2025年4月9日の米国債金利上昇という異常事態について…_φ(・_・
https://x.com/FGl5jNNj5IJunWv/status/1910296095659278743
こちらのURLは150万近くPVのあったワイのツイスレですが、この件に関して(ようやく)ある程度の補足ができそうな情報を得たので「暫定報告」ということで私見を述べたいと思います。
※ ※ ※
○安全資産「米国債」の暴落という異常事態
米国東部時間2025年4月9日午前0時1分 (日本時間9日午後1時1分)にトランプ大統領によって、全世界に対してベース10%の関税率+個々の対象品目への追加関税付与という大統領令 (議会承認の必要のない緊急法としての執行のようです)が発動されました。
ワイを含めて「(あのバカ)まさか本当にやるとは思わなかった」という衝撃が走り、この後で世界中が大混乱します。自由貿易の危機を感じ取り、世界中の証券債権市場で暴落が続いたのですが、この中で特筆すべき事態が発生しました。「米国長期国債が売られる」ということでした。これは異例でした。
通常、なにかのピンチな事があった時、米国国債は「買われます」。
ピンチの時、自分の資産を預けられる「安全な保管場所」を探した時、米国は政治力・経済力・軍事力で世界最強でなおかつ「この世で一番滅びにくい国」と認識されています。なので無敵最強国家・米国が必ず責任を取ってくれる米国債を購入しとけば、何かがあっても「必ず利払+償還が得られる」という安心感から買われるのです。これは基軸通貨の強みでもあります。要するに2192年以後、ガミラスが隕石落とし始めた時、みんなはまず最初に米国国債を買っただろうということです。
なので今回も米国国債が買われるだろうと思われていました。
確かにトランプ大統領による関税騒ぎが発端ではあるのですが、「世界のピンチ」に変わりはなく、このため常同として基軸通貨が買われる=ドル高・米国債金利低下が見込まれていたのです。基軸通貨国は自分で世界の危機を煽っては、自分の国の債権だけは買われるために「ピンチになってもお金をゲットできる」というマッチポンプさえ可能ということです。ところがこの時は違いました。
東京の時間で9日昼の12時過ぎごろから時間外取引で米国債が突如売られ始め、前日ですでに(売られ気味で)やや高めだった米国債10年債利回り4.29%が一気に4.51%まで上昇しました。で、利回りが急騰ということは価格は下落したということです。しかし「金利が上がると何が大変なの(?_?)」という方も多いと思います。そこで債権と市場金利の関係について、超ざっくりとしたイメージを…
…m(_ _)m
----
○金利と債券価格は逆比例の関係
金利が上がると価格は下がる
金利が下がると価格は上がる
凄くわかりにくいのですが、こんな風に考えてみるのはどうでしょ?
空気と水が入った密閉容器があり、いま水が2%で空気が98%だったとします。トータルで100%です。この100%は保証されるとします。
この後、水が膨張して20%まで膨れ上がったら密閉容器の空気は80%に縮みます。ここで水を金利、空気を国債の元本 (=カネ)とすると、金利が2%→20%に上がった時、国債の価値は98%→80%に小さくなりました。ということはこの18%分「カネの価値が減った」ということになります。
債権は「その価値を保証しなくてはならない」とされているので「密閉容器=債権の価値」は100%でなければならず、その時に金利部分が膨れ上がったらカネの部分が凹んでトータルは100%のまま…という感じです。
また債権は金利+元本に成分分解でき、国債ならば「償還年次の通貨の価値」ということになります。これもわかりにくいのですが、例えば今日、10000円で10年モノ国債を買ったとします。これが今述べたメカニズムで金利が20%上昇し、カネの部分が80%まで凹んだのならば「10年後の10000円の価値は80%の8000円にまで凹んだ」…的な感じですかね?
本当は年2回の利払い分を計算したり、不定期に発行される国債のそれぞれの表面金利とインフレ率を相互に計算する複雑な作業が必要なだけでなく、実際には債権の価値は激しいインフレなどの時には毀損もします(なので持ち続けていても100%の価値保全が出来ない場合もある)のですが、「金利が上がればカネの価値は下がる。金利が下がれば逆」というのは変わらないのです。
そこでもう一度、4/9の動きを見ると米国10年国債が4.29%→4.51%にまで上がったのですから、その分、米国債 (米ドル)の価値が下がったということになります。これは安全資産が売られたということで、「もはや世界に安全な資産はない」というパニック的な売りと言ってもいいかと思われます。実際、ドルが米国時間外取引で此処まで一気に売られた事はまず無いことで、そのくらい異常だったということです。
この時、開いていた主な市場が日本であり夜中のアメリカの時間外取引に参加している人数は少ないことや、日本は全米国債の約12%を保有するドルの最大外国人保有者でもあることから、日本が大量にドル(米国債)を売り払ったと騒がれたということです。
この時、超攻撃的ファンドとされている農林中金が売り払ったのではないかといわれ、実際、当時はFOXニュースで「農林中金が60倍のドル円レバレッジ取引で損切りした」ことから一気にドル売りが進んだ…といわれて大騒ぎになっていたほどです。
んで、冒頭のスクショは、ワイがこのことに画こつけて農林中金について、何気なく書いたツイートが何故かバズったという話でした。要するに「農林中金が米国債を売り飛ばしたのが契機で、一挙に日本勢が売り飛ばしにかかったパニック売り祭」だったのではないか?的な話が世界中で騒がれていたのです。
より重要なことは、この米国金利上昇…つまり米国売りはトランプ政権を激しく動揺させた(らしい)ということの方で、この動きの直後すぐにトランプ政権はベースとなる一律関税10%は据え置くにしても、残りの関税上乗せ部分を90日間、一時停止すると発表しました。
政権側からこの据え置きの経緯は明示されていないものの、米国長期国債が大量に売られて金利が急騰した(10年国債は一例にすぎず、他の年限のすべての国債が売られていた)事はトランプ政権も「安全資産のドルは買われる」と当然思っていた所に、よもやの予想外の展開となって泡食った…と見るのは妥当です。
この金利上昇が固定すれば、米国は利払だけで200〜250兆円くらいは支出を強要され、加えて償還・再発行などの国債費は実に900兆円を超えると予想されましたから、慌てたのも当然かと思われます。払わなければ対外デフォルト=本物のデフォルト扱いになりますから、予想外の顔面パンチ食らってそのまま膝が折れて倒れ伏したというわけです。
このためトランプ政権のワガママで迷惑な関税攻撃に対し、日本さんが一人毅然と「米国債売り」を浴びせて叩き潰したと認識されて「日本が世界をトランプから救った」といわれるようになりました。なるほどアメリカの借金の10枚のうち一枚は日本人が持っているというのなら、5000兆円以上は発行されている米国債の量から考えて、日本の影響力は計り知れないものになるのは明白であり、その最大の債権者の日本さんから
ふざけんなお…( ^ω^;)
…と恫喝されてトランプが引き下がったと認識されたわけです。
----
○日本だけでなく「市場」がトランプに「NO」と言い出した…と考えるべき
ただ、ワイ個人はこの考え方に当初から違和感を持っていました。
インフレ起こしている米国債は前述の理屈から「含み損」を抱えた状態で、この状態で売り飛ばすと実損確定になることや日銀などが大規模にこのタイミングで売ったという話がなかった事、日本国債も超長期債主体に同時期大きく売られていた(30年モノ国債利回りは一時前日比0.29%もの上昇)ことから「日本円に逃げたわけでもない」と思えた事、日銀が動いたという話がきこえてこなかった事や、またいくらなんでも農林中金一行でこんなにドカンを動かせるわけもなく、同時に日本の民間が大量にドルを売ったという話も聞こえてきませんでした。この日は日米始め世界中の株式・債権・通貨が売られまくっていた、世界市場総負けの状態だったからです。
なので4/9の段階では謎のままでした。
ちなみに今日/22の段階でも「謎のまま」です。ただし、この期間に判明したこともあり、たとえば農林中金は正式に「米国債は売っていない」と明言した事や日銀も売った形跡が無いこと・合わせて中国なども以前から米国債を売却し続けていて、これは主にバブル崩壊に伴う債務の支払い金だったり、人民元を買い支えて暴落を防ごうとするのが目的で4/9に政治的な意図で大量に売却したというわけではないことなども判ってきました。
よって「誰が売ったのか…(?_?)」は今でも分からないのです。
ただワイ個人の勝手な憶測をさせてもらえば、やはり売り飛ばしたのは米国籍のファンドが時間外の相対取引で大量にドルを売り払ったのが主因ではないかと考えています。
米国債の6割を占める米国のファンドが、トランプの関税政策などの多国籍貿易・自由貿易を否定するような強硬策に嫌気を刺し、実際に高い関税を実行するに及んで米国債から別の資産へと大量に移動させて資産を整理したアセットのアロケーションという行為だったのではないかと考えるようになりました。
もしくは別の意見としては、日本ではなく米国もしくはルクセンブルクなどに拠点をもつ非在米大口ファンドがトランプ政策を嫌って持ち高解消の動き(=アセット・スワップ)に出た結果なのかも…という話も納得感があります。アセットスワップは同じ年限の国債の金利部分について、ある市場で国債を購入した場合、別の市場では逆に同じ量だけ売却するクロス取引をすることで差分を得ようとする取引で、この取引をキャンセルしたことで結果としてドルの大量の売りがでた…という見方です。そうかもしれません。
勿論、これ以外の何かかもしれませんし、実は日本さんが損切り覚悟で本当に大量に売却していたとか、日本さんがアセットスワップかけていたとかいう可能性もあります。この辺はよく分からず、このまま闇に葬られて永久に謎のままで終わるかも知れません。しかしハッキリしていることもあります。
トランプ政権に対して市場は三行半を突きつけたという厳しい現実です。
ピンチの時に基軸通貨が大量に売られるというのは前代未聞です。
これは基軸通貨の価値がそもそも失われつつあるということで、米ドルの価値が爆下がりすれば米国が基軸通貨国の地位を失って世界の支配力を失うだけでなく、多額の借金を抱えた貧富の格差の大きいタダのG7のうちの一国に転落するという深刻な未来を暗示しています。この売りを読んだ根本原因は「米国が自由貿易・多国籍貿易をやめる(高関税政策)」ということでした。
ではなぜ市場は米国の一国主義・関税主義に対して「オカシイ」と言い出したのでしょうか? それはトランプが、「なぜ米国は戦後、一貫して自由貿易を推進してきたか?」のメカニズムを理解していないのではないか?…と疑いだしたからでした。単に一部に関税をかけ、その間に政策として特定産業の強化を目指す…という程度の政策ではなく、本当に「基軸通貨の強み」を自ら捨てようとするバカなのではないか?…と疑い出したということです。
そのメカニズムとはこんな感じの内容のことです…m(_ _)m
----
○基軸通貨と自由貿易〜カネで世界を支配するための構造
米国にとって自由貿易…つまり関税をかけないというのは「基軸通貨国だけが持つ特権」のためです。
第二次大戦中の1944年、世界の工場であり同時に連合国のお財布でもあった米国はドルを世界の基軸通貨とすることを承認させ、以後、世界の基軸通貨となりました。実際、戦後の1948年には欧州主要各国の対米赤字総額は50億ドルくらいあったとされています。これは米国がWW2時に連合国への資金供給総額が490億ドルだったことを考えても結構な金額で、このため欧州は復興のための予算さえ亡くなりつつある状況となり、この救済のために
アメ公「ドル貸してやるから、そのカネで俺んトコのモノ買えよ(ニチャァ…」
というマーシャル・プランを組むことになります(実際はドルの与信を各国通貨に与えるという感じか…?)。ワイの手持ちの資料だとこの時に約100-103億ドルものカネを欧州に貸付け、うち実に91億ドルは返済を免除されたはずです(なんという大番振舞い…)。この結果、全世界が事実上ドルを決済通貨として使用することになり、また米国は当時の世界生産の五割を押さえて自国製品を流通させまくるという絶対王者の地位を確立しました。
このことは同時に「なぜ長年、アメリカは日本などに関税撤廃を強く要求してきたのか?」の謎解きにもなります。
どこかの国が多国籍貿易をする場合、国際的な決済には主にドルが使われます。そして米ドルは米国債を担保に生成されます。米国債は米国連邦政府財務省が発行する債権で、これが回り回ってFed (←米ドルを発行しているトコ)が買い取ることで市場にドルが供給され、世界に供給されるということです。このメカニズムで考えれば、ある国の決済にはFedがばらまく米ドルに依存しなくてはならず、このドルは米国政府が国債をどのくらい発行するか?…で「支配する」ことができる=米国政府が世界を支配できるという構造だったからです。
…(゜д゜)!?
つまり、ワイら日本人などアメリカ以外の国が生きるために石油を買ったりモノを輸出する時にドルが必要であり、そのためには米ドルを買うなり米国へ輸出してドルをゲットせねばならず、これは米国製品の購入にもバンバン使われ米国も潤うことになります。
実際、米国は去年、約180兆円近い貿易赤字を出しているのですが、しかし米国から全世界への輸出総額は約2.5兆ドル…実に300兆円を超える程で日本の輸出総額の3倍くらいもあるのです。つまりアメリカは全然「輸出力のない国」では「無かった」のです…(Jetroの2023年米国通関ベース値)。
しかも多国籍貿易・自由貿易が盛んになればなるほどドルが必要になり、それは麻薬患者がますます沢山の麻薬を必要とするように益々ドル漬けになっていく…ということだったのです。
自由貿易が盛んになればなるほど、ドル漬けに出来、アメリカの言いなりにすることができる。まさにシャブ中にさせてすべてを搾り取ろうとするかのようなクソ野郎の所業が戦後の米国だったのであり、そのためにも関税をやめさせ、できるだけ多くの多国籍取引を殺らせたかった…というわけです(恐怖
ところがこの「恐怖の支配構造」を自ら放棄しようとしてるのが、今のトランプ政権ということなのです。
たとえば日本に対して自動車関税を最大24%もかけようとしているのですが、これは米国国民にとって負担増になるだけでなく、関税を上げたからといって米国国内で自動車産業力が急激に復活することを確約するわけでもないのです。ならばトランプのやってることは、ワイに言わせれば「自動車組み立て工になりたがってる貴族」のような奇妙さであって、なぜわざわざ王者の椅子からベルトコンベアの前に立ちたがるのかワケがわからない程です。
確かに1812年の米英戦争の後、当時の米国は欧州との対立もあり、北部を中心に産業自立を目指すようになりました。このため高い関税をかけて欧州製品の輸入を阻止し、これにとって変わる自国製品の育成に成功します。ただし南部は奴隷などを使った綿花を欧州に輸出していたために北部と南部では対欧州関税政策を巡って対立。これが後の南北戦争の遠因にもなるほどでしたから、いまのトランプさんはこの北部の歴史を知った上で、関税をかけて米国内に生産力を取り戻そうと考えているのかも知れません。
しかし米国は基軸通貨国なのです。
しかも年間に300兆円以上も輸出できるだけの強大な製品輸出力を誇り、itサービス始め金融・テクノロジー系では他国を圧倒する世界支配力も持っています。なにより貿易赤字が200兆円近いといっても、そもそも貿易赤字とは「単なる赤字」ではありません。国内の消費市場(=経済力)が余りにも強いために自国内での生産力では追いつかず、仕方ないから足りないモノを海外から輸入して補填するしか無い…というのが「正しい貿易赤字」であって、事実、米国はフランス一国を飲み込んで韓国一国を吐き出し、ロシアとウクライナの2ヵ国を毎年生み出すほどの経済力を持つ圧倒的化け物国家というのが真の姿です。
こんなのは複式簿記を学んだ人なら誰もが判ることで、勉強するためにペンとノートを買った時、「損した・赤字になった」というバカはいないのです。勉強して出世して、ペンとノート代以上の稼ぎを出せばいいだけだからです。
別の言い方をすれば、結婚して子供を作って家をローンで買った時、「借金まみれの負け組ですね」というバカがいないのと同じです。子供と、ローンのついた家は、未来に富を生み出し継承する「大事な資産」だからです。日本が赤字垂れ流して石油を買っているのは「必要だから」であり、石油がなかったら国家そのものが消滅するからです。逆にいえば日本が石器時代の水準だったら「大量の石油なんていらない」わけですから…
確かに米国の貿易赤字はあまりに大きく、持続不可能とは思います。しかし毎年200兆円以上の規模でGDPが伸びている圧倒的な経済力があり、そのために必要な貿易赤字ということなのですし、なにより貿易赤字を小さくしたいのなら米国製品を輸出する方向で頑張ればいいのであって、これは関税をかけて基軸通貨国としての絶対優位性を喪失してしまうこととは無関係な「経営メソッドの問題」に過ぎないのです。
米ドルが高くても高度製品なら売れるのです。世界中でキャタピラーのクレーン車やディアーの農業トラクターが走り回り、日本でだってJeepは走っています。貿易黒字は相手国の市場ニーズを研究してフィットさせなくては売れないのであり、スズキがインドでシェア50%近くも確保し、ジムニーがインド軍にとってのジープとして使われているのはスズキが徹底してインド市場を研究し、需要を理解した上で製品供給体制を構築できたからです。
アメリカもそうしろ!!(# ゜Д゜)!
…と言っただけのことです。
※ ※ ※
この事を理解している市場は、トランプの無意味で有害な貿易・経済政策にそろそろ嫌気が刺し始めています。
このため米国株は今日現在、暴落と時に上昇という不安定な動きを繰り返し、ドル安+米国債権金利高=米国債安という「トリプル安」という異常事態がつづいていると考えるべきでしょう。非常に憂慮すべき状況です。今後どうなるかはワイにも判りません。トランプ次第です。
しかし判ってることもあります。「最後の勝者は市場である」ということです。信任のない政府は売られます。さしあたり、今回の米国国債金利高はその魁となる不安な出来事だったと考えるべきかと思われます。今後、さらなる混乱が予想されます。暗澹たる気分にさせられますね…(絶望




