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第四十七話 女神の力

 フェロモンスターが跋扈(ばっこ)し、建物はほとんど壊され、つい先日まで人が住んでいたとは思えない程ボロボロになった町、リズンバーク。


 3mものゴブリン、凶悪なイノシシ頭になったオーク、5mのオーガの人型系。

 後ろ足が馬の足のヒッポグリフ、翼が4枚になったワイバーン、凶暴で群れでの連携をとるヘルハウンドなどの高位の幻獣系。

 フェドロンによって変異した種の、ブラックスライム、暴れポテト、どくどくスネーク、ロケットバッタ。


 そして……ハレムンティア王国を滅ぼした、フェドロタイタン。しかも、そのフェドロタイタンはリズンバークの神聖なエネルギーを貪ったせいか、元々100mの体は今ではその倍近くまで大きくなっていた。


 それぞれが町で暴れまわったせいで、もうリズンバークは人が住める状態ではなかった。



 * * * * *



 フェロモンスターの襲撃から2日後。

 ジョージたちが町についた頃にはフェロモンスターは以前より増え、いまや町周辺に20万体もの敵がはびこり、町はフェロモンスター色で真っ黒に染まっていた。


 ダンとマーシャの城塞にも襲撃が来たとの知らせが今朝方入ったので、今日のうちにフェロモンスターとは決着をつけなければならないだろう。



「──どこへ行ってもフェロモンスターだらけだな」


 瓦礫に身を隠しながらジョージが呟く。


「いくら人型フェロモンスターの目を免れても、空からはワイバーンとヒッポグリフが見張ってるし、地上では匂いでヘルハウンドが寄ってくるのじゃ」


 音のない矢でヘルハウンドを始末しながら、ジョージのいる瓦礫に滑り込んだ。


「……せい、うにゃ!

 久しぶりにダガーを使った気がする」


 続いてイリーナがつゆ払いをして、その後ウィステリアがやってきた。


 ウィステリアの魔法はド派手で見つかりやすいのもそうだが、前回で消耗した魔力が回復仕切っていないことと、この後の仕事のために温存しておく必要があるのだ。


「うぅ〜。魔法を出したい、魔法を出したいですわ……」


「ウィステリア様、それでさっき見つかっちゃったんだから、さすがにもう我慢して欲しいんにゃけど」


「はい……」


「……皆揃ったな。

 じゃあ、次の瓦礫まで走るぞ。リズンバークに着いたら戦闘開始、そしてすぐに大技を決めて一気にカタをつけるから準備しとけよ」



 しゅんとしたウィステリアをスルーしつつ、ジョージは次のカバーポイントを見つけてタイミングを見計らう。

 ちなみに、ウィステリアの魔法ぶっぱで一回作戦中止、一度ファルドーネに戻ってやり直しまでしたのだから致し方ない。


「大技ならお任せあれ。

 楽しみですわ〜」


 生まれてこの方、スニークミッション(隠れるやつ)なんてしたことが無いウィステリア。スニークに関しては期待できない分、戦闘開始した時に頑張ってもらおう。


「……よし、行くぞ!」


 フェロモンスターの隙をついてジョージが走り出す。それに続いて、3人は慎重に飛び出した。



 ● ● ●



 そして、ジョージたちはしばらく走っていき、途中で見つかるもなんとか最低限の騒ぎで収めて、ようやく目的地であるリズンバークに辿り着くことができた。


「──これでリズンタワーを破壊するんだったよな。

 しかし、みんなを救うためとは言え、クエストの授受、司祭さんとのお茶会、ハーレム勧誘、たくさんの思い出が詰まっているこのリズンタワーを、今までお世話になったこの塔を破壊するのは寂しいな」


「……でも、今後フェドロと戦うことも考えれば、避けられないですわ。その分、わたくしが活躍させて差し上げましょう」


「頼んだぞ、ウィジー。

 ……よし! 行くぞ」


 少しナイーブになっていたジョージだが、憂いを払拭して覚悟を決める。


 ──パパパパパァーンッ!


 ファスナーを下ろす感覚で長ランのボタンを外すと、返す刀で……。


 ──パパパパパァーンッ!


 ワイシャツのボタンを開放して、セクシーフェロモン出血大サービス。ムワッと広がる甘い香りに、弱いフェロモンスターはキャパオーバーでノックアウトしてしまう。

 しかし、ワイバーンやオーガぐらいのクラスのフェロモンスターには効かず。むしろ、その溢れんばかりの魅力に一斉にジョージに目をつけてしまった。

 

「ジョージくん、一気に決めにゃいと押し寄せてくるよ!

 ──プロミネンスドライバー!!」


 イリーナがマジパ(マジックパイルドライバー)でフェロモンスターをぶっ倒す。

 こうなればもうスニークも無意味であり、手がつけられなくなる前にリズンタワーを破壊するだけだ。


「分かってる。

 ウィジーも準備はいいな?」


 フェロモンを拳に集中させていく。


「ええ。カレンから預かった魔導器にもう魔力を充填していますわ。

 ……そのせいでまた魔力が残り1割ぐらいになってしまいましたが」


 ステッキ型の魔導器は魔力が充填されて鳴動している。


「ウィステリアさんの魔力1割か。

 それだけあれば十分じゃな。

 ──ヒュドラショット!」


 エリンがしれっと新技を放つと、無数に分裂する魔法の矢がフェロモンスターの前衛を消しとばす。


「魅力開放!!

 ──ビューティフルスカイ!」


 瞬間、ジョージはフェロモンをまとって跳躍。……いや、ジョージは飛んでいた。

 以前マーシャがやっていたように、それどころかブラッシュアップして更なる空への歓迎を受けていたのだ。

 

 自由を手に入れたジョージはリズンタワーに沿ってどんどん高度を増していく。



「グォオオオ!!?」


 フェドロタイタンがジョージたちに気が付くが、時すでに遅し。

 ジョージは塔の頂上に達し、拳は太陽の如く眩く輝いていた。


「──シャイニングフェロモンオブハレムンティア!!!!」



 ──ゴゴゴゴゴゴ……!!


 閃光が一瞬で駆け抜けたかと思うと、地響きが町全域に広がる。そして──



 ──ゴッブッガァァアアアアン!!!!


 大爆発とともにリズンタワーがチリも残さず消滅してしまうのだった。


「……グォガアア!!?!」


 もちろんの如く、フェドロタイタンや強いフェロモンスター、そして離れた所にいたフェロモンスターは倒しきれない。しかし、今はこれで良い。


()()したのじゃ!!」


 そう、リズンタワーを破壊することで出現する()()こそが今の目的。


「これが……」


 神聖な光で周囲を照らす真球。

 神話の時代、女神リーズンがこの町を守るために己の力を宿した宝玉を人々に授けたと言う。それこそが──


「……"秩序の聖球"ですわ!」


 手のひらサイズのその石ひとつで、今までこの町の機能を全て担っていたのだ。

 ウィステリアはその膨大なエネルギーを持った真球を魔導器にかざす。


 ──キィイイイイイイイインッ!!


 すると、秩序の聖球は魔導器に吸収され、世界最強の魔法触媒、無垢なる純白の杖『聖杖リズン』に進化したのだった。


 


次回は明日です。2章ももう少しとなりました。


3章構成なので、クライマックスも近いです。今後ともよろしくお願いします

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