異次元へ
神山明衣が砂漠で特訓していたころ、林田未結は焦燥感に見舞われていた。
特殊捜査室に協力し、次元転送装置を引き渡し、自分は元の次元に戻ってきていた。
レジスタンスの仲間と共に、次元転送装置を駆使して酸素を取り込むため、装置を送らなければならないが、酸素を吸収する側の座標が掴めなくなったのだ。
マシンクラスの者たちに、見つからないよう秘密裏に行っているので、そちらの対応も大変である。
座標を探し始めて4日経った。
とにかく目標に近い座標に自分を転送して、そこの環境を確認し、問題無ければ酸素吸収先としての新たな地にしようとレジスタンスの仲間に提案し、受け入れられた。
転送人員は1名ではなく、多数意見の2名となった。
林田未結と中村芳樹の2名だ。もちろん中村も強化人間である。
問題は、転送先が強化人間でも生存可能かも不明だ。したがって、観測機器を事前に送り、回収分析後、生存可能の確率が高いと判断したら実行する事とし、転送先が見つかった。
薄暗いレジスタンスの隠れ家の一室で、林田と中村はテーブルを挟み向かい合って、腰掛けていた。
中村は20代前半、細面で痩せ型、身長は175cm位か。
「よく志願してくれたな」と林田は中村に話しかけた。
「このままだと、レジスタンスは全滅ですから」
レジスタンスの階級では、中村より林田が上位にあたる。
「出発前に打ち合わせが必要なので、来てもらった。転送先で何が起こるかわからないが、想定できるものは対処方法を決めておきたい」と林田。
その後、意見を出し合いながら、対処方法を決めていった。目標はあくまで早期の酸素吸収先の確保だ。
打ち合わせが終わった二人はそれぞれ出発準備を整え、次元転送装置の前に来た。
見送る、レジスタンスの面々。レジスタンスのリーダーと林田、中村の握手。
「後は頼みました」と林田。
「分かった」とリーダーが頷く。
林田と中村は無言で転送されるのを待った。
ヒューンという機械音、数秒後には見送りに来たレジスタンスの前から姿を消した。