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第23話 あなたと手をつないで 愛があるから。

 あなたと手をつないで


 愛があるから。

 君がいるから。

 泣いちゃいそうだよ。


「僕と結婚してください」

 とあなたは私にそう言った。

 真っ直ぐ私の目を見てそう言った。少しも照れずにそう言ってくれた。

 それは、本当に真っ直ぐな愛の告白だった。

 笑っちゃうくらいに真っ直ぐだった。

 だから私は現実に笑っていた。

 あなたの前で幸せそうな顔で笑っていた。

 ……泣きながら、嬉しくって笑ってた。


「返事を聞かせてください」

 あなたは言った。

 私はあなたの言葉に「はい。こちらこそ、宜しくお願いします」と言った。その言葉は自然と私の口から出た。

 結婚なんてまだまだ先の話で、私には当分関係のない話なのかな、と思っていたのだけど、それは突然にやってきた。

 私はそれを受け入れることができた。

 あなたの愛を。

 あなたの気持ちを。

 きちんとこの心で、この手で、受け止めることができた。それがすごく嬉しかった。

 綺麗。

 本当に世界って綺麗だと思う。

 世界が綺麗に見える。

 それってさ。

 どういうことなんだろうね。

 元から世界は綺麗なのかな? 

 それとも、……それはあなたのおかげなのかな?

 愛があるからなのかな?

 ねえ、どう思う?

 今、あなたの目には世界はどう見えていますか?

 世界は綺麗ですか?

 世界は、美しいままですか?

 汚れていたり、滲んでいたり、歪んでいたり、しませんか?

 ……あなたの目に私はどう映っていますか?

 聞きたいことがたくさんあった。

 知りたいことが山ほどあった。

 欲しいものがあった。

 私が『本当に欲しかったもの』がそこにはあった。あなたと二人でないと手に入れることができない大切なものがたしかにあった。

 だから私はあなたと結婚をすることにした。

 あなたと二人で、幸せになることに決めたのだ。

「ありがとう。必ず君を幸せにします」とあなたは言った。

「ありがとう。私を幸せにしてください」と私は言った。

 幸せは本当は二人で作るものだとわかっていた。

 でも今は、少しだけあなたに甘えたかった。

 最後にちょっとだけ、子供のままでいたいと思ったのだ。

 それから私はあなたと結婚をした。


 結婚の少しあとで、「綺麗だね。世界ってさ」と私は言った。

「うん。本当に綺麗だ」とあなたは言った。

 それであなたの見ている世界が綺麗なのだと私にもわかった。

 あなたと結婚をしてよかったと私は思った。

 あなたと一緒に見る世界は、……たしかにずっと美しかった。

 あのときと同じように、美しいままだった。

 そのとき、私とあなたの真ん中で君が幸せそうに笑った。

 だから君にも、世界が綺麗に見えているのだと私にはわかった。


 あなたと手をつないで 終わり

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