第21話 きらきら 消えちゃったね。寂しいな。
きらきら
目の色
消えちゃったね。寂しいな。
君はなにを見ているの?
高浜あめには生まれたときから、目に少しだけ、みんなとは違う変わった特徴があった。それはあめの『目の色』だった。
あめの目はみんなと同じ黒や茶色ではなくて、とても澄んだ宇宙のような青色をしていた。それは外国の人たちの青色の目とは、また少し違った印象を受ける青色だった。
海のような青ではなく、空のような青でもなく、あめの目は、確かに宇宙のような青色をしていた。透明な青。
その青色の中に星の光のように、あめの意思を宿した強い光が輝いていた。あめの目の色はそのあめの心の強さを物語っているような、強い光を、まったく邪魔することなくあめの目を見る人にまっすぐに伝えていた。
それがあめの一番の魅力だった。あめには人を惹きつける力のようなものがあった。その力はきっと、そのあめの目の色から、あめの強い目の輝きから発生している現象だと思われた。(少なくともあめ自身はそう思っていた)
あめは子供のころ、その目の色について、周囲にいる子供達からよくいじめられていた。(そのこと自体、とても辛い思い出だけど、今思い返してみると、私は確かに異物だったと思う。近くに自分たちとは違う目の色をしている子供がいれば、いじめるというわけではないけれど、からかってしまったり、変だな、と思ったりするのが当たり前の子供の反応だと思った。子供は正直な分、残酷なのだ。まあ、大人はもっと残酷だけど……)
だから、子供のころのあめはよく泣いていた。
小学校の教室の中で、帰り道の途中で道端に座り込んで、家の中でお母さんの膝の上で、自分の布団の中で一人で、……そんな風にしていろんなところで泣いていた。
そんなあめのことをよくかばってくれる男の子がいた。
とてもかっこいい男の子。(今考えると、もしかしたら、その男の子はすごくかっこいいというわけではないのかもしれないけれど、当時のあめにとって、その男の子は間違いなくかっこいいヒーローだった。あめが困っているときに、助けに来てくれる、あめに手を差し伸べてくれる、あめの憧れのヒーローだった)
その男の子を見るとき、あめの目の色はいつも以上にきらきらと輝いていた。(だから周囲にいる女の子達からはあめの思いが丸わかりだった。すごく恥ずかしい思い出だった)
そんな男の子に、あめが「好きです。私と付き合ってください」と告白をしたのはあめが中学二年生のころだった。
男の子に告白する前日の夜から、あめの心臓はずっとどきどきしっぱなしだった。
でも、そんなあめの人生で初めての、初恋の人に自分の思いを正直に告げる恋の告白は、……成功しなかった。
「ごめん。僕、ほかに好きな子がいるんだ」それが男の子のあめに対する返事だった。
自分の憧れたヒーローに振られて、あめは久しぶりに(こそこそと学校の人のいないところに隠れて)一人で泣いた。
泣きながらあめは、……まるで泣いてばかりいた小学校時代にタイムスリップしたみたいだ。と、そんなことを小さく笑いながら思った。(それは涙の止まらない、あめの自分に対する、……ほんのささやかな慰めだった)
落としものはなんですか?
きらきら 終わり