2025年8月時のインフレにどう対処すべきか?←100年前の二の轍を踏んではならない(厳命
2025年8月。現在、日本では物価はグイグイと上昇しているのに賃金は上がらないという悪性のインフレが進行しています。この問題にどう対処すべきか?…について少し話をしようかと思います。
まず現在の日本は、ちょうと100年前の日本に似ていると思われます。
1920年代は金本位制の時代でした。この時代に先立って、第一次世界大戦をうけて列強各国は自国通貨の価値を守るために開戦後しばらくすると金本位制の一時停止に踏み切りました。戦況や、他国からの物品輸入 (特に日本や米国などからの)などによって自国通貨が海外に流出し、そのことで自国通貨の下落を招いてインフレが進行するのを防止するためでした。
WW1が終了した後、各国は徐々に金本位制に復位しました。しかし日本はWW1後、逆にデフレ(不況)が進行します。大戦時の連合国軍への莫大な輸出がなくなった事や、この戦時需要に応じて民間でバブルが発生したために多額の債務を抱えることになりデフレに陥りました。このため日本 (日銀)は他国のような金解禁をためらっていたときに関東大震災が発生。この莫大な被害のために産業力が縮小し、ますますデフレ化。この状況で金本位制に戻ることは、国力衰退による成長力喪失+復興需要で海外物品の大量購入…などによって帝国円が暴落する危険性があったため、更に先送りになりました。
この震災デフレは長引き、しかも1927年に蔵相・片岡直温の失言などから昭和金融恐慌が発生。デフレ化の銀行の破綻騒ぎに端を発して転げ落ちるようにバブル崩壊しました。このため金本位制に戻ることができないまま、1929年の世界大恐慌発生。日本はこの10年で世界各国が金本位制に戻ったのに対しタイミングを逸したまま1930年に復位。これは帝国円の価値を地金のGoldによって担保する…という目論みでしたが、日本の経済力の弱さや多額の外債のために裏目に出て大失敗…という結果で終わります。
本来、金本位制に戻ることは必要なことでした。帝国円は最悪、額面表記どおりに地金のGoldと兌換できる…という信頼 (安心)があるからこそ円の価値を担保できるからであり、各国はそう考えてできるだけ早く復位しています。逆に帝国は金本位制にもどれなかったために実際の為替などでは、現代で言う「プレミアム」のような余計な負担を強いられていました。額面では1ドル=1帝国円でしたが実際には25%も帝国円は安かった〜それだけ日本が負担せねばならなかったようです(ただし為替レートは状況によって変わる)。
このため日本も早急に金本位制に戻すべきでしたが、WW1後の反動デフレが長引いたために(兌換できることを逆手に取られて)円売りされる危険性があったり、関東大震災の復興予算不足を外債 (3億円)に頼ったり、金融恐慌時にも1.5億円の外債を発行して国内の資金不足を補おうとしたために、むしろますます円売り圧力環境下になってしまったことなどから金本位制にもどれなかったのだろうと思われます。ちな、この外債総計4.5億円は当時の帝国歳入約22-25億円の1/4-1/5という額で、金利負担は相当だっただけでなく、外債に頼らざるを得ないほど国内資本が衰弱していたという事でもあります。
翻って現在 2025年の日本では「金利」に関して、これと同じジレンマに陥っていると思われます。
金利が低すぎると「日本国内に投資しても損するリスクがあるし、他の国の方が金利が高いからそっちにカネ入れる(←キャピタルフライト)」という「流動性の罠」と呼ばれる状況に陥ります。産業には投資が必要で、投資とは労働者の賃金も含まれます。労働者に「投資」する意欲を失わせている…程度でOKです。
正確には金利が上昇することで物価にその分が上乗せされ、インフレが発生。このインフレは「カネを持っていても明日・明後日にはますますカネの価値が減っていく。なら今の内にモノを買おう&遊びに使おう」というインフレヘッジという行動が発生し、これが好景気を産み、産業力強化にともなって最後に労働力不足→労働者の賃金が上がる…という「トリクルダウン効果」が出てくるのですが、そもそも金利があがらないのでこのサイクルが発生しません。
この他にもいろいろな理由から金利を上昇させる=金利の正常化は必要です。
しかし、そうは言っても金利を上昇させると一旦は景気が減速します。日本国は国債の金利負担によって国家破綻しかねないですし、民間は住宅ローンなどの金利が爆増します。つまり現在の低金利から金利を上昇させると「国家・国民が(インフレで)悲惨なほど苦しくなる」ということになります。
このため本来、低金利政策は採用すべきではない…というのが新自由主義者の意見だったのですが、いまさらそんな事言ってもしょうがないので、ワイが思います「現状すべきこと」について私見を述べたいと思います。
※ ※ ※
まず我々の生活苦の原因である「低金利下におけるインフレ」について考えてみます。
現在、日本のインフレ率は3%以上あります。この場合、本来なら金利を上げて景気を冷やす必要があります。インフレは通貨の価値が下落していることであり、大抵はモノに対してカネの総量が多すぎるからです。
ところが日本の場合、詳細を検討してみると物価高の原因は米を中心とした食料品と燃料代が主であり、こちらが3%を超えるほどの高いインフレ率を示しているのに対し、これらを除いたコアインフレでは2%を割り込むほど「デフレ」しています。つまり産業力全般は衰退しているにも関わらず、米や肉野菜+燃料代や電気料金などだけが突出して上がっているのです。これは産業が成長してその結果、自然と価格が上がっていく成長インフレではない悪性のインフレです。この状況になると労働賃金が上昇することは難しく、少なくとも物価高に追いつかないために生活苦が激増するのです。
この状況をして「インフレ下でのデフレ」という人もいます(←ただしワイはこの表現は間違えていると思っていますが…)
現在の悪性インフレは、結果として労働賃金の上昇に寄与しにくい一方で、食料品と燃料代という生活必需品の価格上昇が非常にキツいために「物凄く生活がくるしい」状態を生み出しています。これが石破政権が衆議院・都議会・参議院選挙で三連敗した理由の全てで、しかも石破たちは真性のバカなので対処方法も判っていません。
問題なのはこの状況ではもはや金利を上げてインフレ退治することもできず、逆に減税や給付金で庶民を助けることもできないことです。前者の金利を上げることが難しい理由は前述の通り、金利を上げれば国民負担が増え、また企業への貸出金利なども上がって産業デフレ(コアインフレに当たる部分)がますます酷くなるからです。
一方、後者の減税や給付金に関しては、減税は市場にお金を戻すこと=インフレ要因であり、タダでさえ必要以上に高い米や食料品、燃料代を更に押し上げかねないリスクがあることや「流動性の罠」のためにせっかく給付金をもらっても「将来不安や投資などにお金を回して損するよりも銀行に貯金しておく」という「ブタ積み(本来の意味は日銀の当座預金に蓄積され、景気に影響しないカネ)」になってしまって「効果がない」という状況に陥りかねないのです。
このため「行くも地獄・下がるも地獄」のジレンマに陥っています。
そこでワイが思います対策ですが、まずインフレを抑圧することが先です。そしてインフレの主因は米を始めとした食料品と燃料代です。これを更に調べてみると米の値段が突出して高く、この理由は「米の総量が少なすぎる」ことが原因でした。「モノ100 = 100カネ」の状態でインフレが発生するのは「モノの総量 <<< カネの総量」か「モノが少なくなりすぎて、相対的にカネの総量が増えてしまった」かのどちらかです。そして今回は後者です。
なので米を中心として海外から緊急に「安い米など食料品を輸入する」ことで総量を増やしてインフレを沈静化します。日本の農業賊の戯言など聞いている余裕はありません。まずはモノを増やすことです。モノを増やせば価格は下がるのであり、仮に海外米が5kgで2000円、国産米が4000円だったとしても「高くても日本産がいいのなら買ったらいい。海外の安い米でも美味しいとおもえるのならそっちを買うのが良い」というだけです。しかしトータルで食料品の価格を下げる政策的な努力が必要です。
燃料代は少し違います。もともと日本の燃料代は長期契約 (先物契約)で決まっており、これは価格変動に対する有効な対策ですが、新規契約などではインフレ分を含んだ再契約になることや、このインフレは米ドルが必要以上に市場に流れている事に起因する通貨膨張インフレなため日本ではなかなか対処することができません。原発を動かして…がいいのかはワイにはわからないので皆さんにおまかせしますが、さしあたりガソリンや軽油などの燃料代に補助金を出して特に物流コスト・管理コストを下げる努力は効果があると思われます。同時に電気代などにも補助金を出す形で民間の負担を減らす方向にすればよく、製造時のエネルギー費用軽減や輸送費用の負担が減ればコンビニなどのおにぎりの値段も下がることは十分に期待できるだけでなく、意味のない消費税減税や給付金のカネをこちらのエネルギー補助金に集中投入することで、特に夏場の庶民のクーラーなどの電気代がお得になる方が遥かに「助かる」と思われるのです。特にこれらの対処は「消費者市場に出る前の政策的対策」つまり「モノへの対処」に近いために悪性のインフレを防止もしくは抑圧できると思われます。
このためまずは米などの食料品と燃料という特定の「モノ」のインフレを抑え込み、コアインフレとインフレ率を整えた上で次のステップに進むべきかと思われます。
このため現在の状況では減税は一旦、辞めたほうがいいというのがワイの意見です。インフレ率がきつい状況+産業力がヘタっていて成長力がない状況で、金利が低い(=日本は円の価値を守ろうとしていない)+円安の状況で減税するのは財政の破綻を予感させ、結果として激烈なインフレや金利上昇とそれに伴う悪性インフレのさらなる進行を招く「英国トラス内閣の二の舞い」の危険性さえ出てくるからです。
そのためまずは一旦、悪性インフレの原因となっている非コアインフレ分野の価格上昇を抑え込み、このために必要な政策予算を捻出するためにも減税や給付金は一旦据え置くのです。そして米と電気代などか安くなった後、日銀が政策金利を上昇させ、再び産業インフレを発生させる…という金融政策を打つほうがいいと思います。
非常に心配なのはこのまま低金利を続けると、かつてのように日本だけがデフレ懸念 (←景気が弱い)金本位制に戻せず、帝国円の価値が下がってますます日本の産業力が失われてしまっていた時代に似てきてしまい、しかもタイミングを逸しているという愚を犯しているのではないかという懸念です。
貨幣の中立性から考えても、結局、日本も現在の世界のようにいずれは全産業に渡る酷いインフレによって低金利政策のツケを払うことになるのですが、その時には物価高で苦しいだけでなく労働者の賃金もバンバンあがる…という今の米国のような「別の地獄」の方がよいではないでしょうか? 特に非正規雇用者の労働賃金はあがると思いますし、同じようなことは1970-85年にも発生していて、その酷いインフレ時代の結果、民間には多額のカネが蓄積されてバブル景気につながった…というのですから、デフレで衰弱死よりは富が増えるだけマシなのかもしれません。
てか、今度こそバブルにならないように管理しながら、ごく普通のインフレ政策を採用したいと思います。ちなみにこの考えに一番近いのは国民民主党で、彼らは「より高い政策金利(→自然利子率)を誘導して、政府債務を抹消しつつ国民・国力を増強する。この時、物価高によって貧富の格差が生じるがこれは政府が福祉政策などで緩和する」という「高金利誘導型インフレターゲット論」です。元IMF主筆のブランシャールなどの説です。
まあ、タダで食べられる昼食はないので、同じ物価高なら我らの銀行口座の振り込み額もインフレ分くらいに増えるような政策を採用するしかないのかもしれませんね…
要するに「金利の正常化」が必要なんですが、そのための障害となっている現在のいびつな悪性インフレをまずは退治しましょうよ…という内容でした m(_ _)m
※ ※ ※
【補足】
現在、日本のトータルのインフレ率は3%以上なのに対し、米国はすでに2.6%くらいにまで下がっています。一方で日本の金利 (この場合は政策金利に相当する内容)は1.5%くらい。他方、米国のFF金利は4.5%もあります。
金利の役割の一つに、もしインフレなどで通貨 (カネ)の価値が毀損した時、これを金利上昇分で穴埋するという重要な役割があります。なのに米国よりもインフレ率の高い日本が、基軸通貨ドルの金利よりも遥かに低い…という状況は「異常」ということです。これでは円安は止まらないでしょう。そもそも「日本は円の価値を守る気があるのか?」と国内外から疑われ、さらなる円売り圧力が発生しかねません。
今後、トランプに対する不信などの外的要因から、ドル安や米国のインフレ率が上がったりするかもしれません。しかし現状だと日本円が安すぎ、金利が相対的に「低い」ことから「流動性の罠」の状態が続いて日本で長期のデフレが続く…というシナリオもありそうですね。
困ったものです…(TдT)




