73 ととのった準備
巣の崩壊に巻き込まれる事で消滅するならまだ良い。
謎も何も残らないのだから。
巻き込まれたくはないが、それ以上考える必要がない。
だが、実際には巻き込まれても戻ってくる者もいる。
その全てが怪物に取り憑かれ、人間ではなくなった状態になってだが。
しかし、ここから分かる事も少しはある。
まず、崩壊の向こう側。
その先には怪物がいるのは確かだ。
でなければ、怪物に取り憑かれる事は無い。
怪物がいるから取り憑かれるのだ。
そして、もう一つ。
崩壊した先にあるかもしれない場所。
そことこの世界は繋がってる。
どこともしれない異次元・異空間であろう、巣の崩壊によって発生する暗がり。
その向こう側と、この世界をつなぐ道がどこかにある。
なければ、こちら側に来る事は出来ない。
これらはほぼ確実だと考えられた。
ただ、向こう側の世界は危険なのが予想される。
おそらく、怪物がはびこってるだろう事も。
また、こちらの世界と繋がる道。
そこを人間が通る事が出来るのかどうか。
怪物だけの専用通路の可能性もある。
人間には通行不能の可能性もある。
だが、それでもカズヤは行くつもりだった。
そこがどうなってるのか。
なぜ滝口は行けと言ったのか。
その答えを知るために。
怪物の事をよりよく知るためにも、それが必要だと考えていた。
いまだに怪物については分かってない事が多い。
怪物の思考や心に侵入し、その中身を読んだりもした。
だが、それでも分からない事だらけだ。
どこから来て、なんで人を襲うのか。
生存本能に基づいて餌を求めてるのは分かる。
だが、そもそもどこから来たのかなどが分からない。
それを知るためにも、向こう側に行く必要がある。
怪物がこちらにやってくる前にいた場所に。
だから、カズヤは自分が消えても大丈夫なようにしておきたかった。
怪物に対抗できる者達を揃えておきたかった。
カズヤがいなくても、怪物を駆逐していけるようにしたかった。
それがようやくかなってきてきる。
最初の頃は仲間も少なく、カズヤが抜けたらどうなるか不安だった。
しかし、三年の間に人が増えた。
組織だった行動も出来るようになった。
高レベルの能力も高い者ばかりなので、作業は思いのほか順調に進んでいった。
今では後進の育成も行っている。
怪物と戦う意思のある者を育て、戦力を確保出来るようになってる。
カズヤがいなくても大丈夫な状態になっている。
向こう側に行っても問題は無い。
その気持ちを仲間に伝え。
多大なる反対を強引にねじ伏せ。
後任や引き継ぎなど諸々の仕事を完了させ。
カズヤは適当な怪物の巣に一人で突入した。
巣を破壊し、崩壊させて生じる暗がりの中に突入する為に。




