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天の星屑〈スターダスト〉  作者: 叶海なつ
第二章 炎が示す道を
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26.一人、いや二人旅

月下の国(スブルーナ)に行くには、丸一日はかかるでしょうね」


 森を抜けて、水影の村(アクラ)を通り過ぎたところで、アエスタースは言った。


「箒を使って飛んでいけたら一時間くらいでつけるでしょうけど、箒は乗らないでしょ?」


「まあ乗れるわけないよね!そもそも箒ないし!」


 二人で話しながら、側から見たら一人で喋りながら、私たちは月下の国(スブルーナ)へ向かっていた。


 水影の村(アクラ)が魔法であったのはまだ衝撃的だ。私が思っているよりも、魔法というのは色々なことが出来るみたいだ。術者が魔法に長けていれば出来ることは相当あるとアエスタースが教えてくれた。出会った女性やアルファまでもが魔法で作られていたと考えると、賢者というのはかなり魔法が得意なのだろう。


「賢者は魔法、策略、体術、その他にも色々と優れているということは聞いていたけど、まさか魔法があれほどすごいとは思わなかったわ。神人が育てただけあるわね」


「神人も賢者もよくわからないけど、すごい人たちなのはわかったよ。なんか遭遇するのもレアみたいだしラッキーだったかもね。私には関係ない人たちだし」


「え?何言ってるの、関係ありありよ、ありあり」


「え??」


 な、何故関係あるんだ??アエスタースから聞いた話じゃ神人は神星界の王様で、賢者はその部下。私の目的は神星界のワールドゲートを開けること……ああ!


「ゲートを開けたら神星界の王様は当然気付くか……そしたら関わることになるね」


 なんて言われるんだろう。長年開けられていなかったワールドゲートを開けるんだから、褒められたりして。


「そうね。かなり鍛えておかないと、開いた!って喜んでいる間に殺されちゃうかも。なんならゲートを開けるのすら無理かもしれないわね」


「ん??」


 なんか物騒な言葉が聞こえたような。


「き、気のせいかな、今殺されるって聞こえたような……」


 いや実際は死なないから殺されることはないだろうけど、敵意は向けられると?何故?


「……そういえばツイル、説明してなかったわね!」


「ええ」


 湖の女神様、足りない説明多すぎやしませんかね。


「え、え?えー、と?それはかなり重要な情報ですかね」


「そうね、かなり」


「Oh……」


 神と人の違いをまたもや見せられた気がする。大きな力を持つ神にとっては、敵意を持つ人間なんて赤子のようなものなのだろう。


「そもそもワールドゲートの鍵は、賢者が持っているのよ」


「……え!?」


 鍵を探すところからのスタートだと思っていたが、まさか場所が既にわかっていたとは。驚きだ。ゲートを開けるための鍵を賢者が持っているなら、接触は避けられないな。


「昔二つのワールドゲートを開けた(リーベリー)たちは、賢者を倒して鍵を手に入れていたの。そしてその鍵を使ってゲートを開いた」


「賢者を倒して……ということは賢者って昔は九人いたってこと!?」


「そうよ。それしか方法がなかったから。世界が分断した時から、神星界の王はずっと今の神人。彼は神星界を独り占めしたいのか、他の世界との交流を絶った。賢者たちはみな神人によって創られ、神人の手足になる。だから神人に逆らうことはないの。神人が鍵を渡すなと命令すれば、賢者たちはそれに従うのみ。だから鍵を奪うには殺すしかなかったのよ」


「そ、そうだったんだ……」


(リーベリー)たちは全部のゲートを開けようとした。けど二つしか開けることができなかった。この意味がわかるかしら」


 賢者を倒して鍵を手に入れるしかなかった先人たち。二つのゲートを開けたということは六回、賢者と戦い、勝利したのだろう。そして残りの一つが開けられなかったのは、勝負をしなかったんじゃない。全部のゲートを開けようとしていたということは。


「三人の賢者には、勝てなかったのか……」


「ええ。今残っている三人の賢者のうち、二人はその時と同じ賢者よ。一人、青の賢者だけは代替わりがあったみたいだけど、強さは変わらないはず」


 想像していたよりもワールドゲートを開けるのは難しそうだ。魔法も十分に使えないのに、どうやって賢者に勝てと。


「魔法の練習をしながら進みましょう。仲間がいたら心強いけれど、カナは仲間作り下手そうだし」


「ぐっ、まあ友人という友人はいないけど……」


 森にいたし。アエスタースは実体ないし。アルファは魔法だったし。


「ふふ、まだ冒険は始まったらばかりだし、焦ることはないわ。ゆっくり行きましょう!まずは月下の国(スブルーナ)に行かなくちゃ!」


「そ、そうだね!」


 アエスタースに言われて、力無く頷く。頭の中を占めるのは仲間という言葉。旅の同行者なんて考えていなかった。そもそも私が死ぬことはないとしても他の人は違うだろう。相手は魔法が得意な賢者たちで、神人とも戦うかもしれない。生き残る確率の方が低い。着いてきてくれる人なんて、いないだろうな。


 ぼんやりと、そう考えた。

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