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学習

 林田と中村は、この世界の理解を深めるため、まず地理の学習から始まった。


 教室には、教える役の人物が一人、そして監視役と思われる七人の兵士が付き添っていた。林田と中村は、依然として完全に自由な立場ではないことを理解した。


 彼らが学んだ内容を簡潔にまとめると、以下の通りである。


 地理の授業では、主に詳細な世界地図を基に、各国家の領土、領海、そしてそれらが過去からどのように変遷してきたかが教えられた。現在の日本國は、北は千島列島から南は南西諸島までである。


 次に歴史。この世界の日本國では、長い封建制度の時代が続き、現在の立憲君主制へと移行したのは、1918年とのことだった。驚くべきことに、ペリーの来航も、日露戦争やシベリア出兵も存在しなかった。また、第一次世界大戦、第二次世界大戦はなく、代わりに第一次欧州中東戦争と第二次欧州中東戦争という二つの大きな戦乱があり、この日本國はどちらにも参戦していなかったという。


 政治体制は、内閣を中心に行われている。立法は国会、司法は裁判所と、一応三権分立の形を取っている。特筆すべきは、主上(君主)が特殊な能力を持たれており、重要な決定に際して相談を行うことがあるという点だった。しかし、その能力の詳細や、主上が持つ特別な権限については教えてもらえなかった。


 経済は、自由な経済活動を基本としているものの、巨大資本による独占に対しては規制があり、同時に、貧富の差が過度に拡大しないよう、所得再分配が機能しているとのことだった。貿易に関しては、国内産業が不利益を被らないよう慎重な貿易政策が取られており、金銀などの貴金属は、可能な限り海外への流出を防ぐ方針であるという。


 国防と日本國の具体的な戦力については、「国家機密であり、誠に申し訳ございませんが、お教えすることはできません」という回答だった。これらの情報を得るためには、彼らの信用を勝ち取るしかない、ということだ。


 国民の生活状況については、実際に街の様子を見てもらうのが一番理解が早いだろう、という判断から、後で案内してもらうことになった。


 学習を終えた林田と中村は、部屋に戻って着替えさせられた。渡されたのは、この世界 でありふれたデザインの服だった。理由としては、見慣れない服装で街中を歩けば噂が広がり、人々の間に不要な混乱を引き起こす可能性があるため、それを避けたいためとのことだった。


 林田は、 渡された衣装に袖を通しながら、どうすれば彼らの信用を得られるかを深く考えていた。(何か、重大な事態が発生し、体を張ってそれを解決することができれば…)


 着替えを終えた林田は、中村と合流した。監視役の七人の兵士たちも私服に着替えており、そして、私服姿の渡辺少佐が現れた。


「それでは、ご案内いたします」

と、渡辺少佐が先頭に立ち、林田、中村、そして七人の兵士がその後ろに続いた。


 林田たちは建物を出た。広大な敷地内には、 建物が数棟建っており、周囲は林で囲まれていた。道の両側や庭には、手入れの行き届いた草花や木々が植えられている。


 林の間の小道を抜けると塀が見え、重厚な門が見えてきた。林の周りには塀な巡らされているようだ。門番が敬礼をし、門を開くと、その先には、なだらかなな下り坂が続いていた。


 道の両側には木々が植えられ、まるで林のようになっている。道は何度も曲がりくねっており、この先に街が広がっているとは想像しにくい。しかし、しばらく歩くと視界が開け、街並みが彼らの目に飛び込んできた

  


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