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第12話 たまごの殻 私は私。あなたはあなた。

 たまごの殻


 私は私。あなたはあなた。


 誰もいない無音の、真っ白な窓の開いた教室の中。

 私は一人ぼっちでそこにいた。

 すぐ近くにある窓際のあなたの席もからっぽだった。

 そこには、ただの透明な空気だけが存在していた。

 その事実を確認してから、私は自分の机の上にうつ伏せになって、ゆっくりと目を閉じて、深い、……とても深い眠りの中へと、たった一人で落ちていった。(だって、あなたがいないんだからしょうがないことなんだ)

 私はすぐに眠りについた。(授業中もよく居眠りをしてる私は、本当にすぐに眠りにつくことができた)

 その深い眠りの中で私は一人、夢を見た。

 幸せな夢か、そうじゃない夢なのかは、まだわからない。

 そのひとりぼっちの夢の中で、私は綺麗なピンク色の花が見渡す限りに大地の上に咲き乱れるとても不思議な場所に立っていた。

 時折、とても優しい風の吹く場所。(きっと、度々感じたことのある、あの優しい風はこの場所から自分の暮らしている遠い街まで吹きてきたのだと私は思った)

 そんな場所に私はひとりぼっちで立っていた。

 そんな優しい風が、まるでそっと撫でるように、私の長い黒髪をゆっくりと揺らしている。

 服装はいつの間にか学校の制服から、真白なワンピースに変わっていた。頭には麦わら帽子をかぶっていて、足元は麦のサンダルだった。

 そんな自分の服装に気がついて、私はついおかしくて一人で笑い出してしまった。

 私って、こんな趣味してたんだ。……幼いな。

 もうわかってはいたことだけど、やっぱり自分でもおかしかった。私は大人になれていない。ううん。きっと一生、大人になんてなれないのかもしれない、と私は思った。

 たまごの殻が固すぎる。

 こんな硬いもの、非力な私に一人で割れるわけないと思った。

 こんこんと頭の中で空想のたまごの殻の中にいる私は、自分を覆っているたまごの殻を手でドアをノックをするみたいにして叩いている。

 向こう側から返事はない。

 別に私も誰かの返事を期待していたわけではないから、そのことを特別悲しいことだと私は思ったりはしなかった。(その代わり私は自分のために小さく笑った)


 なんだか、泣いちゃいそうだよ。


 ありがとう。愛してくれて。


 たまごの殻 終わり

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