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暗殺 2、

 発砲音が響いたと同時に、林田は一直線に三階建ての建物へと走り出した。あっという間に建物の前に到達すると、そのまま三階の窓めがけて跳躍し、窓枠に手をかけて中を覗き込んだ。そこには、二人の人物がボルトアクション方式のライフルを手に構えていた。


 林田が三階建ての建物の前で跳躍した、その瞬間。林田の後方、地面が横七メートル、高さ四メートル、厚さ五十センチメートルほどの盛り上がった土壁となり、林田以外の者が建物に近づくのを阻んだ。


「ちぃ、間に合わなかったか!」

 そう呟いたのは、土壁を出現させた地の一族で、反政府側についた男だ。誰も建物に近づかせないように土壁を出現させたのだが、林田の速さにはついていけなかった。


 その間、渡辺少佐以下七人の兵士たちは、混乱する広場で事態に対処すべく集合していた。一般聴衆はパニックに陥り右往左往しており、警官たちが呼子笛を吹き鳴らし、広場の外へと誘導している。


「石原少尉!」

 渡辺少佐が叫ぶと、地軍の石原少尉は手をかざし、土壁を元の土に戻そうとした。しかし、高さは二メートルほどにまで下がったものの、力が拮抗し、土壁は完全に消え去らなかった。


 林田は、部屋の奥の方に二名の警官が倒れているのを見た。そして、二名の狙撃手が照準をこちらに合わせるよりも早く、部屋に飛び込んだ。林田の動きに、彼らは全くついてこられない。林田は二名から銃を奪い取り、その銃で二人を殴り倒した。さらに、銃で二人の両足首を打ち抜き動けなくした後、窓から渡辺少佐を大声で呼び、奪った銃を掲げた後、窓から渡辺少佐めがけて投げた。


 下では、土壁がこちらの建物への侵入を塞いでいた。高さは二メートルほどか。一人の人物に三人の警官が群がると、土壁は跡形もなく消え去った。しかし、中村が走っていったスタッフのいる建物には火が放たれ、炎が燃え上がり始めていた。反政府側の火の一族が行ったものに違いない。


「富永大尉!稲葉大尉!」

 渡辺少佐が叫んだと同時に、水軍の富永大尉は手から水を放水し始め、月光軍の稲葉大尉は何かを呟き始めた。


 火災の範囲は徐々に広がり、富永大尉の放水だけでは消火できない状況だった。しかし、その火災の上空に、黒い雨雲が急速に発達し始めた。やがて雨粒が落ち始めると、それはみるみるうちに大きくなり、激しい勢いで大量に降り注いだ。稲葉大尉の神術が発動したのだ。


 林田は雨が降り始める前に、窓から屋根の上に登ると、屋根伝いに、中村と首相が入った建物、その広場側の裏にある出入り口に向かっていた。


 渡辺少佐は石原少尉、富永大尉、稲葉大尉をその場に残し、残り四人の兵士とともに、三階建ての建物とは反対方向の建物に向かって走り、建物を抜けて首相を追いかけるため迂回をしていた。


 林田は、燃え盛る炎を背に、屋根から飛び降りて駆け出した。その先には、反政府側についた風の一族の二人と、首相をかばいながら懸命に戦う中村の姿があった。


 







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