第30話 神様の子 神様! 神様! 聞いてください、神様!!
神様の子
神様! 神様! 聞いてください、神様!!
その家はとても『小さな家』だった。
そこが、(見るからに)怪しい大人たちに連れ去られた小学校五年生の男の子、素直くんの誘拐された家だった。素直くんの友達の小学校五年生の女の子、長閑はコンクリートの壁の角っこのところから、顔を半分くらいだけ外に出して、その小さな(どこにでもあるような普通の)家をじっと見つめていた。
……どうしよう? どうしたら良い?
長閑は考える。
やっぱり警察の人に連絡したほうがいいだろうか? ……いや、だめだ。警察の人が、あの『奇妙な教団の関係者じゃない』っていう証拠がない限り、たとえ警察の制服を着ていたとしても、その人を正義の人だと信じることはできない。
……では、どうする?
長閑は考える。
やっぱり、私がいくしかない。
私が、素直くんを、あの小さな家の中から救い出すしかないんだ。そうですよね、神様。
長閑は青色の空を見て、そんなことを頭の中で神様に言った。(神様はいつだって、長閑と一緒にいてくれるのだ)
「さて、じゃあ、どうしようかな?」
長閑は小さな家をじっと、観察する。(物事をじっと観察することはとても大切なことなのだ)
それから少しして、長閑は小さな家の周りを慎重に動き回り、(電信柱の陰に隠れたりして)そして小さな家のうしろ側の白い壁のところまでやってきた。
すると、その白い壁には、なぜか、『とても小さな、まるで子供用の扉』のようなものが取り付けられていた。
……あれはなんだろう? 長閑は思う。
もしかしてあれが『入り口』なのかな? 長閑は周囲に人がいないことを確認してから、静かにその小さな扉に近づいた。
そして、その扉を押してみる。
すると、その小さな扉には鍵がかかっていないようで、内側に押すようにして、開いていった。
……開いた。
……長閑は考える。(そして、決意する)
長閑は、そのままその鍵のかかっていない、小さな子供用のような扉を通って、素直くんが誘拐され、囚われている、小さな家の中にたった一人で侵入していった。
(……待っててね。素直くん。今、私が助けてあげるからね)
神様の子 終わり