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第20話 雪だるま その恋は、魔法、ですか?

 雪だるま


 魔法使いの恋


 初めて、君と出会った日。


 その恋は、魔法、ですか?  


 まぶたの奥が熱くなった。そう感じた次の瞬間、宝塚ホリィは泣いていた。ホリィの青色の目から自然と涙が溢れてきた。

 自分の涙に触れて、ホリィは、私はどうして泣いているのだろう? とそんなことを疑問に思った。

 今日は十二月二十四日。クリスマスイブの日。

 電車の窓の外は雪。

 ……雪を見るとホリィは遠い昔に出会った一人の孤独で無口な、あまり笑わない、でも誰よりも優しくて、温かい心を持った誇り高い男の子のことを思い出した。

 額に小さな傷のある男の子。

 その男の子の名前は、……おそらく本当の名前ではないのだと思うけど、(自称、魔法使いの)雪玉といった。

 雪玉とホリィが出会ったのは、十年前の、とても寒い日の十二月二十四日のクリスマスイブの日だった。

 その年、ホリィは十二歳で、今年の夏に(雨の日の多い、台風もたくさんやってきた、初めて経験するとても蒸し暑い日本の夏だった)イギリスの田舎から日本に引越しをしてきたばかりであり、その(友達をたくさんつくるために一生懸命になって勉強した)片言の日本語や、ハーフである金色の髪や青色の目のことなどをからかわれて、いつものようにひとりぼっちで泣いていた。

 ホリィには友達が一人もいなかった。

 ……ホリィはずっと、孤独だった。

 ホリィが雪玉と出会ったのは、ホリィの秘密の隠れ場所である人気のない小さな古い公園の中だった。

 いつものように小学校で(青色の目や金色の髪のことで)いじめられて落ち込んでいたホリィは、いつものように(勝手に決めた)自分専用の隠れ場所にくると、慣れた動きで、その存在をこの世界の中から誰の目にも見えないように(誰にも見つかりませんように、と願いを込めて)隠そうとした。

 そうして、ホリィが大きなピンク色をした象さんの遊具の中に隠れると、そこには一人の先客がいた。

「きゃ!」

 と声を出してホリィはとても驚いた。

 自分だけの居場所(あるいは、聖域)に自分以外の人がいた。

 そのことにホリィはひどく驚いたのだった。(ホリィの心臓はすごくどきどきとしていた)

 そこにいたのは雪玉だった。

(もうずっと会っていない、ただ遠くからホリィが見ていただけの男の子)

 その雪玉という名前の男の子は、ホリィの初恋の人だった。


 ねえ、覚えてる? それとも、もう忘れちゃったかな?


 雪だるま 終わり

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