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第13話 どうぶつの国 あなた。……私のこと、嫌い?

 どうぶつの国


 ……ばいばい。


 私は、あなたの偽物だった。


 あなた。……私のこと、嫌い?


 ほら、こっちだよ。ついてきて。そう言って、君は私の手を握って、なんの迷いもないきらきらと輝くような瞳をして、全速力で走り出した。(私は、そんな君に憧れた)


 黒い猫と白い猫


 私がどうぶつの国を訪れたのは、中学一年生のころだった。私はそれから中学校を卒業するまでの間、三年間、ずっとどうぶつの国で出会った白い猫を自分の家で飼っていた。

 その白い猫が病気で死んでしまったとき、私は本当に悲しくて、悲しくてずっと、ずっと泣いていた。


 どうぶつの国の中で、私は『黒猫のミミ』と言う名前を名乗っていた。

 それは私が決めた名前ではない。

 私を捕まえた(保護したというらしい)人間たちによってつけられた、私自身の名前だった。


 西山言葉がどうぶつの国を訪れたのは、言葉が十六歳になった誕生日の日のことだった。

 言葉は両親と一緒にどうぶつの国を訪れた。

 そこで言葉は誕生日の贈り物として、好きなどうぶつを一匹だけもらって帰ることを両親から約束されていた。

 どうぶつの国では、そうして年に数度、どうぶつを飼いたいという人間たちに貰われていく仲間たちがいた。

 それから言葉はたくさんのいろんなどうぶつたちを眺めて、やがて、猫のエリアにまでくると、そのまま小さな檻の中でじっとしている私の前までやってきた。 

 小さな檻の中でただ小さく丸くなって目を閉じていた私を見て、言葉を私をその小さな指で指差して、この子がいい、と口だけを動かして両親に言った。

 生意気な猫。

 全然人になつかない、凶暴な猫。

 そんな猫を見て言葉の両親は不安そうな顔をする。

「どうする? 違う子と交換してもらう?」

 両親は言葉に言う。

 ううん。この子がいい。

 そう口だけを動かして言って、言葉はにっこりと笑った。

「……わかった。そうしよう」

 と言葉の両親はとても優しい笑顔をして言った。

 ありがとう、と言葉は口だけを動かして嬉しそうな顔をして、両親にそう言った。 

 そんな幸せそうな親子の風景をそっと目を開けて盗み見るようにして私は見ていた。

 ……はぁーいやだな、と私は思った。

 私はまたこの人間の女の子に徹底的にいじめられるのだと思った。

 私はじっと攻撃的な目で、言葉のことを睨みつけた。(こいつは敵だ。今度こそ、負けてたまるかと思った)

 でも、そんな私を見て、西山言葉はにっこりと、とても優しい表情をして笑った。

 そんな言葉の顔を見て、ちょっとだけ拍子抜けした私はじっと、二つの透き通るような青色の瞳で、そんな言葉の顔を不思議そうな顔をして見つめた。

 それが私たちの初めての(……きっと運命の)出会いだった。


 どうぶつの国 終わり

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