第11話 扉 とびら ……扉を開いて。
扉 とびら
……扉を開いて。
この扉は、どこに続いているんだろう?
そんなことを空想させる扉が、この世界には確かにあった。
そんな扉を見つけた人は世界にたくさんいると思う。(私だけじゃない。きっとたくさんの人たちがそうした不思議な力を持つ扉を世界のいたるところで見つけているのだと思った)
その扉を見つけたあとで、『その扉を開けて、その向こう側に行ってみよう』と思った人はどれくらいの数、いるのだろう?
統計を取ることはできないし、私の勝手な空想としてはあまりその数は多くないのではないかと思えた。
小さな子供であれば、躊躇なくその扉を開けるだろう。(というか、子供はそれが不思議な力も持った扉でなくても、ちょっと変わった扉があれば、好奇心に負けて絶対にその扉を開けると思う。あるいは扉でなくても、子供の注意を引くものであれば、なんでも良いのだけど)
でも、大人になるとそうはいかない。
大人、とまではいかなくても中学生や高校生になると、そういうことも難しくなると思う。
だから結果として、その扉を開けた人の数は少ないと私は予想した。
さて、これから話の本題に入るのだけど、私は先日、ふらっと何気なく休日に街の中を歩いていて、その『不思議な力を持つ扉』を見つけてしまったのだった。
その事実に私は本当にびっくりした。
もう私にはそんな不思議な力を持つ扉を見つけることはできないと諦めていたし、またもし偶然にそんな扉を見つけたとしても、絶対にそれを見ないようにして、記憶の彼方に忘却して、それを見つけた事実を忘れて、今ある自分の普通の生活を守ることを考えると思っていたからだった。
でも、実際にその不思議な力を持つ扉を(きっと十年ぶりくらいに)見つけた私は、すごく心臓がどきどきとしていた。
……この扉は、私に見つかることをここでずっと待っていたのかな?
それとも、この扉を見つけたことは私の運命であり、この扉は『私の運命の扉』なのかな? とそんなことを久しぶりにずっと、緊張しながら、また興奮して考えたりもした。
私は悩んだ。
でも、決断はなるべく早くにしないといけない。
不思議な力を持つ扉は、ずっとそこに、私の見つけた場所にあるわけではなく、ある日、あるときにふっと突然、消えてしまう扉だったからである。(私は経験上、その事実を知っていた)
まず、結果から話そうと思う。
私は、『その扉を開けることにした』。
その扉を開けて、扉の向こう側の世界に移動することを選んだのだった。
それは本当に価値のある選択だったし、またとても大切な(世界にとって、とは言わないけれど、少なくとも私の人生においては、本当に大切な)選択だった。
本当ならすごく時間をかけて選択しなければならないことだった。
でも前述したように、この扉は時間をかければその間に消えてしまう意地悪な扉だった。
だから私はあまり悩まずにその選択をした。
本能に従って。
自分の心と、……夢に従って、その扉を開けてみることにした。(つまり、思いっきり助走をつけて、高い崖からジャンプしてみることにしたのだ)
その結果、私の人生がどうなったかは秘密(誰かの選択の邪魔になってしまうと思うから。この選択はできるだけシンプルに、自分の心に従って決めて欲しいと思うから)にさせてもらうけど、私はその選択に後悔をしていない。
そして今、その不思議な力を持つ扉をもう一度、世界のどこかで見つけることができたなら、私は迷わずにその扉を開けるだろう。
そしてまた、今とは違う、新しい世界に移動をして、その世界で、自分の人生を続けるのだ。
それだけは絶対にそうだと自信を持っている、私の未来の予測だった。
扉 とびら 終わり