日本國 4、
久保首相、遠藤大臣、城山風軍大将、稲川地軍大将。四人を前に、林田は自身の世界のこと、アークとして四石を追い求めた過去、そしてこの世界へと辿り着いた経緯を詳細に語った。説明の中で、四石という存在に対し、四人の間に確かな関心が宿っているのを、林田は敏感に感じ取っていた。
一通りの説明を終え、林田は言葉を付け加えた。「最後に、私からもお尋ねしたいことがあります」
「何かね?」久保首相の声は、穏やかに答えた。
「私たちの目的は、私たちの世界へ酸素を転送することです。それは、この世界において可能でしょうか?もし、何らかの対価が必要であるならば、それは一体何でしょうか?」林田は、相手の反応を注意深く観察しながら問いかけた。
久保首相は、わずかに顎に手を当て、思案する様子を見せた。「それについては、少々時間をいただけないだろうか。検討した上で、改めて回答させていただきたい」
林田は、部屋を用意された。中村は、別の部屋にいるとのことだった。
林田が首相ら四人と会談を行っているその頃、中村は通された部屋の中で、 聴覚を研ぎ澄ませ、会話の内容を聞き取ろうとしていた。しかし、 部屋をいくつも隔てしっかりした作りの壁もあり聞こえない。
業を煮やした中村は、窓のそばへと歩み寄り、 窓を開けた。目の前には、背の高い木々が絶え間ない列をなし、深い林を形成しており、その奥を見通すことはできなかった。窓には頑丈な鉄格子が取り付けられており、 物理的に外へ出ることは不可能だった。ドアの外には、気配からして、厳重に警備する見張りが控えているだろう。
(容易に脱出することは難しいか。しかし、万が一の事態になれば、次元転送装置を使って元の世界へ戻るまでだ。それにしても、彼らはこの装置を預かるとは言わなかったな。少なくとも、 直接的な害はないと判断したということか)
林田が与えられた部屋も、中村の部屋と驚くほど似たような構造をしていた。一階に位置し、窓には鉄格子、そしてドアの外には、まるで無言の圧力をかけるように、見張りの気配が感じられる。幸いなことに、小型の次元転送装置は今も手元にあった。
(さて、彼らの返答はいったいどうなるか。返答の内容次第では、この世界への移住の可能性についても尋ねてみるべきかもしれない。それにしても、中村は一体どこへ連れて行かれたのだろうか……)林田は、そんなことを考えながら、部屋の床や壁を詳細に調べ始めた。
(床材は、 強く接着されており、剥がすことは難しいだろう。壁も、見た目以上に頑丈に作られている。天井は……)
林田は、視線を 上へと向けた。
天井は並べられた板材で構成されていた。
(二階との間には、空間があるはずだ。もし、そこへ侵入することができれば……)
その時、林田は、一部分だけ他の天井板とは異なるデザインの板があることに気づいた。(あれは……点検口に違いない)
林田はその点検口と思われる天井板を押し上げてみようとジャンプしかけた、まさにその瞬間、ドアを控えめに叩く音が、静かな部屋に響き渡った。