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第22話 花占い 君のことが大好きです。

 花占い


 初恋の人


 君のことが大好きです。


 あなたは私の初恋の人だった。


 春の駅


 僕が君と再会したのは、本当に偶然だった。

 僕たちは小学校、中学校の同じ教室の同級生で、高校で別々の教室に別れ、そして大学は別々の大学に入学して、そこで完全に一度、『お別れをした』、関係だった。

 それから二年後のある日、僕たちは東京の駅で偶然に出会った。(季節は春だった)

 僕たちは本当に驚いた。

 二人ともきょとんとした表情をして、その目を丸くしていた。

「久しぶり」僕は言った。

「……うん。久しぶり」ちょっと照れたような顔で君は言った。

「今、なにしているの?」

「普通の大学生。君は?」

「まあ、同じ。普通の大学生やってる」にっこりと笑って君は言った。

 僕はそれから、言葉に詰まった。

 君になにを言っていいのか、よくわからなくなってしまったのだ。君は黙って、僕の言葉を待ってくれているようだった。

 でも、僕は結局、君になにも言えなかった。

 高校生のときの、(桜の花が咲いている)卒業式の日と同じように、僕は「それじゃあ」と言って、笑顔で君の前からいなくなろうとした。

「待って」

 と君は言った。

「え?」僕は君のほうを振り向いて言った。

「あのさ、久しぶりに会ったんだしさ、もし時間あるなら、少しどこかを一緒に歩かない?」

 にっこりと笑って君は言った。

「うん。わかった」

 君を見て、僕は言った。

 それから僕たちは、君が言ったように、春の駅の周辺を少しだけ歩いて、美しく咲く桜を見て、それから近くにあった喫茶店に入って、そこで二人で温かいコーヒーを飲んだ。

「実は、君のことがずっと前から好きでした」

 その喫茶店を出て、桜の咲く、たくさんの桜の花びらの舞う、(その桜の花びらの舞う風景の中に、僕と君はいた。僕が君に恋をした、私があなたのことを好きになった、あの日と同じように)春の駅の前でお別れをするときに、僕は君にそういった。

 君はとても驚いた顔をしたあとで、「……嬉しい。私も、ずっとあなたのことが大好きでした」とちょっとだけ泣きながら、そう言ってくれた。

 それから、僕たちは恋人同士になった。

 ……そして、それから大学を卒業するのとほとんど同時に、僕たちは結婚をした。

 結婚式の日。

(その日はやっぱり桜の咲いている春だった)

 僕たちは誓いのキスをした。

 僕は君にキスをして、君は僕のキスを受けいれてくれた。

「ずっと、君のことが大好きでした」

 僕は真っ白なウェディングドレス姿の君にそう言った。

「あなたと、ずっと一緒にいたかった」

 泣きながら、君は僕にそう言った。


 こんなところでなにしているの?

 

 君を待っていたんだよ。


 花占い 終わり

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