シックスセンス
街頭演説まで、あと七日となった。
林田と中村の軟禁状態は緩和され、一定のエリア内であれば自由に往来ができるようになっていた。その日の朝、林田は中村の部屋を訪れていた。
林田は小声で話した。
「私たち強化人間は、シックスセンスの能力も持っていると言われている。首相警護にあたって、それぞれの能力を共有しておきたい。私は探知能力が優れている。探すものが生物であれ物であれ、動き回っているうちに見つけてしまう。まあ、時間がかかることもあるから、優秀とは言えないが。お前はどうだ?」
「危機回避能力、あるいは危険探知能力と言ったらいいか分かりませんが、危険なことが起こるかもしれないと、なぜか分かってしまうんです」
中村も小声で答えた。
シックスセンスのことは、まだこの世界の人間には話していない。強化人間の能力すべてを知られてしまうのは避けたかったのだ。
林田と中村は、想定される暗殺方法と対処法について話し合っていたが、この世界の詳細が分からないため行き詰まっていた。その時、控えめなノックがドアを叩いた。
ドアを開けると、渡辺少佐以下、いつもの七人の兵士が立っていた。
「お話ししたいことがあります。この部屋では全員入ると狭いので、移動していただけませんか?」
渡辺少佐がそう言うと、林田たちは地理や歴史などを学習した部屋へと案内された。
学習室に着くと、渡辺少佐以下七人の兵士は林田と中村の前に整列し、渡辺少佐が話し始めた。
「どうぞ、おかけください」
林田と中村が腰かけると、渡辺少佐は続けて言った。
「街頭演説まで、あと七日となりました。今回の街頭演説では、首相が壇上に立つのは四回あります。首相官邸から演説先への往復も含め、警護が必要となります。警備は警察が行いますので、私たち軍は表立って警護ができません。私服で行います。貴方たちも同様に、表立って警護することはできません。私服を用意しますので、当日は着替えてください」
「分かりました」
と、林田が答えた。
「今日は、想定される暗殺方法を一緒に検討したいと思っています」
「それは助かります。私たちから見ると、この国には特殊な能力を持つ人がいるようですから」
林田と中村は、渡辺少佐の話に真剣に耳を傾けた。




