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9話 リーンと異世界の言葉

 召喚士の使える魔法は、召喚だけではない。

 むしろ召喚を行う機会はごくわずかで、本来は使役と使役獣の強化などがその本領を発揮するところだ。

 そういうことだから、イーリスから持ち掛けられた提案を聞いてリーンは頭を悩ませていた。


「言語の強化、ねえ。」


 うーん、と召還紋に触れながら自身の魔力に意識を向ける。

 召還の際には多くの魔力を削られてしまったが、まだ余力がある。

 そのうえで、単純に強化や使役などは行えるだろうとも思う。

 しかし、言語の獲得や強化などはどのように力を加えれば良いのか、まったく想像できないのだった。


「僕は召喚士じゃないから、そういう感覚の話はわからないんだけど。」


 と紅茶を一口飲み下した後に、イーリスが言葉を発する。


「言葉を伝えることはできるんだし、それを強く繋げることは出来るんじゃないかな。」


 あくまで想像だけど。と言いながら、また紅茶に口をつける。


「うーん、聞いたことないから……。自信ない、かも。」


 ちらりと向かい側に座る黒い少年に目をやる。

 おそらく異世界から来た、闇の魔力で召喚されたもの。

 貴族寮の応接間の一室を貸し切り、リーン、イーリス、アイシャとその少年はこの部屋に来て座りながら今後の相談をしていた。 といっても、リーンとイーリスの二人での話し合いだったが。

 言葉を伝えるイメージは、魔力紋を通じて魔力と一緒に意思を伝えていた。

 使役獣や意思のない精霊を呼び出したときに、こちらの要望を伝えるための手段だ。


「なんでも最初はやってみるものだよ。難しかったら僕も一緒に考えるから、まずはリーンが思うままにやってみて。」


 そういって、イーリスは付き合いの長いリーンでしかわからない程度に微笑んだ。

 それを見ながらよしっと気合を入れ、召喚紋のある右腕と、向かいに座る少年に強く意識を向け、魔力を走らせながら自分のイメージを強く持っていく。


 私は、この人と話をしたい。

 この人から話を聞きたい。


 固定観念に捉われなければ、リーンの思いはすんなりと形になっていた。

 ああそうだ、難しい魔法の話じゃない。

 ただ、話がしたいだけなんだ。


 召還紋が熱を帯び、魔力が今までにないほどに昂っている。

 向かいの席の少年が、びっくりしたように一瞬自分の腕を押さえ、慌てて黒い衣服の袖を捲った。

 そこにはリーンの召還紋と同じようなものが浮かんでいたので、間違いなくリーンがこの少年を呼び出した。その証だ。


 召還の時とは比べ物にならないほどの僅かな魔力の消費でもって、どうやらそのイメージは成った。

 その感覚がリーンにはあったし、少年も目をぱちぱちと瞬きしながらそう感じただろうと思う。

 不思議な感覚だが、召喚士の共感覚がそれを感じ取って、ふうとため息を一つ漏らしてからリーンは少年に声を掛ける。

 リーンにはその言葉が通じると確信があった。


「リーン・パイシースよ。言葉は……わかるようになった、よね?」


 ただし、それは少し不安げに発された。

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