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天の星屑〈スターダスト〉  作者: 叶海なつ
第一章 水の流れに乗って
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5.森の外へ

 精霊の眼を授かって、自己防衛の手段はできたけれど、やっぱり魔法が使えないのは大きな欠点だ。


「あの、私、何やっても魔法が使えないんですけど、どうにか使えるようにはなれませんか?」


 もし使えるようになれたら、精霊の眼と同時に使って、別々の属性の攻撃が出来たりもする。


「そうね……私には魔法がよくわからないし……そうだわ!!私の知り合いに、とても魔法が得意な子がいるわ」


「女神様の知り合い、ですか?」


 ってことは、同じく神様ってこと?


「いいえ?彼は何年か前にこの森を訪れて仲良くなったハーフエルフよ。お家がここからそう遠くはなかったと思うし、訪ねてみたらどう?」


 魔法が得意なエルフと人のハーフ……それなら私の話も聞いてくれるかもしれない。


「ありがとうございます!行ってみます!」


「そうするといいわ!彼によろしくね!あ、そうだわ!」


「なんでしょう?」


 ポン!と女神様は手を打った。


「名前よ。名前。あなたさっきファミリーネームをこたえなかったでしょう?」


「……はい」


 俯いて、私は答える。家を追い出されたのだから、私にその名を名乗る資格はない。


「やっぱりそう考えていたのね」


「すごく心を読みますね……」


「女神ですから!ってそうじゃなくて!今までのファミリーネームが名乗れないのなら、今度からは『リリアンテ』の名を使うといいわ!」


「『リリアンテ』?」


 何故か頭にスッと入ってくる名前だ。まるで元からこの名前を持っていたような……まあそんなことはありえないから、気のせいだろうけど。それにしても、この辺りでは聞かないファミリーネームだ。ファミリーネームは住んでいる場所によって色々と変わる。幻想界は基本、名前の前にファミリーネームがつく。精霊は例外で、他の二つの世界と同じく名前の後にファミリーネームがつくのだ。何故幻想界に住んでいるのに名前の後にファミリーネームが付くのかというと、世界が一つだった時に、神星界区域に住んでいたけれど、分断されて幻想界区域に流れ込んでしまったからではないか、と本に書かれていた。


「『リリアンテ』はあなたの眼に宿った大精霊のファミリーネームよ。使え使え!って言ってるみたいだし、使うといいわよ!」


「使え使え!って言ってるんですか!?結構烏滸がましくないです!?」


 大精霊様、もしかして結構明るくて元気なタイプなのかな……?ファミリーネームを使えって言ってるくらいだし、嫌われてはいない……のかな?


「わかりました。大精霊様が嫌でないのなら、今度からカナ・リリアンテと名乗らせていただきます」


「それがいいわ!!それから……」


 ふいっ、と女神様が指を振る。すると光が私の周りを踊り、あっという間に着ていた服が変化した。


「わっ、服が……!」


「森に住み始めた時からずっとその服だったじゃない?町に降りてもお金がないからって、六歳の時に来てた服を、草木の精霊たちが葉や花を加工してどうにかしてくれていたけど、ボロボロなものはボロボロよ!女の子だもの!おしゃれしたいでしょ?」


「おしゃれはよくわからないですけど……動きやすくなりました!ありがとうございます!」


「う〜ん、見るところがちょっと違うわね〜」


 ボロボロだった桜色のTシャツとデニムは、女神様の魔法で、ズボンは金の金具部分と黒のベルトがよく映える白のワイドパンツに変わり、Tシャツは袖部分が開いていて腕が動かしやすい、オレンジ色のブラウスに変化した。


「うふふ、いいでしょう。結構拘ってるのよ?トップスはクルーネックで、フレアスリーブのブラウスよ!長袖だけれど大きめのスリットのおかげで腕を動かしやすいでしょう!?ボトムスはパラッツォパンツ!動きずらいといけないから足首より上にしておいたわ!それからシューズはチャッカブーツよ!これがまたおしゃれで〜!」


「ぜ、全然言ってることがわからない……!」


 おしゃれは私には無理かもしれない……。


「まあまあ!はいこれブーツとソックス!丁度裸足なわけだし、履いてみなさい!前までのシューズは預かるわ」


「は、はい……」


 女神様から靴下と靴を受け取り、腰を下ろして足に通す。サイズがぴったりなところは見なかったことにしよう。女神だし、なんでもありなんだきっと。


 図書館で借りている本を持って、私は立ち上がった。


「よし!では出発しますかね」


「気をつけて。……いってらっしゃい」


 眉を八の字にさせて微笑む女神様は、どこか寂しそうにも見える。ここには人が来ないもんね、私がいなくなったら、かなり静かになりそうだ。


「……行ってきます」


 女神様の目を見て、私は笑って言った。


 いつか、ここに帰ってくる日がきたら、ありがとうとただいまを、女神様に言いたいな。

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