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第四十九話 終わる因縁と終わらない夏 

「──力が、みなぎってきましたわ〜!!」


 聖杖リズン(見た目は魔法少女のステッキ)を手に入れたウィステリアは更なる高みへとのぼり、その溢れんばかりのエネルギーに翻弄され……てはいなかった。すぐに制御をし、ハイテンションで魔法陣を描いていたのだ。


「ウィジー、あとどれぐらいで準備が整う?

 残った強めのフェロモンスターも押し寄せてきているし、フェドロタイタンもすぐそこまで来ているんだ」


 そう、弱いフェロモンスターは聖杖から放たれる秩序をもたらす聖なる光で消し飛ばされたが、ある程度の強さの敵は苦しみながらもその光を消すために目をひん剥いて飛びかかってきているのだ。


 フェドロタイタンへの決定打に欠ける今じゃ、早めに準備を終えないとジリ貧になってしまうか、もし倒せてもアメリアたちの所に帰るのが遅くなってしまう。フェドロがアメリアの所に来ているので、急がなければならない。


「──フェロモンバズーカ!」


「──エンシェントロアー!」


 ジョージとエリンが迫ってきていたフェロモンオーガを倒す。


「ウィステリア様、もうちょっと時間を稼いだほうがいい?」


 イリーナはウィステリアに近づくフェロモンスターをマジックパイルドライバーで消しとばす。


 以前リズンバークの住民を転移させた時は、その精密な魔法陣を描くのに5分ほどかかった。しかし、今回描いている魔法陣はさらに凄まじい魔法陣である。


「……ええ、あと少しですわ!」


 町を丸ごと包み込み、かつある種、環境すら書き換えてしまうような強力な魔法。──そう、()()()()だ。


「……フェドロタイタンが来たか!

 ──魅力解放!!」


 とうとう町の中心に来てしまったフェドロタイタン。ジョージはフェロモンを爆発させて跳躍、フェドロタイタンと拳と拳をぶつけ合う。


「グルロロロォォオオ!!」


 実力ならジョージが上。しかし、フェドロタイタンも驚異的な再生力で全く倒れる気配がない。

 エリンもイリーナも協力して3人で攻めるが押し込めず、かつてハレムンティア王国を滅ぼしたフェロモンスターだという事を再認識させられる。


 しかし──


「準備できましたわ!!」


 世界最強の魔法使いのウィステリア、世界最高峰の(今回の戦いでようやく実力を発揮できるようになった)弓使いエリン、禁術とマジックパイルドライバーでインフレに追いついたイリーナ。

 そして、太陽のフェロモン使いジョージ。


 ハレムンティアが滅ぼされた時代に比べてインフレは進んでいるのだ。そして、このメンツこそ、そのインフレの最先端。


「来たか!

 ──フェロモンエンチャント!!」


 ジョージが魔法陣にフェロモンの効果を付与すると、とうとうその魔法陣が起動する。


「みんな行くぞ!!

 ……俺たちの夏は、まだ終わらない!!」


 ジョージの掛け声にあわせ、みんなの声と想いと魔力が合わさり眩い光が溢れ出した!


「「「「魅惑のサマーバケーション!!!!!」」」」







 ──サラサラの砂浜、ターコイズブルーがゆらめく海、風になびくヤシの木、雲ひとつない突き抜けるような空、照りつける太陽……そう、リズンバークはフェロモンあふれるビーチに進化していた。


 そして、それにともなってジョージたちも進化、フォォオームチェンジッ!!

 サマーバケーションフォームになる。


 アロハ柄の海パンのジョージ。

 グラマラスボディをいかんなく発揮する黒ビキニのエリン。

 ピンクのフリルスカートが付いたワンピース水着のイリーナ。

 落ち着いたブラウンとホワイトのホルターネックビキニのウィステリア。


 この世界ならフェロモンスターと仲間たちしかいないので、みんな水着姿でも堂々としている。ゆえに、大胆。大胆、ゆえに魅力もアップ!


「グロッロ……?!」


 一瞬で周囲の状況が変化してフェドロタイタンは動揺していた。

 常夏の浜辺に遠くに見える水平線、ジリジリとひりつくような太陽光。

 水着姿の敵、ロックオンされたフェドロタイタンとフェロモンスター。


 反撃したくても、何故か特殊な結界によって四角い範囲から出られない。この世界は、ジョージ……いや、夏を楽しむ者こそがルールなのだ!



「──フェロモンボール!!!!!!」


 ジョージの雄叫びに応え、フェロモンが凝縮。ビーチバレー用のボールに変化し、フェドロタイタンたちのコートにサーブされる。


「グオ!?」


 わけもわからず弾くフェドロタイタン。なんとかジョージたちに返すが、フェドロタイタンは知らなかった。

 これが最後のチャンスであり、そのチャンスを逃してしまったことを。


 そして、後悔した時にはもう遅い。夏はフルスロットル、特にジョージたちの夏は音速を超える。そう、待ってと言われても待ってくれないのだ!




「エリン先輩!!」


 イリーナが掬い上げる。


「まかせるのじゃ! ……ウィステリアさん!」


 エリンがウィステリアに繋げた。


「受け取りましたわ!

 ……決めて、ジョージ!!」


 最後にウィステリアが天高く打ち上げると、ジョージは追いかけるように天空まで大ジャンプする。


「いくぜぇええ!!」


 ボールを追い越してフォームを整えフェドロタイタンとフェロモンスターをロックオン!


 ボールが目の前に来たところで、みんなの熱いパッションと夏の思い出を詰め込んだフェロモンボールをスマッシュした。


「──サンシャイン・オブ・ハレムンティア!!!!!!」




「──グォオオオおぉおォォォ……!?」


 真夏の太陽のごとく輝くパッションにさらされたフェドロタイタンとフェロモンスターたちは、その熱さに心と邪悪を焦がされいく。


 感情の無いフェドロの操り人形でありロボットのような存在であるフェロモンスターだが、この消滅の瞬間だけは少し違った。


 彼らは知見を得たのだ。そう……。



 ──『夏を制する者が人生を制する』って事をね。夏、サイコー! 




 こうして、フェドロタイタンとハレムンティアの因縁の対決は幕を閉じたのだった。


 * * * * *






 ちなみに、常夏のビーチと成り果てたリズンバークは、後々に観光名所として有名になるが、それはまた別のおはなしである──

次回は明日です

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