「出ろ。」
数秒、気を失ったらしい。
最後に見えたちょうちょがまだ僕の事を視てる。
…………《《やっと解った》》。僕が愛した人は、全員死ぬんだ。
アレイの言うとおりだった。皆。
視界が歪む。何だろうこれ……土が、ぽたぽた言ってる。
§
眼の前には、アリエルさんのお母さん。
僕にクッキーを教えてくれた、
「1カ月前、シグルドお兄さんは【勇気】と【旅】を、2週間前、モルガナおばさんは【魔力】と【愛】を、3日前、八百屋のはげおやじは野菜と健康、皆、皆..........」
心が――足が――腕が――首が――倒れたがってる。
始めてお葬式をしたのは、おじいちゃん。
彼は僕に生き方を教えてくれた。
【聖なる糞】。
おじいちゃんの魔法は、青い月の強い武器……散弾銃の様らしくて、これを避けれるまでご飯をくれない事があった。
それは3日間続いた。
エイギルさんとアリエルさんが羊の乳を贈ってくれるまで続いた。
痣だらけ。紫坊やになった僕をみて、二人は怒っておじいちゃんをボコボコにしてて......
「……あぁ、僕、アリエルさんの事、こわしちゃった」
§
僕は、おじいちゃんが埋めた女から生まれた。母の名前は、知らない。
教えてくれなかった。お父さんはおじいちゃんだった。
難しい……………嘘だった。でも僕がただ一つ、大好きな嘘だ。
遺書を先に読んでくれたアリエルさんが、どうしても教えてくれない上に、
スクロールを持って帰ったから、エイギルさんに聞きに行った。
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< 我は死ぬ。そろそろ死ぬ。心して聞くが良い。 >
< お前に父は居ない。 >
< 2年前、お前が11の頃、アベルの話をしたな? >
< 憎っくき清純たる勇者な弟の様に、お前の母は、 >
< 死して魔法でお前を作ったんだろう。 >
< だから、お前は俺とおんなじ、ヒトゴロシだ。 >
< ヒトゴロシは全員我の子、つまりお前は我の子だ。 >
< あれ? 書き直そう、これは練習用にしよう。 >
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その遺言モドキの書いてある羊皮紙の裏、つまり、僕が見えた位置からは、
アリエルさんの裸の絵が描いてあった。上手だったなぁ…
「以上だ。……ちなみにオレは知ってた。怒らないでくれ。100発までならなんでも喰らってやるか……腕を掻くな!! 一度で100は聞いてない! オぉホォ!!」
そうやって、エイギルさんの悲しい顔が満足するまで炙ってると、二階からトトトッて音がして、
「見たでしょ!! 許さないんだから!!」
赤毛が逆立ってた。彼女の事をマグマの様って言う人も居た。
そう呼ぶのは、旦那さんだけだけだったけど、
僕もそうやって心の中で毒づいた。
「見てないよ!! 双子の火山にそばかすなんて見てないよ!!」
「嘘つき!! せっかく隠してたのに!!」
あう……
§
視界と意識が歪んでる。
始めてGhoulに会った時みたいにぼこぼこって訳でもないのに、
走馬燈か。彼女を見ただけで――彼女、強いのか。
「至上の人。貴方の願いを叶える代わりに、一つ願いを叶えてくれるかしら?」
僕はシャベルの上で微笑む肉が、喋ってる様に聞こえる。
首が嬉しそうに口を緩ませて、微笑えんで息を吐くまでは、
《《夢だと思いたかった》》。気を殺ったから、幻覚かと思った。
「彼女を……エイギルの子、長女のアリエルを返してくれるなら。」
必死に探した。全部を絞り出すように、探した。
僕の願い――返して欲しい。
「……じゃあ……竜を狩って頂戴。そうしたなら竜の鎧で旅に出て。」
――穴に、首のない死体が自分から倒れ込んだ。
目を閉じ寝首を立てる首を、誰かの死体の上に置いた。
「わたしは……僕は、貴方の代わりに、異なる魂が犯す屍の首を撥ねます。
僕は、貴方の代わりに、屍を腐らせ、灰にして、大地に届けます。ですから、どうか……あぁ……そういう.....」
今日は、全部が満月の日だから、綺麗な花が沢山ある。
眼の前に広がる十字と一緒に咲き誇る花達から、
……人生で一番が良い、誰かに誇れるぐらい上手に花の首輪を作ろう。
赤が霞んで視えなくなるぐらいのなるぐらいの、世界で一番の、花の首輪を作ろう……
頭はもう.......うるさくない。
「初めてだ。僕は今、」
始めて人を恨んだ。頭がかゆい、翅音がする、
「......で、......んで、死んで、アリエルさんを犯させた。白痴で鈍愚。死んで、死んで、死んで、死んで.....................」
どうやって天使を殺そうカ、ボうヤ、お前の好みだと、火葬かねェ?
坊やの火なら……世界だって焼き馴らせるよ。
「……あはは!! 誰カがしャべってる!!!」
アハハアハハハアハハハハハハハ!!! アシオト!!!
――――――ウシロ、....................金色の、黄金の、光の、夜を照らす月よりも強く、
「許してくれ。そして、ありがとう。姉上と義兄上の言う通りになったな。」
《ムチを持った良く知る少年が、知らない鎧を着ている。》
ベン。ト鳴リ、顔ガ裂ケ……イタイイタイイタイイイイイイイイイイイイイイイ
「皆がお前を……愛してるよ。女みたいな強い男。そんなおまえが気をやるとは……なんというか、情けないな。」
クビクビクビクビクビクビクビクビクビクビクビ
クビクビクビクビクビクビクビクビクビクビクビ
クビクビクビクビクビ
《首が鞭に引っ張られてひっくり返った。》
「ア゛れ゛い゛!!! !!!」
ツチノアジ、ムチ、
シマル、ケッカンガ、チが、まりょくが、意識が、心が、まぶた
「ちゃんと俺で練習したから大丈夫だ。後20。最後まで、俺を信じろ。」
ギブギブギブギ
「……キスでも良いらしいんだが、生憎、俺はお前が嫌いでね。」
ぎぶっぎぶっ! タッチアッぷしてるの分か..................................................
「楯を殴り裂き、黒を喰らい、竜を見よ。我らが勝利の名は、【闇葬る光の印】。」
無理やり意識を起こされる。首がまだ締まっていて苦しい、
「ぐえぇ!! アレイ!! アレイ!!」
「墓守、良く聞け。緑炎が自分の中でしまえるようになるまで、こうだ、」
……そっちでも負けてたのか........................................
早かったな。残念だ。なんて声が聞こえて、僕は意識を投げ捨てた。
§§