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闘い 3、

 渡辺少佐は、満足そうに拍手を送った。他の兵士たちも、それに続くように手を叩いた。


「素晴らしい。林田さんには、ぜひ魔法使いの相手をしてもらいたくなりました」

と、渡辺少佐は目を輝かせながら言った。


「魔法使いが相手ですか。今までそのような経験はありません」

と、林田は慎重に答えた。


「やはり、難しいでしょうか」


「予備知識が全くない状態で、危険な橋を渡るような真似はしたくありません」


「それはもっともですね。では、先ほどの相手ともう一人。つまり、二人を相手にした接近戦ではいかがでしょう?」


「それならば、やりましょう」

と、林田は答えた。


「武器はどうされますか?」


 林田は、隣に立つ中村から無言で太刀を受け取ると、「これで」と渡辺少佐に示した。


 準備が整い、新たな対戦相手の二人が競技場へと姿を現した。


 一人は、先ほど中村と戦った白人男性だ。もう一人は、日本人の顔立ちをしている。日本人だろうか?いや、もしかすると欧羅巴に渡った三世かもしれない。その手にしている武器は、紛れもなく忍刀だった。何世代も前から大切に受け継がれてきたものだろうか。


 三人は、競技場の中心地点で再び対峙した。


 先ほどの戦いとは異なり、白人男性はむやみに突進しようとはしなかった。中村の動きを目の当たりにしたことで、警戒心を抱いたのだろう。


 林田と二人の相手は、5メートルほどの距離を空けて対峙した。相手の二人は、横に2メートルほどの間隔を置いている。向かって右手の白人男性は、サーベルの切っ先を地面に向け、左手の日系人らしき者は、忍刀を鞘から静かに抜き放っていた。


 次の瞬間、林田が動いた。そのあまりの速さに、二人の目は全く追いつかなかった。


 前進し、日系人らしき者の持つ忍刀を払い、 左掌をその胸に当てると、日系人らしき人物の体は、 10メートルほど吹き飛ばされ、地面に転がった。すかさず林田は右手の白人男性の胴に、太刀の峰を容赦なく叩き込んだ。鈍い音と共に、白人男性の顔が激痛に歪む。おそらく、肋骨を数本折ったのだろう。その隙を突き、林田は背後から男性の足首を豪快に払った。後頭部を地面に強打した白人男性は、意識が朦朧とし戦闘能力を失った。林田は、 白人男性の手から滑り落ちたサーベルを素早く拾い上げ、吹き飛ばされた日系人らしき人物に向かって猛然とダッシュした。


 掌で飛ばされた日系人らしき人物は、 転倒していたものの、 素早く起き上がり、臨戦態勢で林田を迎え撃とうとしていた。しかし、林田の信じられないほどのスピードについていくことができず、太刀で忍刀を払われた瞬間、 凄まじい衝撃が走り、忍刀を手放してしまった。そして、次の瞬間サーベルの切っ先が 胸元に突きつけられ、彼は敗北を認めた。


 意識が朦朧とし、戦える状態ではない白人男性は、戦闘不能と判定された。


 林田はくるりと向きを変え、拍手を送っている渡辺少佐や兵士たちのいる方へと歩いて行った。


「見事です。中村さんも貴方も、相手を殺しませんでしたね」

と、渡辺少佐はなぜか知りたそうに尋ねた。


「これは、殺し合いとは捉えていません。相手に負けを認めさせるか、戦闘不能にすれば目的は達成されると考えましたから」

と、林田は一度中村の方を振り返ってから答えた。


「なるほど。もし、戦場で相まみえることとなったときは、どうしますか?」


「その時は、殺す事になるでしょう」

と、林田はきっぱりと答えた。


「それでは、約束通り、地理、歴史、政治、経済、国防、そして国民の生活状況、私たちの戦力についてお伝えしたいと思います」

と、渡辺少佐はそう言うと、移動を促した。


 移動しながら、林田は渡辺少佐に追加で、敵国の戦力分析についても教えてほしいと申し出た。


 渡辺少佐からは、上官に確認した後、改めて返事をするという回答をもらった。





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