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ハーレム帝国ハレムンティア 〜 闇堕ちチーレム転生者が世界征服しましたが、神チーレム持ち異世界 番長がみんなの心を奪い返します 〜  作者: 藤巳 ミタマ
終章

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第六十一話 ブッチャー

 ブッチャーと呼ばれる凶暴な切り札に賭ける事にした2人。

 そして、そのブッチャーを呼ぶために走り出したルーカスを背に、リンゴ農家さんは覚悟を決めてブーケパワー最大出力を解放。

 デモニトロンに突撃していった。

 


「無茶な約束、結ばされちまったな……。だけども、一世一代の大立ち回り、オイラの晴れ舞台だ!

 ルーカスくん、必ず約束を果たすでな!!

 うおおおおおお!!」


 ──ゴウン!! ギィン!! ガンガン!!!


 

 デモニトロンの拳とリンゴ農家さんの高枝切りばさみが打ち合い火花を散らす。


 リンゴ農家さんは一歩も引かない猛攻撃を仕掛けてデモニトロンを攻めていくが、デモニトロンは余裕の表情だった。


「この強化具合なら、アイツと2人ならワンチャン狙えたかもしれないのになぁ〜?」


 嘘だ。そんなはずはない。


「アイツは仲間を呼びにいったのか。だが、本当に来るのかな〜?

 この俺様の強さに今の今まで黙ってたヤツがよ」


 デモニトロンは遊ぶように拳を振るい、リンゴ農家さんを嘲笑う。

 だが、リンゴ農家さんは歯を食いしばって己の役目をまっとうする。


『挑発に乗って隙を見せるわけにはいかねえだ。

 今はただ、少しでも時間を稼いでブッチャーとルーカスくんが帰ってくるのを待つしかねえ!』


 冷静だった。リンゴ農家さんはこんな状況だが、とても冷静だった。

 ブーケパワーのおかげなのか、本気を出しても挑発されても激昂せず、生き延びるための最適解が分かるのだ。


「黙ってるだけかぁ?

 お仲間さんを信じてるってところか、だが絶望するがいい!

 俺様はまだ……2()()()()()()()()()んだからなぁ〜!

 ゲ〜ヒャゲヒャゲヒャ〜!!」


 そう、デモニトロンは進化して環境に適応するタイプの悪魔なのだ。

 ベルデールは時間をかけて体内を作り替え、ジャバウォックは体を乗っ取って適応する。それぞれ違うが、デモニトロンのタイプが一番戦闘力が上がりやすい恐ろしい相手だった。


「に、2回も……!?」


 思わず声を上げてしまうリンゴ農家さん。ブッチャーは強いが、デモニトロンの進化がどれほどまで凄まじいかが計り知れず、心の中で不安が過ぎってしまう。


 そして、その不安を加速させる様に戦況が一気に悪化してしまう。


「モウ〜!!?」


 モウ部隊最後の一頭が倒れてしまう。それに続いて、後方支援をしていたニーナもグレーターデーモンに倒される。


「キャー!!?」


 それだけに終わらず、すかさずグレーターデーモンは全員でビリーに襲いかかる。


「ぐぉおおおお!!」


「ケコッ!

 コケコケコケコケェエエ!!!」


 華麗なステップで回避しながら、グレーターデーモンを1体、また1体と蹴散らしていくが……多勢に無勢。最後には攻撃を受けてしまい、ふかふかの土の畑にその身を任せる事になってしまった。


「コッケェ……」




「みんな!!」


 リンゴ農家さんは振り向けない。一瞬でも視線を逸らせばデモニトロンに倒されるからだ。しかし、背後から聞こえてくる悲鳴や轟音を目の当たりにして、残りは自分1人だけだと理解する。


「「「ぎゃぉおおおん!!!」


 正面はデモニトロン、後ろからはグレーターデーモン。絶体絶命。

 少しだけ……もう少しだけ粘れたら運命は違ったのかもしれない。


 リンゴ農家さんが今度こそ絶望を受け入れようとした、その時──


「ここで終わりだ、忌々しいリンゴ農家め──

 ……え?」


 ──ゾクゾクゾクゥウウッッッ!!!!!


 デモニトロンは背筋に絶対零度の悪寒を感じると、すぐに攻撃をやめて慌てて飛び退く。だが、その瞬間!



 ──大爆発!!!


「「「ぐぎゃああああ!!!?!」」」


 一瞬にしてグレーターデーモンの半数が倒され、魔界に強制送還されてしまう。


「き、貴様……ナニモンだぁあ!!?」


 デモニトロンは砂煙に隠れるその(ツワモノ)に本能的に恐れを抱き、思わず声も上擦ってしまう。



 ──テチ……テチ……


 そのツワモノはゆっくりとデモニトロンに近づいて来る。まだ姿は見えない。


 しかし、圧倒的なそのオーラを放ち、それだけで今までの相手とは格が違うと知らしめていた。


「なんていうオーラだよ……!

 デーモンジェネラル様と同等か?

 いや、どんどんオーラが強まっていくだとぉ!!?

 一体どこまで!! これじゃ、今俺様の目の前にいる相手が、ただの農業が盛んな平和な町に住んでいただけのヤツが、デーモンカイ──」



「コケコッッッコー!!!!!!!!!!!!」



 ──ブワッッ!!!!!!!!



「ぐあっ!!?」


 ツワモノが雄叫びを上げると、その気迫だけで、砂煙どころか周囲のグレーターデーモンやデモニトロンすらも吹き飛ばしてしまった。


 そして、その勇姿が白日の元に晒される。


 白い羽毛に赤いトサカ、鋭いクチバシに、強靭な足。確かな実力とプライドを感じさせる鋭い目。

 魔法生物やモンスターでもない。体も70cmと大きくない。

 だが、確かに戦いに適したニワトリ。


 ──軍鶏(シャモ)


 そして、軍鶏の中でも『世界最強の軍鶏』の称号に相応しいこのツワモノこそ──



()()()()()!!」


 リンゴ農家さんの目に希望が宿る。


「リンゴ農家さん!」


「ルーカスくん、良かった!

 ブッチャーを呼ぶことができたんだべな?」


 ルーカスは少し疲れた顔をしていたが、明るく笑って頷き、リンゴ農家さんに肩を貸してその場から離れる。



「た、ただの軍鶏のくせに、なんて気迫だ……」


 デモニトロンはブッチャーを前にして目が離せないでいた。油断をすれば一瞬でやられちまうと本能的に理解していたのだ。


 ブッチャーの睨みはあまりに凶器だった。

 それもそのはず。ブッチャーはただ最強なのではない。


 あまりに凶暴で、あまりにプライドが高く、あまりに気性が激しく、あまりに好戦的で、あまりにナワバリ意識が高い、()()の軍鶏なのだ。


 かつてこの町の周辺は凶悪なモンスターがはびこり、危険な地域だった。それゆえに、町が侵略されることもあった。

 しかし、ブッチャーがそれらを許さなかったのだ。若軍鶏の時代からその最恐さをいかんなく発揮し、モンスターたちを一網打尽!


 そしてその軍鶏が通った後は肉片しか残らないと恐れられ、つけられた名前こそ……『ブッチャー』だったのだ。




「コケ……」


 ブッチャーが静かにそう言うと、あろうことか今まで倒れていたコケコ部隊が起き上がったではないか!

 それどころか、ブッチャーに当てられて凶暴性を増し、オーラまで放っている。


「コケコ、コケェエ!!!」


 恐化ビリーが雄叫びを上げて駆け出すと、他のコケコ部隊も続いてグレーターデーモンに襲いかかる。



「ギャァアア!!?!?」


 対戦相手は変わらず。普通に考えればコケコ部隊が負けるはずだが、今回は違った。数の暴力をものともせず、グレーターデーモンを複数相手どって、コケコたちは瞬く間に仕事を終えたのだった。



「グレーターデーモンたちが!

 嘘だろ……?」


 目の前の光景が信じられなかった。ブッチャーはまだここに来ただけなのに、一瞬で戦況をひっくり返されてしまった。

 グレーターデーモンは全員魔界に送り返され、残ったのはデモニトロン1人。しかも、ダメージを与えたはずのモウ部隊もニンゲンたちも、目を話した隙に全快しているのだ。


 そんなデモニトロンの焦りを感じ取ったのか、ブッチャーは視線を少し斜めにずらして──


「ココッ……」


「き、貴様ぁあ!!

 いま、俺様を嘲笑(わら)ったのか!!

 よくも俺様をここまでコケにしてくれたな!

 許さん、許さんぞ貴様ぁああ!」


 デモニトロンは出し惜しみをするのをやめて、一気に2段階(ワープ)進化をする。



「うおおおお!!

 デモニトロン、進化ぁああ!!!」


 デモニトロンの体が分解されていき、真っ黒な邪気が溢れ出すと、次の瞬間その巨体が現れる。


「グォオオオオ!!」


 強靭な(アギト)、恐ろしい眼光、見る者を畏怖させるその風体。

 デモニトロンは、翼を持った真っ黒なティラノサウルスのような姿に進化していたのだ。体高だけでも15m、体長は40mオーバーの超巨体。


 触れるだけでもダメージを受け、踏まれるだけでもSSSS級冒険者でも致命傷、噛まれればミスリル鋼すら粉砕される程の力を持っていた。


 それが本気で攻撃してこようと言うのだから、もう相手できるのはブッチャーだけだった。



「ケコッコチャ」


 ブッチャーがそう言うと、コケコ部隊は戦線離脱。もはや他の者では足手まといなのだ。


「軍鶏ふぜいが、まだ余裕を気取ってんのかぁ〜?

 いいぜ、いますぐそのムカつく顔を歪めてやるからな!!

 ガウン!!!!」


 デモニトロンが凄まじい牙で噛み砕く!

 ……かに思えたが、ブッチャーはヒョイっと軽く避けてしまう。そして、デモニトロンの目を見てこう言った。



「……ケッチャコ」



 ──バッ!


 ブッチャーは駆け出した。

 この後の戦いの被害を考えてなのか、それとも邪魔が入らないようになのか、少なくとも場所を変える気だった。

 音速を優に超えるその俊足で一気に町の外へ向かう。


「待て!」


 デモニトロンはすぐに追いかけた。

 コーナーで差をつけられながらもなんとか喰らい付き、その熾烈(しれつ)な駆けっこの最中でブッチャーに問う。


「……貴様、そんなに強くてなぜあんなところに収まってるんだ?

 貴様ほどの強さなら……想像するだけで、ぎゃひっ!

 笑いが止まらないぐらいだぜ。まさに、地位も権力も思いのままだろうなぁ〜?」


 しかし、ブッチャーはなびかない。


「コケっ……」


 ブッチャーはデモニトロンの言葉を聞き、まるで井の中の蛙大海を知らずといった様子で鼻で笑う。


 ブッチャーはもとより強かった。

 凶悪モンスターも全滅させるほど強かった。だが、それ以上に凶暴すぎて、戦いの時に自我を失うバーサーカーになっていたのだ。

 バーサーカーは確かに強いが、テクニックは皆無。まさにただの爆弾だ。


 ある時ブッチャーは気が付いた。


 その爆弾みたいな性質は、いずれ自分すらも破壊してしまうことを。そして、ただ爆発することしかできない故に、対処もされてしまうことを。能力を発揮しきれていない故に、格上には敵わないことを。


 だから、戒めとして岩戸にこもり、自らを封印して長い眠りについた。


 だが、そんなブッチャーはついに、先日新たな力を手に入れたのだ。


 ──ブーケトス流星群


 幸せパワーを手に入れたブッチャーは覚醒!

 その凶暴さを自らの意思でコントロールできるようになったのだ。

 鬼に金棒、いや……ニワトリに朝日なのだ!


 そして、その100%の力を出せるようになったブッチャーは再び戦えることにワクワクしていた。だが、それと同時に虚しかった。それもそのはず。


 ひとつめ──


 会わなくても分かる。この力を授けてくれた人は、自らより遥かに格上。

 100回挑んでも100回負け、1000回挑んでも1000回負けるだろうと。デモニトロンは権力などというが、とんでもない。

 サメががシャチに挑む様なものだ。

 だからこそ、そんな世間知らずなデモニトロンの誘いはばかばかしかったのだ。


 そして、ふたつめ──


 デモニトロンは世間的に見れば確かに強いのだろう。

 しかし、フルパワーを制御できる様になった自分にとっては……デモニトロンですら、サメにとってのイワシ!

 そう、取るに足らない相手だからだ!!



「コケェエエエエエエエエエッッッ────」





 * * * * *




 翌日、ゲオルギウスにて。

 ジョージは兵士から報告を受けていた。



「──そして、そのブッチャーなる軍鶏は刹那のうちにデモニトロンを倒すと、そのままの勢いでコケコ部隊を率いて、一帯に潜むレッサーデーモンやグレーターデーモンを一掃。

 そして、新たに発見されたデーモンナイトの軍勢まで全滅させたようです」



「……すさまじいな。

 それで、他には?」


 ブッチャーの類稀なる活躍ぶりに、ジョージも苦笑いを浮かべる。



「その町は平和が戻り、ブッチャーもその地域の守護者として活躍中です。

 しかし、別の地域でベルデールと名乗る悪魔が現れましたので、現在シン騎士団長が早朝出陣したところです。

 ……それで、陛下はどうされますか?」



「……新たな悪魔が現れたと言うことは、これからもっと強い悪魔が来るかもしれないのか。

 なら、俺自身も警戒していつでも出動できるようにしておくよ。

 ……ブッチャーみたいなヤツが世界各地にいたら楽なんだけどなぁ……」


 そう言いつつも、すぐに考えを改める。


「いや、そんな凶暴な軍鶏が世界中にいたら、悪魔がいるより怖そうだな。

 やっぱ、俺たちが動くしかないのか……」



 こうして、またジョージの忙しい日々が始まるのであった。



 

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