てずに、勝負にならなかった。(ステラはなんだか急に自分がとってもお古なロボットメイドになってしまったような気持ちになった)

 そのことを奥様に相談すると、奥様はいつものようにくすくすと笑って、「ステラ。私はメイドのお仕事をしてもらうためだけに、あなたに私のそばにいて欲しいわけじゃないのよ。あなたが私のそばにいてくれる。そのことだけでね、私はとっても幸せなの。満足しているのよ」と(めそめそしている)ステラの頭を撫でながらそう言った。

 そんなある日、とても珍しく(本当に珍しかった)ナヴィがメイドのお仕事で失敗をした。

 奥様の紅茶を淹れているときに、どこからか小鳥がやってきて、(ナヴィの焼いた焼きたてのクッキーを食べようとしたみたいだった)ナヴィの注意を一瞬だけそらして、ナヴィはその手に持っていた奥様の大切なカップ(亡くなった旦那様から奥様がお誕生日にいただいた思い出のもの)を落として割ってしまったのだった。

 ナヴィは咄嗟の判断で熱い紅茶を奥様にはかからないように動いた。そのおかげで奥様は火傷などしなかったのだけど、カップは割れてしまった。そのことでナヴィはとても強いショックを受けたみたいだった。

 ナヴィは奥様の前で泣いてしまった。

「申し訳ありません。奥様」

 と泣かないように強いの顔で涙を我慢しながら、その大きな瞳にいっぱいの涙を浮かべて、ナヴィは言った。

「大丈夫よ。ナヴィ。そんなに泣かないで。それよりもあなたは大丈夫? 火傷したんじゃないの?」

 と奥様は熱い紅茶のかかったナヴィを心配しながらそう言った。

「はい。大丈夫です。奥様。私はロボットですから」

 ナヴィはそう言ったけど、ナヴィはその手に火傷をしていた。最新型のメイドロボットであるナヴィはちゃんと怪我をするのだ。まるで本物の人間のように。

「だめよ。ナヴィ。あなたは火傷をしているわ。ステラ。お願い。ナヴィの手当てをしてあげて」

「はい! わかりました。奥様!」

 ステラは奥様にそう言われて、ナヴィの手を引いて、午後のお茶会をしていたお庭からお屋敷の中に戻るとすぐにナヴィの手の火傷の手当てをした。

 その間、ステラがなにを言ってもナヴィはずっと黙ったままだった。

「ステラ先輩。私はステラ先輩が羨ましいです」

 と二人で奥様のところに戻ろうとしたときに下を向いたままでナヴィが言った。

「私が? どうして?」

 とステラは(本当にどうしてなのかわからなくて)言った。

「奥様はいつもステラ先輩のお話ばかりをしています。もちろんたまに私のお話をしてくれるときもありますけど、ステラ先輩のお話のほうがずっと、ずっと多いんです。奥様の心の中にはステラ先輩がいます。でも私はきっと奥様の心の中のどこを探しても、……、どこにもいないんだと思います」

 とナヴィは言った。

 そんなナヴィの言葉を聞いて、なんだ。そんなことかと思うとステラは「そんなことないよ。奥様に限ってそんなことは絶対にない。奥様の心の中にナヴィはいるよ。私の心の中に、笑っているナヴィがいつもいるようにね」とにっこりと笑ってそう言った。

(ナヴィはなんだかきょとんとした不思議な顔をしていた)

 それからなにかが変わったわけではなかった。

 ナヴィは相変わらずメイドのお仕事がすごくできたし、ステラは頑張ったけど、ナヴィには勝てなかった。

 でもたまに「あのステラ先輩。ここのお仕事教えてもらってもいいですか?」とナヴィが、ステラに聞いてくることがあるようになった。

 そんなときのナヴィはロボットメイドの後輩というよりも、なんだか本当の妹のように思えて可愛かった。

 最新型のメイドロボットは人間により似ているように作られていて、寿命がステラたちの世代の二百年から、短くなって、人間と同じくらいの百年になっていた。

 だからナヴィはステラよりも先に寿命がきてルナ先輩のようにお迎えにやってきたロボット会社の黒い回収箱の中に入って、お屋敷からいなくなってしまった。

「さようなら。ステラお姉ちゃん。お嬢様のことよろしくね」

 とナヴィは最後に、にっこりと笑ってそう言った。

 ステラは泣きながら、「うん。大丈夫だよ。お姉ちゃんに任せて。ナヴィ」と言って笑ってから、ナヴィの頬にそっとさようならのキスをした。


 あなたが私を待っていてくれるところ。


 奥様とステラ 新しいロボットメイドのナヴィ 終わり

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