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14話 異世界の食事と芽生えた感情 ※一人称

 お昼はサンドイッチだった。全然異世界っていうか、慣れ親しんだ見た目のものだった。


「へえ、そっちにもバケットサンドはあるんだ。」

「こっちだとサンドイッチって名前だけどな。でもバケットサンドって意味はすげーわかる。全然通じる。」


 黄色い卵が挟んであるもの、レタスみたいな葉ものとハムが挟んでいるもの、ベーコンとかトマトみたいなのが挟んであるもの。

 色とりどりに分かれているそれらは庶民的な食べ物のはずなのにどこか豪華で、バスケットの中には他にも果物みたいなものが入っていたからデザートまで付いていることに関心する。

 勧められるままひとつ卵サンドを手に取り、かぶりついてみる。


 うん、想像通りの味。

 いや、コンビニとかに比べたらパンもふわふわだし卵もはるかに旨いけど、予想していた異世界の味覚って感じではなく安心した。


「すこし魔力を使ったみたいだけど、送還できるくらい魔力が溜まるのは遅くなりそう?」

「うん。多分夜中か、明日の朝くらいかな。」


 イーリスがリーンに尋ね、リーンはちびちびとベーコンレタスサンドを啄みながら答える。

 食べながらは話さないし、口元を押さえながら言葉を返すリーンに俺の食べ方とは全然違う上品さを感じる。

 元々、怪我を治せるかもしれないという話のときに帰るのが遅くなるとは聞いていた。今はそんなことよりも体を充足させる満足感とリーンへの感謝でいっぱいだった。

 なんとか恩返ししたいのだが、このまま帰って良いんだろうか。

 俺がうーん、と頭を悩ませていると、そんな様子をみたイーリスが声を掛けてきた。


「シンはどうやら、リーンに恩返しがしたいみたいだよ。」


 内面を言い当てられた。あれだけ嬉しそうにしていたんだから、考えてみれば当たり前のことだった。


「ああ。俺、なにもできないけどさ。リーンのために何かしたいんだ。俺にできることってないかな。」


 リーンはきょとんとして首をかしげると、そのまま不思議そうに尋ねてきた。


「シンは合意していないのに召喚に応じてしまったのだし、これくらいのことは当たり前なのだわ。むしろ私が力になれて良かったと感じているのに、これ以上なにかもらうのも……。」

「いや、リーンは俺にとっての恩人なんだ。俺頭良くないから、どういう言葉を尽くせば良いのかわからなけどさ。異世界に来たのだって、状況的には助かったし何なら嬉しいんだぜ! 故障していた膝も治って、なんだかわかんないけど超パワーも貰って!」


 異世界転生ものにありがちなチート能力は俺も憧れがある。

 それを与えてくれるのは創作だと神様が多いんだが、俺の女神はすごく遠慮がちで謙虚な女の子だった。


「なんだっていいんだ、俺がリーンの力になりたい。」


 力強く右こぶしを握る。

 リーンは困ったようにイーリスのほうを見たが、イーリスはリーンを見つめ返す。


「リーンはどうしたい?」


 ごくごく僅かに微笑みを浮かべているように見える。


「ええと……。それなら、困ったときにまた私の召還に応じてくれる? それと、偶にお話もしたい、かも。」


 本当にどこまでも謙虚だ。人間が出来すぎている。


「いつでも呼んでくれ! なんの用事がなくても、俺リーンのために勉強とかして、いろんな話できるようになるよ! そうだ、向こうのものとかって一緒に持ってこれないのかな。服とかは一緒だしなにか面白いもの、ゲームとか! あ、電気がないか。携帯ゲーム機とかどうだろ?」


 ひとりで話をつづけながら、そうだ、それが良い! と思う。

 俺がこの人に呼ばれたのが運命なのだとしたら、この人のためになることを一生懸命やろう。

 もし命が危ないなんてことになったら、俺が命がけで守ろう。

 そんなことを思い描き、まだなにも知らないこの異世界で起こる、どんなことにも立ち向かえる気がしてきている。

 リーンはそんな俺の様子を見てふわりと笑みを浮かべ、それじゃあ。と笑う。


「よろしくね、私の召還に答えてくれたシン。」

「もちろんだ、俺の召喚士!」


 また右腕の入れ墨が熱を持って俺に力を分けてくれたように感じる。

 心地の良い全能感と、俺の運命を変えたリーンに、自覚した嬉し恥ずかし感情を抱きながら、俺は力強く答えた。

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