日本國 8、
朝日が部屋に差し込んできた。
林田は軽くストレッチを行い、深呼吸をした。廊下を近づいてくる足音が聞こえる。(昨晩の食事を運んできた二人だろうか)そう思った時、ドアがノックされた。
ドアを開けると、予想通り、昨晩夕食を運んできた風軍の兵士二人が立っていた。彼らは手慣れた様子で朝食をテーブルに並べ、昨夕と同じように毒味を済ませると、「どうぞ」と静かに言い、部屋から退出していった。
朝食を終え、三十分ほど経った頃、再びドアがノックされた。
今度入ってきたのも、やはり食事を運んできたあの二人だった。彼らは手際よく食器を片付けると、その後ろから、さらに二人の人影が部屋に入ってきた。
今度の二人は、昨日の風軍の兵士とは異なる制服を身につけていた。それは、茶色を基調とした、地軍のものだった。後から入ってきた女性兵士の一人が、事務的な口調で言った。
「これから移動していただきます。上官がお待ちです」
林田は、「承知した」と短く答えた。
案内された部屋は広く、すでに七人の人物が待っていた。火軍、風軍、地軍の制服を着た者がそれぞれ一人ずつ。そして、残りの四人の制服は、林田にとって全く見慣れないものだった。淡い水色、鮮やかな黄色、明るい白色、そして、眩いばかりの金色。
その部屋に、さらに三人入ってきた。
二人の風軍兵士に挟まれるようにして部屋に入ってきたのは、昨日別室に案内された中村だった。
林田と中村は、お互いの無事な姿を認めると、 安堵の表情を浮かべた。
「元気そうで良かった」
と、林田は短く声をかけた。
最後にもう一人入ってきた。その人物は、 明るい白色の制服を着ていた。その男は、「私は、陽光軍所属少佐の渡辺と申します。今日から、私たちが貴方たちの担当となります」と言うと、林田と中村は頷いた。
部屋の中は、まるで学校の教室のようだった。前に黒板があり、整然と机と椅子が並べられている。
渡辺少佐は、丁寧な口調で話し始めた。
「貴方たちは、この世界の地理、歴史、政治、経済、国防、国民の生活状況、そして、私たちの戦闘能力について知りたいと伺っております」
「その通りです」
と、林田は答えた。
「これから、それぞれの分野について簡単に説明させていただきたいと思いますが、その前に、貴方たちの戦闘能力を私たちに示していただきたい」
「どのようにして示すのですか?」
と、林田は率直に尋ねた。
少しの間、沈黙がその場を包んだ後、渡辺少佐は答えた。
「我々が用意した者と、それぞれ戦っていただきます」
林田は、 横に立っている中村の方を向いた。
中村は、力強く答えた。
「構いませんよ。戦闘訓練は積んでいますから」
(なるほど、我々の能力を実際に示さなければ、口頭での説明だけでは納得しないということか)林田はそう理解し、渡辺少佐に問いかけた。
「わかりました。どこで行いますか?」
「それでは、ご案内いたします。こちらへ」
と、渡辺少佐は歩く方向を指し示し、歩き始めた。
林田と中村は、並んでその後ろに続いた。そして、 七人の兵士たちが、 その後を追った。