昇音
音が鳴り始める
円弧を描くように並び
歌い始める人々
今溶けて混ざる
『私の声』
朗々と響くそれは
連鎖し膨らみゆく
流転し速さを変えても
リズムは止まることもなく
螺旋のように渦を巻き
寄り集まり時に離れ
描き広がるもの
ゆっくり流れていく中で
息遣いまでも重なり
やがて空に昇る音
求める響きの中
巡らせる音の波
胸にあるこの想い
皆へ遠くへ届くよう
巻き上げどこまでも高く
仄かな光が今は
片鱗までも煌めき
ふわり揺蕩うそれすらも
光の渦に巻かれゆき
果てまで照らす灯火となり
昇り広がる先
音色に導かれて
温もりを纏いながら
虹色に輝き
鳴り響く幾多の声
届いているからと
手を伸ばすように
紡ぐ言葉を辿り
近付くその心は
確かにここにあり
傍に感じるそれは
急かすこともなく
全てを纏め上げ
静けささえも孕んで
更に上へと昇りゆく
煌々と降り注ぐ光と
軽快に瞬きあうように
雲居に至るまで
共鳴しながら進みゆき
彼方へと消えゆく音
帯を引くような
演奏の残響と
映る光はもうなくとも
今も瞼に輝きが
後は僅かに残るのみ
お読みいただきありがとうございます。
ひとつの縛りに従い描いた作品となります。
この作品を元に書いたお話。
『空に昇る音は君に繋がる唄だから』
同時刻で完結しております。
内容は全く違って、ちょっと不思議な恋物語となっております。
下にリンクがありますので、よろしければ覗いてみてくださいね。