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第2話 地獄の訓練

砲弾の着弾音と共に、ブラックは悪夢から目を覚ました。

思考が明瞭になるにつれてブラックは、あの悪夢が、既に終わった記憶の中の出来事であることをようやく認識できるようになった。そして同時に認識する。あの悪夢は過ぎ去ったが、今置かれている状況もまた、それに負けず劣らずの危機的状況である事を。ブラックは大きく息を吸い込んで脳をフル回転させると、泥にまみれた野戦服に包まれたその体を再び起き上がらせる。


その視界前方の彼方に、英国陸軍が誇る巡行戦車、Mk.Ⅵ クルセーダーの姿を捉えた。クルセーダーは車体上面に搭載された3インチ榴弾砲を仰角に傾けつつ、ブラックがいる方向に猛スピードで迫り来つつある。ここら一帯は遮蔽物の一つすらない平原であるため、砲とブラックの間に砲弾を遮るものは何もない。


「大佐、アナタはやはり狂っている。」

ブラックは一人そうつぶやいて冷笑を浮かべた。そして次の瞬間には地面を蹴り、その場から跡形もなく消失している。間髪入れずその直後、放たれた榴弾がブラックがいた位置に着弾し、土煙を巻き上げる。

ブラックが再び姿を現したのは、砲のはるか射程圏外であった。


英国秘密情報部(M16)長官、アーネスト・カニンガム大佐。ブラックが『狂っている。』と評したこの男こそ、エヴァンズ大尉に収容所への潜入を命じ、ブラックを救出するための諸工作を行わせた張本人である。収容所から脱出してMI6本部までたどり付いた直後、エヴァンズ大尉が用いた薬の影響により未だ自力での歩行がままならないブラックは、大尉の肩を借りて長官室まで出向いた。

カニンガム大佐は、ブラックに労いの言葉をかけるでもなく、開口一番次のように言い放った。

「 貴公の『力』を、英国のために用いるつもりはあるか? 」

ブラックは虚ろな表情を浮かべたまま、それに対しての答えを返さなかった。大佐は気にした様子もなく、続けざまブラックに問いかけた。

「 貴公の『力』を、ヨハン・シュヴァルツ打倒のために用いるつもりはあるか? 」

その人名を聞いたブラックの意識が、瞬時に覚醒した。今度は聞き間違えようのない明瞭な発音で、

『yes』の答えを返す。カニンガム大佐は、初めて笑みらしきものを浮かべて鷹揚に頷いた。

実によろしい。(Very well) ヨハン・シュヴァルツは我が英国にとって、重大な脅威となる存在である。 貴公があの男の打倒を真に望むのであれば、我々はそれを全面的にサポートしよう。 先ずは貴公の持つ『力』を、極限まで鍛え上げる必要がある。ここから先は、地獄の日々を送る事を覚悟せよ。 」


大佐のその言葉には、一切の誇張や偽りがなかった。『力』の発動メカニズムを理解するための座学に加えて、様々な場面において『力』を効率的に発動できるようになるための実戦演習。カニンガム大佐がブラックに課した訓練カリキュラムは、当時設立されたばかりであったコマンド部隊ブリティッシュ・コマンドスのそれをはるかに凌駕するほどに過酷なものであり、軍人でもないブラックには、本来耐えられるはずがなかった。訓練中、命の危険に晒された事も一度や二度ではない。しかしブラックは、弱音や不平不満の言葉を一切漏らすことなく、強靭な忍耐力と、片鱗を見せつつあった天性の才能をもってして訓練を乗り切って来た。今のブラックにとっての関心事は、カニンガム大佐の言葉の通り、自分自身の『力』を極限まで鍛え上げる事以外に何もなかったのである。かつては『力』を持つことそのものを忌み嫌い、頑なにその使用を拒み続けてきた事を考えれば、その態度は180度反転している。


ヨハン・シュヴァルツ。

運命のあの日、恐るべき念動力(サイコキネシス)をもって数多の同胞達を殺戮し、ブラックに決して忘れる事の出来ぬ悪夢の記憶を植え付けたあの金髪のSS将校。あの悪魔だけは何が何でも、自身の手で抹殺する。念動力(サイコキネシス)によって首をもがれ、全身の骨を砕かれていく同胞達を尻目にただ一人脱出して生き残ったブラックにとって、それを避けて通る事は自身の良心が許さなかったのである。そうして猛訓練を重ね、収容所脱出時とは別人のように自身の『力』を使いこなす事が出来るようになったブラックに対して、カニンガム大佐は『最終試験』と称し、次のように言い放った。

「 貴公の能力で、我が軍の戦車を止めて見せよ。 なおこれは訓練であるが、戦車兵には、実戦と一切変わりなく実弾を使用するように命じてある。 早い話が、貴公を殺せと命令してあるという事だ。 」

そしてこの『訓練』にあたってブラックに認められた装備は、身に着ける野戦服の他、対戦車用の粘着手榴弾1つのみであった。しかも手榴弾については、爆薬であるニトログリセリンの代わりにペイント弾が内蔵された訓練用のものであると言う。


流石のブラックも、これには耳を疑った。

手持ちの武器が手榴弾1個のみというのは、いかにも心もとない。

そして何よりも、手榴弾は訓練用のものであるにも関わらず戦車の側は実弾を使用すると言うのは理不尽極まる。弱点である後面、上面、又は底面部にペイントが付着した後、通常起爆に必要と想定される時間が経過した段階で、戦車は撃破されたものとみなされ行動を停止するとの事だが、であるならば、戦車の側も訓練用の模擬弾を用いれば事足りるではないか。訓練が始まって初めての抗議をしたブラックに対して、カニンガム大佐は表情一つ変えずに言い放った。

「 どれほど絶望的に思える状況であっても、貴公の『力』と創意工夫を持って乗り越えて見せよ。予定調和の訓練を実施した所で、あの男に勝てるようになると思うか!?」


その言葉を聞いてブラックは押し黙った。確かに大佐の言うとおりだ。自分が復讐の対象としているのは、人外の化け物なのである。奴の恐ろしさを考えれば、たかが自分を本気で殺しに来る戦車1台くらい何だというのだ。復讐心と使命感によりある一面既に狂っているブラックは、客観的に見てあらゆる点で問題の多すぎるこの『狂った訓練』を受け入れた。


訓練が始まってからのブラックは、有体に言って防戦一方であった。視覚から得た情報を元にイメージを膨らませ、周囲一帯の『地図』を脳内に構築する。そしてその『地図情報』の中で、敵戦車の主砲の射程内に自分が捕らえられる直前に瞬間移動し、射程外へと逃れる。こうする事で、戦車の砲弾を避け続ける事に成功しているのであるが、同時に、戦車には一切の手出しが出来ないでいる。瞬間移動(テレポテーション)能力を用いて戦車の背面に回り込むことが出来れば、その後部に決死の一撃を叩き込む事は出来るであろう。しかしその場にとどまっていては、次の瞬間には、展望塔(キューポラ)から頭を出した兵員により射殺されてしまう可能性が高い。また手榴弾が起爆した後は、戦車の爆発炎上に巻き込まれる危険性がある。後者については、爆薬を抜いている以上、実際には起こりえないのであるが、実戦と同じ状況を想定して行わなければ訓練の意味が無い。

これまでの猛訓練により、ブラックの能力の発動と発動の間のインターバルは、当初と比べれば劇的に短縮されている。しかし、それでも尚、一度瞬間移動(テレポテーション)を発動してから再度別の場所に飛べるようになるまでには、10秒ほどの時間を必要としていた。


「手榴弾を投げてそれだけの時間が経過した後、ようやく別の場所に逃れることが出来るか... 戦車の爆発から逃れられるかも怪しい。 戦車兵の銃撃からは、まず間違いなく逃げ切れないだろう。手榴弾を投げた直後には、能力が使用可能な状態となっていなければならない。 」

しかしそのためには、手榴弾を投げるまでの少なくとも10秒間は、能力を発動しない状態でいなければならない。必然的に、手榴弾が届く距離までは能力無しで近づく必要がある。

「 不可能だ。 肉薄する途中で間違いなく、戦車砲と車載機銃のいずれかにやられてしまう。 」

ブラックは、このジレンマを解消する道を探るべく様々に思考を巡らせた。


「『創意工夫』とは、簡単に言ってくれる。 木から落ちるリンゴを見て万有引力を発見できる『アイザック・ニュートン』のような天才でもない限り、そう都合よくアイディアが閃くなど... 」

そこまで思索を巡らせた所で、ブラックはハッとしたように顔を上げた。

「 そうだ! これならあるいは…… しかし、成功させるためには極めて緻密な計算が必要となる。 僅かの狂いも許されない.... 」

暫く逡巡していたブラックであるが、エンジンの駆動音が聞こえ、クルセーダーが再度ブラックのいる方向へと向かってくるに及んで、遂に覚悟を決めた。

「いいだろう、やってやるさ。 もしここで失敗するなら、私がそれまでの男だったというだけの事だ。」

ブラックは、迫り来るクルセーダーの方向へと向き直り、まるで存在を誇示するかのように全身を広げて見せた。


ペリスコープを覗いていたクルセーダーの砲手は、不意に標的が停止したのを見て取った。やがて主砲の射程距離まで差し迫っても、それは一向に動く様子を見せない。これまで散々手間をかけさせられたが、遂に観念したのだろうか。砲手はほくそ笑み砲塔の照準を標的へと合せると、発射レバーを一気に引いた。轟音と共に放たれた榴弾が程なくして標的へと着弾し、辺り一帯に土煙を巻き上げる。砲手を始めとする搭乗員一同は、勝利の喜びに酔っていた。丁度真上から急速降下する人影の存在に一切気付かなかったのも無理はない。


  その人影とはもちろん、ジェームズ・ブラックである。

地表に近づくにつれてその全身に叩きつけられる空気圧はみるみる勢いを増し、上下裸体のその身には酷く答える。身に着けていた野戦服は、上下とも、自分の身代わりとして置いた倒木に着せており、先ほど榴弾の直撃を受けて黒焦げの布となり、四方八方へと飛び散っているのである。ブラックは、迫り来る地表の恐怖と寒さを必死に堪えつつ、丁度真下の位置に来ていたクルセーダーの背面に向けて手榴弾を投擲する。手榴弾は砲塔の真後ろ、丁度内部に砲弾が収められている位置へと粘着し、中の液体をその一面へとぶちまけた。そのまま自由落下を続けるブラックは、そのクルセーダー背面に叩きつけられる寸前に瞬間移動(テレポテーション)を発動して宙から消えていた。


「 これで文句は無いだろう、大佐。 私はこんな所で終わる訳にはいかない。 」

律儀にも、クルセーダーの主砲の射程圏のわずか外側の位置へと瞬間移動していたブラックは、心身の疲れと安心感から、上下裸体のままである事にも構わずその場で倒れこもうとした。

そんなブラックの意識を、響き渡った爆発音が一気に現へと引き戻した。クルセーダーがいた方角を見ると、赤い炎が天高く立ち昇っている。ブラックは、疲労を訴える己の肉体に鞭打ち、再度その位置へと瞬間移動した。


そこには見るも無残な光景が広がっていた。弾薬にでも誘爆したのか、砲塔より上の部分は何処かへと吹き飛び、跡形もなくなくなっている。そして残った車体下部は黒煙を吐き出して燃え続け、その近辺では、黒焦げとなった『かつて戦車兵であったもの』達が、肉の焼きただれる匂いを放って転がっていた。唖然としてその場に棒立ちになるブラックの後ろから、場違いな拍手の音が割り込んで来る。


「|実に見事。実に見事。《Very well. Very well.》」

完璧な標準英語(クイーンズ・イングリッシュ)を発するその声の主が誰であるか、考えるまでも無い。ブラックが後ろを振り返るとそこには、英国陸軍の制服を一部の隙も無く完璧に着こなしたMI6長官、アーネスト・カニンガム大佐の姿があった。その傍らではエヴァンズ大尉が控えていたが、もちろんこちらもSSの黒服などではなく、カーキ色の英国陸軍の制服に身を固めている。

「戦車の乗員に全く気付かれる事なく、自分自身を身代わりの倒木と入れ替え、自分自身は戦車の真上上空へと瞬間移動する。超能力者であるだけでなく、マジシャンでもある貴公なればこそ可能な離れ業と言えよう。 それに、手榴弾が投擲可能な高度まで落下した時に戦車が丁度真下に来るようにするためには、戦車の進行速度と重力加速度を踏まえた極めて緻密な計算が必要となる。 貴公、頭の切れ具合も尋常ではないな。 いやはや、私は実に良い拾い物をしたものだ。 」


これでもかとブラックを褒めちぎる大佐に対して、ブラックの感情ははとっくに沸点をを超えていた。自身が未だ一糸まとわぬ姿である事など忘れて、大佐へと掴みかかる。

「 どういう事だ大佐。 あの手榴弾は、ただのペイント弾では無かったのか! 」

エヴァンズ大尉が割って入って2人を引き離さなければ、間違いなくそのまま大佐を殴り倒していたであろう。カニンガム大佐は一切表情を乱さず、完璧な標準英語(クイーンズ・イングリッシュ)のまま話を続けた。

「 貴公は心優しい男だ。 他人が自分を殺そうとする訓練に同意する事があっても、自分が他人を殺す必要のある訓練には、決して同意はすまい。 しかしそのままでは、貴公は決して真の戦士にはなれぬ。 故に、貴公に一線を超えてもらうためにこのような一計を案じたのだ。 」


その時、燃え続ける車体の内部からかすかなうめき声が聞こえてきた。

ブラックが目を向けると、酷く顔の焼きただれた戦車兵が、芋虫のような動きでそこから這い出してきていた。首から下の野戦服はおびただしい量の血で染まり、一切の原型をとどめていない。

「 熱いよ。(It's hot.)助けて。(Help me.) 」

瀕死の戦車兵が、断末魔のうめき声を発している。それを見たカニンガム大佐は、間に立つエヴァンズ大尉を押しのけてブラックへと近づき、ホルスターのブローニング・ハイパワー自動拳銃を抜いてブラックの手に握らせた。


「 最終試験だ、ミスターブラック。奴に『|情けの一撃《coup de grace》』を与えたまえ。 」

拳銃(ブローニング)を握ったまま立ち尽くし、大佐を睨みつけるブラック。

そんなブラックの視線を無視するかのように、大佐は言葉を続けた。

「 どうしたのだ、ミスターブラック。貴公が撃たなければ、この男は尚も苦しみ続けることになるぞ。 最も、そのような最期こそがこの男に相応しいかもしれんがな。」

その時大佐は、初めて感情の片鱗らしきものを露わにした。

「 この男を含む今回貴公を殺そうとした者共は、英国陸軍の面汚しだ。 この者達は部隊に新兵が入隊する都度、『洗礼』と称して、その新兵を目隠しした上で縛り上げ、周囲を戦車砲で砲撃する事を繰り返していたのだ。極度の恐怖でブルブルと震え、『助けて。(Help me.)』の悲鳴を繰り返し上げる新兵の様子を見て、こ奴らはゲラゲラと嘲笑っていたらしい。 そしてついにその日、惨劇は起こった。 いつものように『洗礼』を行ったこ奴らは、あろうことか照準を狂わせ、その新兵を木っ端みじんに吹き飛ばしおったのだ!聞くところによるとその前日は、軍紀に反して一晩中飲み明かしていたと言うではないか! 」

もはや憤りを隠そうともせずに語るカニンガム大佐。

その感情がブラックにも少しずつ伝番し、怒りの矛先は徐々に大佐にではなく、目の前の瀕死の戦車兵へと向けられるようになった。


「 しかし、それならば軍法会議で正当に裁かれるべきだ。 」

「 このような鬼畜の所業を外部に公表出来ると思うか? 事件は訓練中の事故死として公式には発表された。 疑惑の目を向けられるような証拠は一切残っていない。 何しろ、この私が揉み消したのだからな。 」

再度唖然とするブラックを尻目に、大佐は話を続ける。

「 その交換条件として私はこの鬼畜共に、取引を持ち掛けた。 得意の戦車砲で貴公を仕留める事が出来れば、無罪放免にしてやる、とな。 案の定、奴らは二つ返事で引き受けおったよ。 『生身の人間を吹き飛ばしたあの興奮を、もう一度味わいたい。』とさえ抜かしおった。 」

その時、再度戦車兵のうめき声が聞こえて気た。

「 熱いよ。(It's hot.)助けて。(Help me.) 」

先ほどと同じ台詞を、先ほどよりはるかに小さくなった声で繰り返す。

「 改めて命じよう、ミスターブラック。 奴を殺せ!(Kill him now!) 」

大佐のその言葉がどう作用したのか、ブラックはブローニングの銃口を瀕死の戦車兵に向け、引き金を引いた。乾いた音と共に撃ち出された9ミリ弾が、狙いたがわず瀕死の戦車兵の眉間に吸い込まれる。


「 |ありがとう。《Thank you very much.》 」

その言葉を最後に、息絶える戦車兵。

ブラックが戦車兵の思わぬ言葉に動揺する中、カニンガム大佐がまたしても手を叩き始めた。

「|実によろしい。実によろしい。《Very well. Very well.》」 おめでとう、ミスターブラック。 これで貴公も晴れて真の戦士となった。 そして、ようこそ。 MI6は戦士としての貴公を心から歓迎する。 」

カニンガム大佐は、傍らのエヴァンズ大尉へと顎をしゃくった。

未だ様々な感情が複雑に絡み合うブラックの前に、エヴァンズは1つの新聞記事を差し出した。ドイツ語で書かれている所を見ると、どうやらこの新聞はドイツ国内で発行されているものらしい。


『|トブルク陥落《Der Fall von Tobruk》』

ドイツ語でそう題された記事は、北アフリカの戦線におけるイギリス軍の敗北を伝えていた。

開戦前、北アフリカにおいて、リビアとエジプトは、それぞれイタリアとイギリスの植民地であった。ドイツの勝ち馬に乗ってエジプト領内への侵攻を開始したイタリア軍は、瞬く間に戦意の低さを露呈してイギリス軍に押しまくられ、リビア領内への逆侵入を受ける始末となった。イギリス軍は補給の要所であるリビアの湾岸都市、トブルクを占領すると、厳重な要塞工事を施した。


その後イギリス軍はリビアの更に奥地まで侵攻したが、エルヴィン・ロンメル将軍率いるドイツ・アフリカ軍団が援軍としてリビアに派遣されると再度押し返され、一進一退のシーソーゲームを繰り広げるようになった。そしてこの度トブルクは、ドイツアフリカ軍団にイタリア軍の部隊を加えた、アフリカ装甲軍の攻勢を受けて陥落したのである。


記事の写真では、アフリカ装甲軍司令官エルヴィン・ロンメル元帥が、トレードマークのゴーグルを額に上げ、カメラに向かって不敵な笑みを浮かべている。ドイツ陸軍史上最年少で元帥の地位を得たこの将軍は、敵である英国首相ウィンストン・チャーチルをして『ナポレオン以来の戦術家』と評せしめ、『砂漠の狐』の異名と共にメディアにも度々登場した事から、一般への知名度も高かった。しかし、ブラックの目を何よりも引いたのは、将軍の隣に移っている一人の男であった。

その男こそ、ブラックをこれまで突き動かして来た元凶であるあの金髪のSS将校、ヨハン・シュヴァルツだったのである。襟の階級章はあの時とは違い、SS少佐(大隊指揮官)のものとなっていた。


「 ようやくの任務です、ミスターブラック。あなたには私と共に、エジプトのエル・アラメインへと向かってもらいます。 」

既にヨハン・シュヴァルツへの復讐心で頭が一杯になっていたブラックに対して、エヴァンズ大尉は静かにそう告げた。

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